洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

Offshore wind farms and fisheries
”洋上風力発電と民主主義”

洋上風力発電と漁業 日本の経験#55 石狩湾 ニシン産卵場来遊沖に浮体式洋上風力発電計画

2023-11-29 09:50:26 | 日記

 

2023年11月29日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 日本の経験#55 石狩湾 ニシン産卵場来遊沖に浮体式洋上風力発電計画]

2023年11月29日付北海道新聞(山田一輝様)は、石狩湾でのニシンの産卵場への資源再生産のための来遊行動沖合域において、浮体式洋上風力発電実証事業計画が明らかになったと伝えている。

水深が50mを超えると、ボーリングによる地盤調査が困難であるため、これが行われないが、例え浮体式であっても、コーン貫入試験が深度方向に連続して行われる。

当該資源の成魚利用者は、調査海域漁業者ばかりでなく、少なくとも北海道の日本海側全体に及び、広域の多くの漁業者となる。

英国のスクロビー・サンズ(Scroby Sands)の洋上風力発電プロジェクトでは、設置前の地盤調査によって海砂が生じ、豊富であったニシン資源が数年間に渡り減少したことが報告されている。

 

2023年11月29日 北海道新聞(山田一輝様)

石狩で浮体式実証事業 洋上風力発電 JERA計画

東京電力グループと中部電力が出資する発電会社JERA(ジェラ)は28日、石狩市浜益沖で、支柱を海底に固定せずに海に浮かべる「浮体式」洋上風力発電の実証事業を行う計画を明らかにした。同区域は、経済産業省が行う浮体式洋上風力の実証試験の候補区域の一つで、本年度内に公募で事業者と区域が決まる予定。同社は「公募の応札に向けて準備していく」としている。

計画は公募に選ばれることを前提としたもので、石狩市浜益地区の沖合8~9・5キロ程度の2・4平方キロメートルの海域に、浮体式の風車を1、2基設置し、最大出力2万8千キロワットとする。水深70~80メートルの海底の基礎にワイヤをピンと張り、風車を安定させる「TLP方式」で行う。

深い海に囲まれた日本では、海底に支柱を固定する着床式より浮体式が主流になるとみられ、経産省は導入促進に向けて本年度から実証試験を行う。10月には、候補区域として石狩市浜益沖と岩宇・南後志地区沖のほか、秋田、愛知の計4区域を選定した。経産省は今冬に事業者を公募し、本年度内に2区域程度を試験場所として決定する。

経産省の実証試験は環境調査などを行った後、2027年度ごろに風車を稼働させる見込み。JERAは石狩市と小樽市にまたがる石狩湾沖でも総出力52万キロワットの着床式の洋上風力事業を計画している。

道内では浮体式の洋上風力発電の運転事例はなく、檜山管内奥尻町と宗谷管内利尻町の沖合で、環境省が委託した基礎調査が行われている。(山田一輝)

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洋上風力発電と漁業 日本の経験#54 秋田の国内初洋上風力「甘い見積」マチが変わることはない

2023-11-28 09:16:55 | 日記

2023年11月27日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 日本の経験#54 秋田の国内初洋上風力「甘い見積」マチが変わることはない」 

2023年11月27日付北海道新聞<デジタル発>(東京報道 堀田昭一様)は、秋田県北部の能代(のしろ)市で国内初の本格的洋上風力が稼働してからまもなく1年になるが、マチを歩くと、地元にくすぶる不満が見えてきたとリポートしている。

能代市内で長年タクシーを運転する男性は「工事の人が少し増えたぐらいで、マチが変わることはなかった。相変わらずさびれている」とぼやいた。

能代商工会議所会頭の佐藤肇治(せいじ)様は「地元に産業がない分、洋上風力には大いに期待している」としつつ「地元の仕事は基本的に、送電線が陸揚げされてから変電所までつなぐ一過性の工事しかなかった。しかもその他(の洋上工事)は大手(ゼネコンの受注)だ」と不満を隠さず、「風車の中核技術は海外メーカーが持っていて、外に出てこないから、地元企業の参入は難しい。作られた電気も、関東方面で消費される。地元には何も残らない」と語った。

なお、洋上風力は全国的に、地域の漁業者との調整が一つのハードルとなっているが、能代市では漁業者の反対がなかったとされる背景に、水産業生産額が2018年で2200万円で、市の経済全体に占める割合はほぼゼロとの評価だったことが指摘されている。

 

 

能代市の中心部にある商店街。シャッターの閉まった店が目立つ

2027年11月27日 北海道新聞<デジタル発>(東京報道 堀田昭一様)
秋田の国内初洋上風力 「順調」でも地元にたまる不満とは

秋田県北部の能代(のしろ)市で国内初の本格的洋上風力が稼働してからまもなく1年になる。事業者によると、発電はほぼ計画通りに進んでいるという。洋上風力は再生可能エネルギーの「切り札」と期待されており、道内でも12月から石狩湾新港で初の商業運転が始まる。一見、順風満帆な滑り出しに見えた能代だったが、マチを歩くと、地元にくすぶる不満も見えてきた。

能代港の洋上風力発電設備。風車同士は数百メートルずつ離して設置されている

能代港の洋上風力発電設備。風車同士は数百メートルずつ離して設置されている

■沖合3キロメートルまでに巨大風車20基

「根元が黄色いのが、すべて洋上風力の風車です」。11月上旬、能代港。秋田洋上風力発電(能代市)の岡垣啓司社長(52)が指さした。港湾の拡充工事で慌ただしい重機の向こう側、沖合3キロメートルほどまでの範囲に、計20基の巨大風車が風を受けてゆっくりと回っていた。風車の最大高さは150メートル。羽根一つだけで57メートルもある。
同社は大手商社丸紅を筆頭とする県内外13社が出資した企業。秋田県が実施した公募で2015年に採択された。事業費は1千億円で、秋田港と能代港の2カ所で20年から工事し、22年12月末から順次本格運用を開始した。発電容量は能代港が20基で計8万4千キロワット、秋田港が13基計5万4千キロワット。国の固定価格買い取り(FIT)制度を利用し、発電した電力は1キロワット時当たり36円で全量を東北電力の子会社に売電している。
風力発電は自然を相手にする性質上、常に100%設備が動いているわけではない。能代の場合は年間平均30%台前半の稼働率を目指しており、10月末現在では20%台という。ただ秋田は例年、冬に強い季節風が吹くため、岡垣社長は「稼働率は今後50%を超えるはず。季節要因を考えれば、ほぼ計画通りに進んでいる」と強調する。
風の状況などについて説明する岡垣啓司社長

風の状況などについて説明する岡垣啓司社長

■270億円の「経済効果」

能代市は人口約4万9千人で、世界遺産・白神山地のすぐ南に位置する。ブランド木材「秋田杉」の生産とネギなどの畑作が主な産業で、バスケットボール強豪校の能代工業高(現・能代科学技術高)を抱える「バスケのマチ」としても知られる。ただ秋田新幹線終着のJR秋田駅から車で1時間半というアクセスの不便さもあって、近年は人口減少が続いている。
そこで能代市が目指しているのは「エネルギーのマチ」だ。市内では2001年、東北電力の陸上風力発電所が建設されたのを皮切りとして、市内の海沿いの地域を中心に、風車が少しずつ増えてきた経緯がある。現在の陸上風力は計30基で、洋上風力も合わせれば計50基、発電容量は14万6千キロワットに上る。市は2019年に策定した「能代市次世代エネルギービジョン」にも「大規模風力発電事業の先進地化」を推進すると明記している。
能代市の中心部にある商店街。シャッターの閉まった店が目立つ

能代市の中心部にある商店街。シャッターの閉まった店が目立つ

風力発電の経済効果に対する能代市の期待は大きい。能代市エネルギー産業政策課の浜野隆司課長は、能代港の事業では、建設業を中心に地元で100億円の受注と、風車のメンテナンスなどで30人の雇用が生まれたと説明。「事業費の1千億円からすると少ないと思われるかもしれないが、これを取っかかりとして、今後の事業で(地元企業の関わる)割合を増やしていきたい」と意気込む。将来的には風車の見学ツアーなど観光振興につなげることも検討しているという。
能代市は丸紅などの洋上風力発電事業による固定資産の増加分を明らかにしていないが、市の予算書などによると2023年度の固定資産税収入は約45億円で、運転開始前の21年度と比べて4億円程度増える見込み。秋田県は、同事業の経済波及効果について建設工事やメンテナンスなどで約270億円、雇用創出効果は20年で約2700人と試算している。
地元のホテル関係者は「工事が始まった(3年前)ぐらいから、工事や視察の人で連日ほぼ満室」と驚く。洋上風力は一般会計の当初予算で300億円規模の能代市の地域経済に恩恵をもたらしている。

■洋上風力の仕事「地元にはない」

ただ、こうした恩恵はごく一部にとどまっているようだ。能代市内で長年タクシーを運転する男性は「工事の人が少し増えたぐらいで、マチが変わることはなかった。相変わらずさびれている」とぼやく。
能代商工会議所の佐藤肇治(せいじ)会頭は「地元に産業がない分、洋上風力には大いに期待している」としつつ「地元の仕事は基本的に、送電線が陸揚げされてから変電所までつなぐ一過性の工事しかなかった。しかもその他(の洋上工事)は大手(ゼネコンの受注)だ」と不満を隠さない。「風車の中核技術は海外メーカーが持っていて、外に出てこないから、地元企業の参入は難しい。作られた電気も、関東方面で消費される。地元には何も残らない」
佐藤会頭は、洋上風力の恩恵を地域に還元する一つの手段として「地元の洋上風力の電力を100%使った工業団地の設立」を提唱している。「再エネは企業ニーズも高いが、現状ではエネルギーの地産地消を促す仕組みがない。風車建設による新しい『風』を、中心市街地まで引っ張って来るきっかけが必要だ」と話す。
「再エネを地産地消できるかが重要だ」と訴える佐藤肇治会頭

「再エネを地産地消できるかが重要だ」と訴える佐藤肇治会頭

■洋上風力に「甘い夢を見ている」

人口5万人弱のマチで、50基もの風車。かなり多く感じるが、地元の反対運動は「なかった」(佐藤会頭)という。なぜなのか。
能代市の浜野課長はその理由について「市街地から遠くて風車が見えづらい海沿いの地域を中心に整備が進む中で、住民の理解もある程度深まっていった」と分析する。市街地から海までは車で10分ほど離れているのに加え、その間に国内最大規模の松林として有名な「風の松原」も広がる。このため、日常生活で風車を意識する人はそう多くないという。
市が2018年に実施した市民アンケート(回答数469)でも、陸上風力を「積極的に導入してほしい」「導入はやむを得ない」は計57.5%に上り、「あまり導入してほしくない」「導入に反対」の計15.8%を大きく上回った。陸上風力整備の先駆けとなった東北電力が、もともと市内で火力発電所を運営するなど地域に受け入れられていたことも背景にあるとみられる。
能代港そばの陸上風車。能代市内には陸上風車も30基ある

能代港そばの陸上風車。能代市内には陸上風車も30基ある

洋上風力は全国的に、地域の漁業者との調整が一つのハードルとなっているが、能代市では漁業者の反対もなかったとされる。市の統計によると、水産業生産額は2018年で2200万円と、全体に占める割合はほぼゼロ。漁業はもともと盛んではない上、「調査などのチャーター船で風力事業者側から収入を得てきたこともあり、本格的に反対する漁業者はいない」(関係者)。こうした反対の少なさが、全国に先駆けた商業運転の動きを後押ししたもようだ。
ただ、市民には不満も出てきている。2019年に住民団体「能代山本洋上風力発電を考える会」を立ち上げた中根慶照会長(73)は「風車が出来ればまち全体の景観は悪くなり、建設時には騒音、運転開始後は(低周波などによる)健康被害や(希少な野鳥が風車にぶつかって死ぬ)バードストライクの問題もある」と指摘。「地域住民にとって、良いことは何一つない」と繰り返す。
「風車が出来ることで良いことは何もない」と訴える中根会長

「風車が出来ることで良いことは何もない」と訴える中根会長

 現在の会員は市民を中心に約50人。定期的に学習会を開いたり、市に公開質問状を送るなどの活動をしているという。10年ほど前に関東から転居してきた中根会長は、風車が増え続ける現状に危機感を抱き、賛同する人を集めて会を立ち上げた。中根会長は訴える。「行政は住民を無視して一方的に推進するだけ。みんな洋上風力がくれば仕事が増えるかも、という『甘い夢』を見ているのではないか」
 道内では12月末、エネルギー開発のグリーンパワーインベストメント(GPI、東京)が石狩湾新港で道内初となる洋上風力14基の商用運転を開始する予定で準備を進めている。出力は一港湾としては国内最大となる11万2千キロワット。道内の日本海側では沖合の「一般海域」でも計画が相次いでおり、GPIを皮切りとして今後、洋上風力の整備が急速に進むとみられている。
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洋上風力発電と漁業 日本の経験#53 産官学金「チーム札幌・北海道」大規模撤退のデンマークを先進地と位置付けて視察

2023-11-27 07:11:42 | 日記

2023年11月27日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 日本の経験#53 産官学金「チーム札幌・北海道」大規模撤退のデンマークを先進地視察]

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

2023年11月27日付北海道新聞(内本智子様)は、道内で再生可能エネルギーなどGX(グリーントランスフォーメーション)関連産業を発展させ、投資拠点となる国際金融センター化を目指す産学官金の共同事業体「チーム札幌・北海道」が11月中旬、洋上風力発電プロジェクトの先進地とされるデンマーク等の欧州を視察したと伝えた。

洋上風力発電開発事業者として世界最大クラスのデンマークの半国営企業”オーステッド”(Ørsted)社は、米国、ノルウエーに続き、ヴェトナムの大型プロジェクトからの撤退をこれより先に表明している。

“オーステッド”は、2023年10月31日、米国の主力プロジェクト“オーシャン・ウィンド”を中止することを決定、翌11月1日、ニュージャージー州公共事業委員会に対し、1億ドルの保証金を取り戻したいと通報した。

また、ニュージャージー州のモノパイル基礎製造計画のために鉄鋼製造会社“EEW”と計画していた2億ドルの投資の返還も求めている。

新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。

今回の視察には行政の代表者も参加しており、これらの情報を的確に入手してきたのか、注目されるところとなる。

 

2023年11月27日 北海道新聞(内本智子様)

GX転換の速度実感 産官学金の「チーム札幌・北海道」欧州視察

道内で再生可能エネルギーなどGX(グリーントランスフォーメーション)関連産業を発展させ、投資拠点となる国際金融センター化を目指す産学官金の共同事業体「チーム札幌・北海道」が11月中旬、欧州の先進2カ国を視察した。デンマークでは洋上風力発電による水素の製造や輸出などの新しい取り組みを学び、エネルギー転換の速さを実感。金融センター化に向けてはGX関連産業の現場に近い札幌の地理的利点をどう生かすのか、課題も浮かび上がった。

<ことば>GX(グリーントランスフォーメーション) 石油や石炭など二酸化炭素排出量の多い化石燃料から、太陽光や風力など再生可能エネルギー中心へ産業構造や社会を変革し、経済成長を図る取り組み

<ことば>チーム札幌・北海道 4月に札幌であった先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合を契機に、6月に発足した産学官金連携のコンソーシアム(共同事業体)。札幌市や道のほか、金融庁や大手3行、北洋銀行、北海道銀行、北海道経済連合会、北大など道内外の21機関で構成。11月14~17日にルクセンブルクとデンマークを視察した。

■デンマーク、再エネの「先」へ

コペンハーゲンがあるシェラン島とフュン島をつなぐ海上架橋から見るデンマークの洋上風力発電機=

2023年11月17日

 「私たちは豊富な風を持っている。電気で使うだけなら風力はただの資源だが、水素に加工すれば世界中に売れる。それが今、水素を促進する理由だ」

 デンマークの首都コペンハーゲンにあるエネルギー庁の会議室。視察団を前に、業界団体グリーンパワーデンマークの再生可能エネルギー部門責任者、カミラ・ホルベックさんはエネルギー戦略の現在地をこう語った。北海道では初の洋上風力発電の商用運転が年内にも始まる段階だが、世界最先端の地では官民挙げ、再エネの「先」へと動きだしていた。

 水素は次世代エネルギーとして注目され、道内でも研究が進む。デンマークの特徴は水素製造時に必要な電気を風力でまかなう点だ。気候変動の原因となる二酸化炭素(CO2)を製造時も使用時も排出しない「グリーン水素」で、トラックや船舶の燃料など運輸分野での脱炭素化を図る。

 さらに、同国政府は自国消費だけではなく、輸出に力を入れる。世界的な水素需要の拡大が見込まれるからだ。最初の事業として、製鉄や化学工場を多く抱える隣国ドイツへの水素パイプライン整備に着手。2028年の完成を目指す。

 デンマークのエネルギー転換の速度は速い。風力は現在、発電の電源構成比で50%以上を占めるが、同国の電力会社オーステッドによると、08年当時は石炭など化石燃料が85%だった。09年に自国で開かれた国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を機に「化石燃料のビジネスに未来はないことは明白」(同社担当者)と判断し、官民で一気に再エネへとかじを切った。「40年まで」と定めた再エネ比率約85%の目標を20年以上前倒しして19年に達成したという。

 

■洋上風力、再エネ転換をけん引

 再エネ転換をけん引したのが洋上風力だ。国土の大半を風況の良い北海やバルト海に囲まれる。風の資源を最大限に活用するため、新たな試み「エネルギー島計画」が始まっている。

 洋上のウインドファーム(集合型風力発電所)で発電した電気は海底ケーブルで陸上に送る必要がある。島計画は、ファームごとにケーブルを敷設するのではなく、島をハブとして周辺のファームの電気を集め、高圧で本土や欧州に送電する構想だ。島での水素製造も検討中で、中央欧州への輸出や船舶の燃料としての利用を狙うという。

 その舞台の一つは、約4万人が暮らすバルト海のボーンホルム島。計3ギガワットの風力発電のハブにする計画だ。環境への影響調査など解決すべき課題もあるが、デンマーク工科大のヤコブ・オスターガード教授は「住民は安いグリーンエネルギーを享受でき、地域経済への波及効果も大きい」と説明する。視察団からは「洋上風力の潜在能力が高い北海道でも将来のヒントになる」との声が上がった。

 

風力発電機で世界最大手のメーカー・ベスタスで再エネ事情などを聞くチーム札幌・北海道のメンバー=

2023年11月17日、コペンハーゲン

 視察団が再エネ先進地で目の当たりにしたのは変化の速さ。視察に参加した北海道ガスの前谷浩樹取締役常務執行役員は「スピード感と大胆さ、発想のスケールと、そこに向かって進む実行力が勉強になった」と振り返る。また、札幌市の秋元克広市長は「仕事の進め方を変えなければいけない。できない理由を探すのではなく、トライアンドエラーの進め方にも挑戦し、速度を上げて具体的な取り組みを進めたい」と話した。

 

■独自のモデルをつくるチャンスに

 一方、金融センター化に向けてGX金融の先進地ルクセンブルクの銀行協会は「資本を集める場所と発電する場所が必ずしも一致する必要はない」と指摘。今後、道内で発展が見込まれるGX関連産業に近い地理的利点の生かし方はまだ模索中だ。北洋銀行の津山博恒常務取締役は「逆に言えば、国、地元、民間企業が一枚岩で取り組めば、世界にまだないGXと金融が近接した独自のモデルをつくれるチャンスがあるのではないか」と期待を込めた。(コペンハーゲン、ルクセンブルクで内本智子様、写真も)

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洋上風力発電と漁業 日本の経験#52 漁業影響調査を行っていない事業が先行する石狩湾 相次ぐ計画

2023-11-26 13:00:35 | 日記

2023年11月26日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 日本の経験#52 漁業影響調査を行っていない事業が先行する石狩湾 相次ぐ計画]

2023年11月13日、来月2023年12月にも稼働が開始される石狩湾でのプロジェクトについて、国土交通省港湾局海洋・環境課海洋利用調査センター(所長:榊原基生様)は、把握している限り、漁業影響調査に関する論議に至らなかったと語り、調べた限り漁業影響調査を行っていないと明らかにしている。

一方、2023年11月26日付北海道新聞(権藤泉様)は、その中にあって石狩湾が国内有数の「基地」になる可能性があると次のとおり伝えている。

 

2023年11月26日 北海道新聞(権藤泉様)

石狩湾の洋上風力発電、相次ぐ事業 地形好条件 課題は利害調整

再生可能エネルギー拡大の切り札とされる洋上風力発電を巡り、石狩湾が国内有数の「基地」になる可能性がある。風況が良く、遠浅の地形が好条件だからだ。石狩湾新港そばの約500ヘクタールで12月に風車が本格稼働するほか、沖合の1万ヘクタール超の海域については国が大規模プロジェクトに向けた重点エリアと位置付けている。「国策」を追い風に事業者が次々と名乗りを上げる中、今後の利害調整では課題も横たわっている。

