洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

Offshore wind farms and fisheries
”洋上風力発電と民主主義”

洋上風力発電と漁業 海外の経験#18 米国 下院議員 承認プロセスを手抜きと批判

2023-03-18 05:34:42 | 日記

 

2023年03月18日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 海外の経験#18 米国 下院議員 承認プロセスを手抜きと批判]

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

米国下院議員クリストファー・スミス(共和党:ニュージャージー州第4選挙区)は2023年3月16日、ワイルドウッドで開催された公聴会において、同国の洋上発電プロジェクトの承認プロセスが手抜きで、海洋生物と生態系に対する非常に有害な影響に関する多くの深刻な問題が放置されており、商業漁業等への壊滅的なダメージについてはほとんど無視されていると説明、米国政府説明責任局 (GAO) に対し“洋上風力発電プロジェクトの環境審査プロセスの妥当性”を調査するよう要求したと述べ、文化、観光等、他の懸念事項についても、GAO は洋上風力発電プロジェクトが与える影響を調査し、議会に報告する必要があると加えた。

科学者の証言では、建設段階において、海底に数千フィートの柱を打ち込むことで破壊的レヴェルの騒音が発生する。

“クライスラー”ビルディング(最上階: 274メートル)ほどの大きさの巨大構造物の、ハリケーン、スーパー・ストーム、そしてノーイースター(米国東部やカナダの大西洋沿岸を襲う発達した温帯低気圧による嵐のこと)に対する耐久性等は、十分に調査分析がされていない。

2012年にカーネギー・メロン大学が行った調査では、カテゴリー3以上のハリケーンによって、場所によってはタービンの半分以上が破壊される可能性があり、非常に大きなリスクがあることがわかっている。

先に、ブルームバーグは、“自由の女神よりも高い風力タービンが倒壊する”と題し、タワーとブレードの故障により、米国とヨーロッパの製造業者が悩まされていることを伝えた。

デンマーク沖ではタービンの1つからブレードが落下した際、当該海域周辺を対象に海上交通の停止要請が出されたとの情報もある。

しかし、これらのタービンの破損、故障に関する公開されている業界全体のデータは存在していない。

また、米国海軍の船舶、商船、沿岸警備隊による捜索救助活動を含む船舶の航行は、レーダー干渉により著しく妨げられる可能性がある。

米国科学・工学・医学アカデミーは、2022年に“風力タービン発電が船舶レーダーに与える影響”というタイトルのリポートを発表し、風力タービン発電機が、船舶レーダーのマグネトロンとソリッドステートの両仕様を不明瞭にし、重大な干渉とシャドーイングを引き起こすと報告している。

この調査では、船舶レーダーの風力タービンによる緩和技術について、実質的に調査が行われず、実装等の段階にないことも判明した。

2022年8月、米国で成立した“インフレ抑制法”(過度な物価上昇を抑制すると同時にエネルギー安全保障や気候変動対策を迅速に進めることを目的とした法律)には、2026年1月1日より前に建設を開始する洋上風力発電プロジェクトに対する30%の税額控除が含まれている。

拙速に過ぎるプロジェクトへのインセンティヴ、「今すぐ建設を開始する者への補助金」はバイデン政権の“残り時間”に敏感な表れと言える。

GAO は、地元の代表者と利害関係者に適切に発言の場が提供されているかどうか、洋上風力発電プロジェクトがどのように決定するか等を明らかにする任務を負っている。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

洋上風力発電と漁業 海外の経験#17 ヨーロッパ漁業界団結 洋上風力発電に警告

2023-03-17 15:38:08 | 日記

2023年03月17日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 海外の経験#17 ヨーロッパ漁業界団結 洋上風力発電に警告]

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

ヨーロッパ各地の漁業団体は、各国政府に対し、大規模な洋上風力発電所の開発を急ぐことによる持続可能な食糧生産供給へのリスクの認識等を要求している。

スコットランド、イングランド、アイルランド、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フランス、そしてオランダをメンバーとする北部漁業同盟 (Northern Fishing Alliance)は、天然資源をどのように利用するのが最善なのか等、風力発電所開発事業者らと真剣に対話する機会がなく、漁業者が議論のテーブルにつくことを排除していると指摘している。

ヨーロッパ同盟各国の漁業団体の代表者が、今般、ロンドンに集まり、風力発電について、強い懸念と警告を発信することに合意した。

漁業が何百年にもわたり生計を立て、コミュニティを維持し、食料自給に貢献してきたにもかかわらず、新しい規制と大規模な産業開発が前例のないペースで進んでおり、加えて、その結果についてはほとんど考えられていないとしている。

また、政府は政治的利益、第3者団体が寄付金を求め、それぞれ行動し、エネルギー会社は、寿命は短いが大規模な洋上風力発電で巨額の利益を得ようとしていると批判した。

北部漁業者同盟は、各国政府に対し、食料安全保障を考慮し、海洋環境の健全性、そして、一般市民の生活を守るよう求めることで一致した。

さらに、天然資源をどのように最大限に利用できるかについて、真の対話が必要であり、それは、伝統的な海の利用者の声を平等に尊重するためのものだと加えている。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

洋上風力発電と漁業 海外の経験#16 米国 西部業界 計画の完全リセットを求める

2023-03-12 15:19:38 | 日記

 

2023年03月12日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 海外の経験#16 米国 西部業界 計画の完全リセットを求める]

米国西部の太平洋漁業管理評議会(Pacific Fishery Management Council:PFMC)は、2023年3月9日、シアトルでの会議において、オレゴン州沿岸沖合で提案されている洋上風力発電プロジェクトについて話し合いを行い、漁業と水棲生物資源への影響を最小限に抑えるために、海域の指定プロセスの完全なリセットを、同国内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)に求める決議を行った。

