洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

Offshore wind farms and fisheries
”洋上風力発電と民主主義”

洋上風力発電と漁業 海外の経験#78 米国 NOAA 漁業への影響を監視するための生態学的指標

2024-03-30 10:41:14 | 日記

 

2024年03月28日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[#78 洋上風力発電と漁業 海外の経験 米国 NOAA 漁業への影響を監視するための生態学的指標 ]

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。

一方、新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。

米国海洋大気庁(NOAA)水産科学センター研究員エリザベス・メスラッタ(Elizabeth Methratta)は、2024年2月、、洋上風力発電が漁業資源に与える影響を監視するための生態学的指標に関するリポートを発表した。

洋上風力発電開発は、期待されている再生可能エネルギーを生成するが、海洋生態系にいくつかのストレス要因ももたらすことになる。

従って、生態学的影響を評価し、悪影響を軽減するための解決策を通知するための情報豊富な監視プログラムを開発する必要がある。

エリザベス・メスラッタは、米国およびその他の地域の洋上風力発電の監視プログラムに、より多くの情報を得るためのアプローチが緊急に必要だと勧告している。

そのためには、①明確な監視の目的と仮説の設定、②明示された目的に関連する地域内のプロジェクト全体でサンプリングできる、意味のある生態学的指標のセットの選択、③長期にわたる地域および生態系全体の調査で使用されるものと同等の指標データの収集、④データ分析段階で年々変動を評価し、時間的構造を説明するために、少なくとも3年-5年間のベースライン指標データの収集、その他が求められる。

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洋上風力発電と漁業 日本の経験#63 洋上風力EEZに拡大 建てるほど国民負担が増す改正案を閣議決定  “水棲生物資源等への大きな悪影響が懸念される洋上風力発電 犠牲の上に建設しても消費者負担が増加”

2024-03-12 15:39:28 | 日記

2024年03月12日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 日本の経験#63 洋上風力EEZに拡大 建てるほど国民負担が増す改正案を閣議決定]

“水棲生物資源等への大きな悪影響が懸念される洋上風力発電 犠牲の上に建設しても消費者負担が増加”

日本国政府は本日2024年3月12日、洋上風力発電を領海に加えて排他的経済水域(EEZ)でも設置できるようにする再エネ海域利用法改正案を閣議決定した。

今国会での成立を目指しているとされている。

共同通信が伝えた。

「領海と内水」に限られていた対象範囲がEEZまで拡大される。

洋上風力発電を脱炭素推進に向けた「切り札」と位置付け、導入を後押しする方針としている。

領海内では、政府が現行の再エネ海域利用法に基づき秋田県沖や千葉県沖などを促進区域に指定し、商業運転開始に向けて準備が進んでいる。

洋上風力の発電能力を2040年に原発約45基分に相当する最大4500万キロワットとする政府目標を達成するには、日本が持つ広大なEEZも活用すべきだとの判断としている。

改正では、自然条件などが適合する海域を政府が「募集区域」(仮称)に指定する。

事業者は事業計画を提出後、漁業者ら利害関係者を含む協議会で議論し、理解を得られれば国土交通相と経済産業相が許可を出す仕組みとなっている。

洋上風力は現在、水深が浅い海底に土台を固定する着床式が主流だが、EEZは深い海域が多く、海上に浮かべる浮体式が中心となる見込みとなっている。

一方、この水棲生物資源、漁業経営等への大きな悪影響が懸念される洋上風力発電について、「キヤノングローバル戦略研究所」研究主幹の杉山大志様は、大損をするのは日本国民だと警鐘を鳴らしている。

次は杉山大志様のリポートの転載となる。

秋田県・能代では、石炭火力発電所の周りに洋上風力が建っている。

最近営業を開始した案件は、全量買取制度対象なので1キロワット1時間あたり36円で電力会社が買い上げている。

風が吹いているときには、その分だけ火力発電の燃料を減らせるわけだが、それによるコスト削減はいくらか。

石炭火力の燃料費は4円程度と政府は見通している。

すると36円との差である32円は、電気の消費者にとっては追加の負担となる。

もしも、風力発電があれば石炭火力が要らないというなら話は別だが、そうはならない。

風力は天気任せなので、風が止まったときには石炭火力が稼働しなければならないからだ。

この地域の洋上風力の設備利用率は35%程度と試算されている。

この意味は、1万キロワットの設備容量がある発電所の発電量は、年間平均して3500キロワット、ということである。

すると、大ざっぱに言って、風力発電所があるといっても、年間の65%は電気の供給を火力発電に頼り続けることになる

この状況では、風力発電を建てれば建てるほど、一般の電気の消費者にとっては費用負担が増える一方になる。

では今後、入札制度に変えることで、風力発電は安くなるのか

日本政府は、洋上風力発電所を大規模に開発する計画を立てている。

その手始めとして、2021年末に入札結果が発表された。「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」の洋上風力発電プロジェクトは、1キロワット1時間あたり13円で三菱商事などのコンソーシアムによって落札された。

これは他社を圧倒する安い価格であったと報じられている。

ただしこれでも、4円という石炭火力の燃料費とは9円もの開きがあり、電気利用者への負担がかなり増えることには間違いがない

洋上風力推進で、事業者は大いに儲かる。賄賂を使って制度を捻じ曲げてでも業績を伸ばそうとする者も現れかねない。だが、それで電気料金が上がり大損をするのは国民だ

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