洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

Offshore wind farms and fisheries
”洋上風力発電と民主主義”

洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

2030-01-01 00:00:00 | 日記

洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

日本での、先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

英国業界は洋上風力発電が重要な白身魚の産卵場に大きな影響を与える可能性があることを指摘し、フランス業界は洋上風力発電により、明確に漁獲量が減るとして過激な抗議活動を行っている。

ノルウエー業界は、政治的圧力と無責任な地方自治体の決定により、重要な産卵地域と漁場が洋上風力発電開発のために開放される可能性があることに大きな懸念を抱いている。

米国漁業界は、政府が政治的利益を、第3者団体が寄付金を、そしてエネルギー会社が耐用年数の短い大規模な洋上風力発電で巨額の利益を、それぞれ求め、勝手に行動していると批判し、不信感をあらわにして、複数件の訴訟も起こっている。

世界中の漁業者が共通に、洋上風力発電について“漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組み”そして“事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じている”と指摘している。

一方、新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている

地元にこれらの情報が伝わっているのか理解に苦しみ、日本の洋上風力発電プロジェクトのプロモーションは、確信的背景を想像させるものとなってきている。

2024年1月1日、NHKは、北海道 石狩湾において国内最大級の洋上風力発電所が商業運転を開始したことを伝えた。

風力発電や太陽光発電を手がける東京の再生可能エネルギー会社「グリーンパワーインベストメント」が石狩市と小樽市にまたがる石狩湾新港に建設したもので、高さ196メートルの風車が14基並ぶ、国内最大級の洋上風力発電所としている。

しかし、稼働が開始された石狩湾でのプロジェクトについて、2023年11月13日、国土交通省港湾局海洋・環境課海洋利用調査センター(榊原基生所長様)は、把握している限り、漁業影響調査に関する論議に至らなかったと語り、調べた限り漁業影響調査を行っていないと明らかにしている。

漁業への影響について、所謂“ベースライン調査”なしに当該商業運転が開始されたことになる。

2023年12月18日、檜山管内沖で計画中の洋上風力発電事業にかかる法定協議会の第1回会合が開催された。

会合に出席した、地方独立行政法人北海道立総合研究機構水産研究本部函館水産試験場(板谷和彦調査研究部長様)は、地元のウニ、アワビ、ナマコの採捕と、伝統的に操業が行われ、タラコを供給してきたスケトウダラを対象とする延縄漁業に直接影響があること、更に、北海道西部日本海から宗谷海峡まで資源がまたがり、広域な漁業者に影響を及ぼす可能性のあるスケトウダラ(日本海北部系群)の産卵場であり、これに配慮すべきである旨を言及、当該資源についてはその減少を受け、20年間にわたり、強い資源管理に取り組み、この2年—3年でようやく資源回復した経緯があることを説明し、特に、現在、産卵場の形成として、熊石相沼沖水深150m域等が重要だと指摘した。

2023年12月28日付北海道新聞は、これまでスケトウダラ(日本海北部系群)の重要な資源再生産のための産卵場だった経緯があり、今後もそのポテンシャルがある江差町沿岸沖合のゾーニング素案を、江差町が同27日発表したと伝えた。

スケトウダラ(日本海北部系群)の成魚の利用者は、当該沿岸沖合漁業者ばかりでなく、少なくとも北海道の日本海側全体に及び、広域の多くの漁業者となっており、納得のいくプロセスが求められることになる。

現在、スケトウダラ日本海北部系群は、低位な資源評価から、世界中のスケトウダラ漁場において資源開発率(漁獲割合)が10%-20%に設定されているにもかかわらず、この漁場のみ5%を切る極めて低い総許容漁獲量設定で資源回復に取り組んでいる最中となっている。

 

 

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北海道日本海沖 洋上風力発電 漁業への影響危惧 有望区域にスケトウダラ産卵場 科学的調査を求める

2025-07-23 10:52:12 | 日記

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洋上風力発電と漁業 海外情報から見えた実相と北海道の沖合底びき網漁業 月刊アクアアネット2023年8月

2025-06-26 12:54:06 | 日記

 

月刊アクアネット誌 2023年8月

洋上風力発電と漁業 海外情報から見えた実相と北海道の沖合底びき網漁業

原口 聖二(はらぐち せいじ)

北海道機船漁業協同組合連合会 常務理事。58歳。北海学園大学経済学部卒業後1988年入会。2012年より現職。北洋転換遠洋底びき網漁船・沖合底びき網漁船のロシア海域操業を一貫して担当。民間ベースと政府間ベースの漁業交渉のため訪モスクワ70回超。現在、水棲生物資源の管理保全と合理的利用、漁業分野の経済等への貢献に関する海外の経験と日本のあり方に強い関心をもって任務にあたっている。

 筆者は、漁業に関わる立場から洋上風力発電の動向に関心を持ち、昨秋から欧米の漁業分野の業界紙のサイト等へアクセスして、“洋上風力発電と漁業”に関する情報の収集と発信を行ってきた。その中で、日本にはこれまで伝わっていなかった様々な影響と問題提起が存在していることが分かってきたので、その一端を報告したい。

「きせんれん」と沖底船

 北海道機船漁業協同組合連合会(愛称:きせんれん)は、沖合底びき網漁船と呼ばれる160トンクラスの漁船33隻が所属する水産業協同組合法に基づく連合会組織で、札幌に事務所をおいており、小樽、稚内、釧路の各機船漁業協同組合、枝幸、紋別、網走、広尾、日高、室蘭等の各漁業協同組合が会員となっている。漁船団は、一部、ロシアとの政府間協定に基づく相手国水域での漁獲割当を有しているが、主に日本の排他的経済水域(EEZ)で、道内10基地を根拠に、年間15万〜20万tのスケトウダラ、ホッケ、その他底魚類を漁獲し、地元水産加工業界等へ原料魚を供給している。

開発事業者発信の成功体験

 筆者は、この連合会に勤務し、漁業に関わる者として洋上風力発電の動向には一定の関心を持ってきたが、近年の洋上風力発電への開発事業者の取り組みの進捗は、自らの予想をはるかに超えており、地方自治体の前傾姿勢がこれを加速させているように感じるところがあった。当該沿岸沖合の既存の経済的利用者となる「漁業者への配慮」「十分な説明」「共存共栄」等のフレーズに加え、魚礁効果等、日本における報道では、先進地とされる欧米での成功体験が並んでいたが、これらは一様に開発事業者の発信によるものばかりとなっていた。

 このことから筆者は、2022年の秋から、洋上風力発電と漁業に関する欧米の漁業分野の業界紙のサイト等へアクセスし 、「洋上風力発電と漁業 海外の経験」というタイトルのブログを始め、情報の収集と発信を行うこととした。その中で、英国、アイルランド、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フランス、オランダ、そして米国等のプロセスは、必ずしも成功しているとは言い難く、日本にはこれまで伝わっていない、様々な影響と問題提起が存在していることが分かるところとなった。

欧米の漁業界による危惧と批判

 2023年3月、米国の漁業団体らで構成される“責任ある沖合開発連盟”(RODA)、米国海洋大気庁(NOAA)、そして米国内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)は、洋上風力発電開発が漁業と海洋環境にもたらす影響について、これまでの情報等の包括的な報告をとりまとめている。それより先の2020年11月には、ノルウエー海洋研究所(HI)が、やはり、洋上風力発電開発が漁業等にもたらす影響について報告書を発表している。

 欧米の漁業界が指摘しているのは、風力発電所の建設中の杭打ちの現場近くで魚類が打撲で死んだり、発生する衝撃音で建設が完了した後もしばらくの間、当該地域を資源が避け続けること、杭打ち衝撃音、稼働中のタービンの騒音が、タラ等の産卵行動中のコミュニケーションなど生物学的に重要な手がかりをかき消す可能性があること、さらには、商業的に価値の高い様々な魚種が、送電施設によって形成される電磁場にさらされ、通常の行動能力を失い捕食される機会が増大することが危惧されること等だった。

 また、米国漁業界紙は、政府が政治的利益、第三者団体が寄付金、そしてエネルギー会社が耐用年数の短い大規模な洋上風力発電で巨額の利益を、それぞれ求め、勝手に行動していると批判しており、同国漁業界は不信感をあらわにして、複数件の訴訟も始まっている。

 ノルウエー漁業界紙によると、同国漁業界が、洋上風力発電プロジェクトの候補地選定のプロセスが政治的圧力と無責任な地方自治体の決定に基づいていると批判しているほか、ヨーロッパの北部漁業者同盟も、天然資源をどのように最大限に利用できるかについて、真の対話が必要であり、それは、伝統的な海の利用者の声を平等に尊重するためのものだとして、各国政府に対し、食料安全保障の考慮と海洋環境の健全性等を求めるための行動の開始を決議した。

 これら全て、世界中の漁業者が共通に指摘していることは、

★当該沿岸沖合を独占利用しようなどとは全く考えていない。

★自らが知らない間に選定地が決まり唐突に説明会が始まる。

★漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組み。

★事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じている。

この4点に集約される。

漁業分野の科学的勧告が置き去りにされている

 温暖化による漁場形成の変化に翻弄されている漁業者において、カーボンニュートラルを目指すエネルギーの開発に対して異論を唱える者は、ほぼゼロと言っても過言ではないと筆者も感じている。ではなぜ、世界中の漁業者が、共存共栄こそが歩むべき道と理解しながらも、多くのネガティヴな指摘をするのかというと、やはりプロセスにおいて、“漁業分野の科学的勧告が担保されるのか”、“これが置き去りにされている”と、大きな不安を感じているからだと考えている。我々漁業界がこれまで長い時間、科学研究機関と交流し、資源の保全管理と合理的利用を行ってきたことに対する理解を求める必要があり、共存共栄のための相互理解がそのプロセスにとって重要だと指摘したい。

ゼロサムゲームの構図にも

 日本政府は、2023年2月、洋上風力発電の建設場所をEEZまで拡大するための法整備を検討していく方針を示した。北海道の沖合底びき網漁業は、駆け廻し漁法とオッター・トロール漁法で、沿岸側で操業が禁止されているラインの外側(沖側)で操業を行っている。これは、沿岸漁業との棲み分け調整に加え、文字通り洋上を“駆け廻り”、沖合底びき網漁業が広範な海域を利用することを特徴としているためで、また同時に、利用する底魚資源の漁場形成も広範にわたっている実態がある。

 仮に洋上風力発電プロジェクトが沖合底びき網漁業の利用海域の一部を求めた時、我々の操業に魚礁効果はほぼ無縁であり、建造物を縫って操業することもできず、動力を失った時の衝突リスク等、おおよそメリットの想定は不可能で、海域が競合する場合には、共存共栄とはほど遠い、ゼロサムゲームの構図になると予想される。さらなる問題点は、当該海域における操業機会の喪失ばかりではなく、回遊する資源の再生産等への重大な影響が存在していることだ。

 我々の漁業基地、北海道でも、先の統一地方選挙において鈴木直道知事が洋上風力発電の導入促進を公約に掲げ再選を果たした。経済産業省と国土交通省は、洋上風力発電に関するセントラル方式の一環として、2023年度に実施を予定する調査対象区域について、都道府県からの情報提供と第三者委員会における意見を踏まえ、北海道日本海側の「岩宇(がんう)・南(みなみ)後志(しりべし)地区沖」、「島牧(しままき)沖」、そして「檜山(ひやま)沖」の3区域を初めて選定したと発表した。