同港にほど近い海上で今、高さ200メートル近い14基の風車が、海風を受けて回っている。総出力は11万2千キロワットで、単独の港湾区域内では国内最大だ。道と石狩、小樽両市でつくる石狩湾新港管理組合の担当者は「洋上風力事業を誘致する長年の取り組みがようやく実った」と手応えを語る。

風車が立つのは、同組合が管理する「港湾区域」。2012年に国が定めた風力発電の導入マニュアルに基づき、同組合は13年に港湾計画を変更するなど受け入れ準備を進めてきた。事業者にはグリーンパワーインベストメント(GPI、東京)が公募で選ばれた。

GPIは漁業者との対話を経て、今年7~9月に工事。室蘭が母港で130人が寝泊まりできる大型作業船「SEP船」を使い、海底に基礎を固定する「着床式」の風車を組み上げた。

北海道電力への売電に向け、今は試運転の最終盤。陸上に蓄電池も備え、将来は余剰電力で次世代エネルギーとして期待される水素を製造、供給する計画だ。

この間、国内外で脱炭素化の流れは加速。19年、洋上風力の普及を図る再エネ海域利用法が施行され、沖合の「一般海域」の開発構想が次々と浮上してきた。

国は今春、石狩市沖を含む道内5海域を「有望区域」と定め、最終段階の「促進区域」の手前までステージを進めた。このうち松前沖については今月、事業の具体像を関係者が話し合う法定協議会が始まった。

経済産業省によると、石狩市沖は南北約60キロ、海岸から最短2・5キロの帯状を想定。この場合、面積は約1万2200ヘクタールに及ぶ。石狩市中心部から同市浜益区にまたがる海域に当たる。

風車を最大約90基並べられ、出力規模は91万~114万キロワットにもなる。10月時点で有望区域や促進地域になっている道内外19海域では、檜山沖と並んで最大だ。

石狩市沖は、道内5海域で最多の11事業案が大手商社の丸紅や住友商事、関西電力などから公表されている。一定の強さの風が安定して吹く上、水深50メートル以下で工事がしやすいからだ。ある商社の担当者は「道内で特に魅力的だ」と話す。

一方で課題もある。一般海域での洋上風力の稼働例はなく、環境や漁業への影響は未知数だ。今月開かれた石狩市沖の事業案の住民説明会では、環境保全の優先エリアを定めた市の「ゾーニング計画」にそぐわないとの疑問が噴出した。

道外の先行事例では、法定協が3、4回あった後、促進区域に指定されている。最終的に公募で選ばれた事業者は最長30年間も占用できる。ただ、石狩市沖は、自治体や漁業組合などの関係者が多く、法定協発足への調整は遅れている。

石狩市は、再エネ100%で稼働するデータセンターなどの集積で産業振興を図る方針だが、GPIの発電設備を巡っても、石狩、小樽両市の固定資産税の配分協議が難航している。

国は40年までの道内の洋上風力の導入目標を最大1465万キロワットとする。日本全体の約3分の1に当たる。再エネに絡む地域の合意形成に詳しい沢祥雅弁護士は「国や道が調整役として間に入ることも重要だ」と指摘している。

 

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洋上風力発電と漁業 海外の経験#69 丁抹オーステッド 更に越プロジェクトからも撤退

2023-11-24 00:02:59 | 日記

2023年11月16日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 海外の経験#69 丁抹オーステッド 更に越プロジェクトからも撤退]

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。

一方、新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。

地元にこれらの情報が伝わっているのか理解に苦しみ、日本の洋上風力発電プロジェクトのプロモーションは一周遅れ、いや二周遅れ、或いは確信的背景を想像させるものとなってきている。

洋上風力発電開発事業者として世界最大クラスのデンマークの”オーステッド”(Ørsted)社は、米国、ノルウエーに続き、ヴェトナムのプロジェクトから撤退する。

デンマーク政府が主導するオーステッド・リニューアブル・エナジー・グループは、ヴェトナムにおけるすべての洋上風力発電投資計画を中止することを決定した。

ヴェトナム金融ネットワークは2023年11月21日、オーステッド・ヴェトナムの情報筋の話として、ヴェトナム天然資源環境省に海洋資源の調査・評価の承認申請を提出しない旨を報じた。

両国の共同洋上風力発電プロジェクトの開発活動も実施されない。

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