PFMCはBOEMに対し、水深1,300m以深を超えるエリアを含め、距岸12マイル以遠の全ての海域を対象に調査検討を行うこと、そして、これより先に提案があった、ブルッキングズとクースベイの沿岸沖合での計画を撤回するよう求めることとした。

この沿岸沖合は主要漁場であり、風力発電所の設置は、オレゴン州の漁業、加工業ばかりでなく、食料安全保障さえ脅かしかねないとして、業界は激しい抵抗をしている。

沖合トロール協同組合(Midwater Trawlers Cooperative)と西海岸水産物加工協会(West Coast Seafood Processors Association)は、カリフォルニア海流が、世界で最も生産的な生態系の一つであり、これを正しく理解する必要があると指摘、漁業分野の科学的影響調査を求めている。

太平洋漁業管理評議会の動議はオレゴン州、ワシントン州、カリフォルニア州の代表と、国立海洋漁業局(NMFS)によって4票の棄権票が投じられた上で、満場一致で可決された。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

洋上風力発電と漁業 海外の経験#15 アイルランド 漁業リスクに対する懸念表明

2023-03-05 18:17:27 | 日記

 

2023年03月05日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 海外の経験#15 アイルランド 漁業リスクに対する懸念表明]

アイルランド漁業者は、洋上風力発電所の開発により、漁場を失うことや海底施設物との漁具接触等、漁業リスクに対して懸念を表明している。

アイルランド沖での洋上風力発電所のプロジェクト計画が進むにつれ、漁業者は自らの生活が危険に晒されているという実感を強めている。

今後7年間で数百基の風力タービンが設置され、その多くは重要な漁場、その周辺海域に設置される。

これらは、2030年までにアイルランドの電力の80%を再生可能エネルギーで発電することを目指す同国の気候行動計画の重要な部分となっている。

数十件の洋上風力発電所開発計画が提案されているが、この内、現在7件のプロジェクトが急速に進展している。

ダブリン北部のハウス港を根拠とする漁業者は、海底ケーブルや海底施設物との漁具接触ばかりでなく、強風日に風力タービン施設そのものに接触することを恐れている。

アイルランド政府は、洋上風力発電所開発と漁業者の対話のため、ワーキング・グループを設置している。

しかし、アイルランド南部・東部漁業協同組合代表ジョン・リンチは、洋上再生可能エネルギー(ORE)の代表者らと何度も協議を行ってきたものの、彼らとは風力タービンの設置場所の実質的な妥協についての話し合いが出来ていないと明らかにした。

また、進展している7つのプロジェクトのいくつかは、漁業にとって非常に敏感で、特に“ヨーロッパアカザエビ”操業の妨げになり、実質、当該漁業を失うことになると述べ、漁業者の懸念が解決されない場合、裁判を通じて、プロジェクトに異議を唱える可能性がある旨を言及した。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

洋上風力発電と漁業 日本の経験#15 EEZで洋上風力推進へ…基本計画原案

2023-03-02 19:25:05 | 日記

2023年03月02日 日本経済新聞様から転載

[「海洋政策」安保と脱炭素 EEZで洋上風力推進へ…基本計画原案]
商業運転を始めた洋上風力発電の風車(昨年12月、秋田県の能代港で)
 政府の今後5年間の海洋政策の指針となる「海洋基本計画」の原案が明らかになった。現行計画の柱である「総合的な海洋の安全保障」に加え、脱炭素社会の実現に向けた「持続可能な海洋の構築」を新たな柱に据え、排他的経済水域(EEZ)での洋上風力発電の導入に向けた法整備を進める方針を明記した。
 政府は、早ければ来週中にも公表し、パブリックコメント(意見公募)を実施した上で、4月にも閣議決定する見通しだ。
 原案は、中国海警局の船舶が日本の領海侵入を繰り返していることなどに触れ、「我が国の海洋に関する国益はこれまでになく深刻な脅威・リスクに直面している」と危機感を示した。
自衛隊・海保、連携強化
 その上で、武力攻撃事態の際に防衛相が海上保安庁を統制する要領を確立し、有事を念頭に自衛隊と海保が具体的な対処訓練を行う方針を盛り込んだ。自衛隊と海保が海洋監視情報の共有体制を強化することも明記した。
 また、経済安全保障の観点から、全自動で水中を航行できる自律型無人探査機(AUV)などの先端技術を育成する方針も示し、軍事と民生双方で活用できる「デュアルユース(両用)」技術の研究開発を促進するとした。
 洋上風力発電は「再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札」と位置づけた。
 現在、洋上風力発電は領海内で行われているが、地元や漁業者との調整に時間がかかる。土台を海底に据え付ける必要がない浮体式の技術はほぼ確立されており、政府はEEZで大量の風力発電を導入したい考えだ。原案では、浮体式について、導入目標の設定などを盛り込んだ。
 このほか、水素やアンモニアを大量に輸入・貯蔵できる港湾「カーボンニュートラルポート」の計画的な整備や、水素やアンモニアの輸送に関する技術開発を進める考えも示した。
 ◆ 海洋基本計画 =2007年に制定された海洋基本法に基づき、海洋政策の基本方針や講ずべき施策などを総合的に示した国の計画。政府の総合海洋政策本部(本部長・岸田首相)が策定し、「おおむね5年」ごとに見直される。次期計画は4期目で、23~27年度の政府の海洋政策の指針となる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする