洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

Offshore wind farms and fisheries
”洋上風力発電と民主主義”

洋上風力発電と漁業 海外の経験#26 米国 当局者は洋上風力発電所がハリケーンに耐えると明言せず

2023-04-30 03:32:17 | 日記

 

2023年04月30日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 海外の経験#26 米国 当局者は洋上風力発電所がハリケーンに耐えると明言せず]

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

米国内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)局長リズ・クラインは、2023年4月26日、予算公聴会で、北東部での設置が計画されている洋上風力発電所が、カテゴリー2、3級のハリケーンに耐えることができるかどうかについて、米国下院議員クリストファー・スミス(共和党:ニュージャージー州第4選挙区)から質問を受け、明確に回答することが出来なかった。

予算公聴会においてクラインはBOEMが2024年予算に2億6,820万ドルを要求していると語った。

科学者は、建設段階において、海底に数千フィートの柱を打ち込むことで破壊的レヴェルの騒音が発生すると指摘している。

“クライスラー”ビルディング(最上階: 274メートル)ほどの大きさの巨大構造物の、ハリケーン、スーパー・ストーム、そしてノーイースター(米国東部やカナダの大西洋沿岸を襲う発達した温帯低気圧による嵐のこと)に対する耐久性等は、十分に調査分析がされていない。

2012年にカーネギー・メロン大学が行った調査では、カテゴリー3以上のハリケーンによって、場所によってはタービンの半分以上が破壊される可能性があり、非常に大きなリスクがあることがわかっている。

先に、ブルームバーグは、“自由の女神よりも高い風力タービンが倒壊する”と題し、タワーとブレードの故障により、米国とヨーロッパの製造業者が悩まされていることを伝えた。

デンマーク沖ではタービンの1つからブレードが落下した際、当該海域周辺を対象に海上交通の停止要請が出されたとの情報もある。

しかし、これらのタービンの破損、故障に関する公開されている業界全体のデータは存在していない。

また、米国海軍の船舶、商船、沿岸警備隊による捜索救助活動を含む船舶の航行は、レーダー干渉により著しく妨げられる可能性がある。

米国科学・工学・医学アカデミーは、2022年に“風力タービン発電が船舶レーダーに与える影響”というタイトルのリポートを発表し、風力タービン発電機が、船舶レーダーのマグネトロンとソリッドステートの両仕様を不明瞭にし、重大な干渉とシャドーイングを引き起こすと報告している。

地元の米国北東部沿岸地域は、洋上風力発電の開発が水棲生物などの生態系を破壊し、漁業や観光産業を荒廃させ、タービンを配置するための準備作業への懸念を表明する抗議団体を組織している。

 

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洋上風力発電と漁業 日本の経験#21 洋上風力発電の世界首位 デンマークのオーステッドに逆風

2023-04-21 16:59:32 | 日記

洋上風力発電の世界首位、デンマークのオーステッドに逆風が吹いている。洋上風力は持続可能なエネルギー源として需要や収益が拡大しているはずだが、株価はピークだった2021年1月の半値だ。同分野で先頭を走る企業に何が起きているのか。「巨人の誤算」は脱炭素へ向けて大規模投資に動く日本勢にとっても対岸の火事ではない。

「サプライチェーン(供給網)のボトルネックや物価上昇、新規計画の認可遅れなどの影響が出ている」。オーステッドのマッズ・ニッパー最高経営責任者(CEO)は2月の決算説明会でこう振り返った。

一見、業績に問題はない。22年12月期の売上高は21年比で7割増の1322億デンマーククローネ(約2兆6000億円)、EBITDA(利払い・税引き・償却前損益)は3割増の320億クローネと好調だ。ドイツのNPO法人によれば、洋上風力の発電容量は22年に前年比2割増え、23年は同3割増える見通しだ。

だが、直近の22年10〜12月期の状況は一変している。前年同期比で1割超の増収でもEBITDAは2割近く減った。特に主力事業として育ててきた洋上風力事業のEBITDAが20億クローネと6割減った。売上高EBITDA率は8%と20年以降では最も低い。23年12月期も全体で減益を見込む。

背景には2つの誤算がある。まずコスト負担の重さだ。大型化が進む洋上風力発電所は施工・運営の難易度が増し、ただでさえ適切な人やコストの維持が課題になっていた。そこに原材料高、金利上昇による景気減速が直撃した。

発電に不可欠な風力タービンを手掛けるスペインのシーメンスガメサ・リニューアブル・エナジーと、デンマークのベスタスは22年に最終赤字だった。両社は販売価格を引き上げており、これを仕入れるオーステッドのような運営事業者には逆風だ。

 

売電価格も下落傾向にある。オーステッドのニッパー氏は価格が上がらなければ「再生可能エネルギーに必要な投資が減速する」と警戒するが、値上げは受け入れられにくい情勢だ。22年、同社が50%を出資する米ニューヨーク沖の大型風力発電所では25億クローネの減損を計上。英国や台湾でも計画が遅延し収益が悪化した。

話はオーステッド1社の不調にとどまらない。石炭や石油を祖業とする同社は世界に先駆けて再エネへの業態転換を進めた教科書的な存在でもある。その会社ですら脱炭素対応と利益成長の両立に苦しんでいるということの意味は小さくない。

特にエネルギー自給率が低い日本では無視できない。原子力発電の動向が今なお不透明な中、洋上風力を有力な発電手段とみて大規模投資が相次いでいるためだ。

すでにENEOSホールディングスが22年、約1900億円で再エネ専業のジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)を買収。東京電力ホールディングス中部電力が折半出資するJERAも今年3月、ベルギーの洋上風力発電大手の買収(2200億円規模)を発表した。だがオーステッドの例をみると成長のハードルは高い。市場でも「洋上風力発電所を作るだけでもうけるのは難しい」(大和証券の西川周作氏)との声がある。

世界的な脱炭素投資の風潮を踏まえれば、未来の地球や経済を支える再エネ企業は評価されるべきだが、オーステッドの株価は1年前比で2割以上も下落した。皮肉にも、化石燃料の雄、米エクソンモービルは同期間で3割上昇。日本のENEOSも5%高い。

背景には稼ぐ力の違いがある。オーステッドの22年12月期の純利益はドル換算で約22億ドル(約3000億円)だが、エクソンは557億ドル、英シェルは423億ドルと桁が違う。売上高純利益率も11%に対し、エクソンは14%だ。景気減速や利上げなどで余裕のなくなった投資家が再び、高いリターンの見込める化石燃料へ資金を移している。

再エネ需要は今後も伸びていくだろう。目先の利益の創出か、崇高な環境対応か。オーステッドの苦悩は、脱炭素社会へ進まざるを得ない企業やステークホルダーに改めて問いかけている。

 
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洋上風力発電と漁業 海外の経験#25 第1回全米科学アカデミー委員会 酷評意見チャット入力

2023-04-19 05:28:56 | 日記

 

2023年04月18日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 海外の経験#25 第1回全米科学アカデミー委員会 酷評意見チャット入力]

日本での、先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

2023年4月13日、米国では、新たな“洋上風力発電と漁業に関する全米アカデミー委員会”の第1回会合が、WEBを利用した公開の場で行われ、90分間の当該会合中、関連プロジェクトのプロセスに関する質問と酷評意見が200件に及んだ。(*同会合には報告担当者原口聖二もLIVEオブザーバ登録参加した。)

この会合は、洋上風力発電プロジェクトに関し、米国内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)に対して助言するための新たな国家パネルで、科学者に加え、大学、そして漁業分野の代表者らが参加した。

専門家がZOOMビデオで討議している間、多数の洋上風力発電に反対する者はオブザーバの立場にあることから、長期にわたりBOEMが漁業と環境に関する問題へ向き合うことを回避してきた等の指摘、意見などをチャット質問欄に入力することとなった。

これは、BOEM が漁業分野との調整に取り組み、問題が徐々に解消されつつあるとする主張と食い違う、現在進行形の当該分野との紛争の現実を示す、象徴的なスナップショットとなった。

委員会メンバーへの要約プレゼンテーションで、BOEM担当者は、漁業への潜在的な影響を調査する作業を行っており、約 9,000 万ドルが、この分野に関する150 の研究に向けられていると説明した。

しかし、漁業分野の主張を受け入れている委員は、BOEM が環境審査の優先順位を下げていると語り、北東部と中部の大西洋沿岸沖合の風力発電海域の利用権を認める前に、もっと予備的な調査を行うべきだったと言及した。

また、米国水産物生産者協会(Seafood Harvesters of America)の常務理事は、BOEMがプロセスにおいて透明性を維持すると発言を続けているが、その内容に透明性は存在していないと批判している。

さらに、ニュージャージー州の業界団体の代表者は、今回の会合でプロジェクトのプロセスに欠陥があることが明らかになったと語った。

なお、第2回の洋上風力発電と漁業に関する全米科学アカデミー委員会は、2023年4月26日-27日に開催される予定となっている。

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洋上風力発電と漁業 日本の経験#20 脱炭素社会へ世界に貢献 「北海道・札幌宣言」を発表 G7環境相会合

2023-04-17 05:53:29 | 日記

2023年04月17日 北海道新聞様から転載

[脱炭素社会へ世界に貢献 「北海道・札幌宣言」を発表 G7環境相会合]

 先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合が開幕した15日、道と札幌市は脱炭素社会に向けた「北海道・札幌宣言」を発表し、脱炭素エネルギー基地として世界に貢献することを誓った。
 道と市などでつくる実行委が主催する関連行事「環境広場ほっかいどう2023」会場の札幌ドーム(札幌市豊平区)で発表した。
 宣言では再生可能エネルギーを最大限導入し、関連する生産・研究拠点を誘致するほか、道内と本州を結ぶ海底直流送電線を早期に整備し、洋上風力発電などの再エネを道内から本州に供給すると明記した。再エネを活用する半導体やデータセンターなどの関連産業の振興や、地球温暖化対策を進めるための「環境金融」の資金を世界から呼び込むことも盛り込んだ。
 鈴木直道知事は「脱炭素のエネルギー基地として世界に貢献する。北海道のポテンシャルを最大限生かす」と宣言した。
 秋元克広市長は「再エネや新しい技術を取り入れ、経済の好循環につなげたい」と述べた。
 会場には経産省と環境省の両副大臣、G7関係者、デンマーク駐日大使らが出席。米国のレイモンド・グリーン駐日首席公使は「気候変動という現代の課題を解決するためには地域の大胆なリーダーシップが重要。北海道と札幌に期待したい」と述べた。(伊藤駿)

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洋上風力発電と漁業 日本の経験#19 洋上風力発電、計7倍に 札幌・G7環境相会合 共同声明明記へ 加盟国、30年目標

2023-04-16 08:23:42 | 日記

2023年04月16日 北海道新聞様から転載

[洋上風力発電、計7倍に 札幌・G7環境相会合 共同声明明記へ 加盟国、30年目標]

                                   札幌市で開幕したG7気候・エネルギー・環境相会合=15日午前、札幌市中央区(富田茂樹撮影)
 先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合が15日、札幌市中央区の札幌プリンスホテルで始まった。最終日の16日に発表する共同声明に、洋上風力発電の導入拡大を明記する方向で調整。2030年までに、7カ国合わせて21年実績の約7倍の150ギガワットに引き上げる目標を掲げる。海底に固定せず海に浮かべる「浮体式」の洋上風力の開発推進も盛り込む。
 日本政府は、再生可能エネルギーをさらに増やすには洋上風力の導入が鍵になるとみている。洋上風力の製造開発は主に欧米企業が担っており、G7が共通目標を持つことで、国内の開発促進につなげる狙いもある。政府は風況が良い道内での導入拡大を想定しており、道内の再エネ拡大の弾みになりそうだ。
 会合では、温暖化対策の国際枠組みの「パリ協定」が掲げる気温上昇を1・5度以内に抑える目標達成に向け、具体的な取り組みを議論。ただ、焦点となっている電力部門の脱炭素化では目立った進展はない見通しだ。議長国の日本は「35年までに電力部門の完全または大部分の脱炭素化」と、昨年のG7サミットの共同声明と同じ表現を提案。これに対し、一部の国は石炭火力発電の全廃時期の明示を求めていた。
 エネルギー安全保障の確保に向けては、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、脱炭素化とエネルギー源の多様化を両立させる重要性を確認する。
 環境分野では、海洋プラスチックごみについて、新たな汚染を40年までにゼロにする目標で合意した。19年の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)では50年を目標年としたが、G7は10年前倒しする。このほか、生物多様性の保全につながる取り組みを企業に促す枠組み「ネイチャーポジティブ経済連盟」を設立することでも合意した。
 会合は西村明宏環境相と西村康稔経済産業相が共同議長を務め、G20議長国のインドなど3カ国を招待した。16日は日本や各国が合同会見を開き、共同声明を発表する。(山田一輝、大能伸悟)

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