 北海道の沖合底びき網漁業にとって、最も重要な漁獲対象資源はスケトウダラだが、現在、北海道日本海側資源(日本海北部系群)は、低位な資源評価から、世界中のスケトウダラ漁場において資源開発率(漁獲割合)が10〜20%に設定されているにもかかわらず、この漁場のみ5%を切る極めて低い総許容漁獲量設定で資源回復に取り組んでいる最中となっている。一方で、上述の調査海域には、重要なスケトウダラ資源再生産のための産卵場が含まれており、成魚の資源利用者は、調査海域漁業者ばかりでなく、少なくとも北海道の日本海側全体に及び、広域の多くの漁業者となる。

真の共存共栄に向けて

 今回、先進地とされる欧米の洋上風力発電への対応に関する漁業分野の経験の一部を紹介することができた。現時点(2023年7月)において、北海道日本海のプロジェクト、その他の沿岸沖合のプロセスの今後の展開に関する詳細な情報に接していないが、洋上風力発電とのゼロサムゲームを回避し、真の共存共栄を目的に、科学研究機関を交えた論議の場と、納得のいく科学的勧告を強く求めるべく、関係者への働きかけ、我々の業界の立場の表明を開始したところとなっている。

 

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洋上風力発電と漁業 日本の経験#64 洋上風力発電に異議 道機船連 原口聖二 漁業を犠牲にしてまで意味があるPJなのか

2025-03-19 15:43:37 | 日記

2024年03月19日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 日本の経験#64 洋上風力発電に異議 道機船連 原口聖二]

“コストや資源リスク大 漁業を犠牲にしてまで推進する意味があるプロジェクトなのか”

 

2024年03月19日 日刊水産経済新聞

日本でも地球温暖化対策として洋上風力発電事業が推進される中、北海道機船連の原口聖二常務は、欧米で最近、開発コスト上昇に伴う採算悪化の問題が顕在化していることや、施設建設に伴い漁業資源に悪影響が及ぶ可能性を改めて指摘し、これらに見合う導入意義があるのかと疑問を投げ掛けている。

 

2024年03月19日 日刊水産経済新聞

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洋上風力発電と漁業 日本の経験#80 山形県担当者が「事実に基づかない発言」鶴岡市 草島市議が指摘

2024-07-06 20:59:06 | 日記

 

2024年07月06日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 日本の経験#80 山形県担当者が「事実に基づかない発言」鶴岡市 草島市議が指摘]

新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、洋上風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。

地元にこれらの情報が伝わっているのか理解に苦しみ、日本の洋上風力発電プロジェクトのプロモーションは、国民負担の賦課金を最初からあてにした”確信的背景”を想像させるものとなってきている。

2024年7月4日、“さくらんぼテレビ”様は、“酒田沖洋上風力発電計画 住民対象の意見交換会”で山形県担当者が「事実に基づかない発言」をした旨、鶴岡市議会議員の草島進一様が指摘していると伝えた。

2024年6月24日、山形県や酒田市が住民を対象に開いた意見交換会で、県の担当者が行った発言で、「海岸線から約2キロの洋上に巨大な風車が建設されるのは世界的には非常識」と質した住民に対し、「参考までに申し上げますと、まだ運転開始はしていないが世界的に見ると台湾では14MWクラスの風車が離岸距離5キロにあり、必ずしも一様ではない。非常識ということに直結するかは私としては判断がつかない。」と答えた。

 

 

しかし、草島進一様が独自に調べたところ、台湾での発言のような計画は確認できず、県が発言の情報元とした国にも確認したが、明確な回答は得られなかったとしている。

草島進一様は「『非常識と思えない』などと発言して、住民をミスリードしていく姿勢は許せない」とし、発言の真意を質すため、近く県に公開質問状を出す予定だと伝えられた。

(*報告担当者 原口聖二:鶴岡市議会議員の草島進一様は当日の会見において、国の主導による“MSP:海洋空間計画”の策定の必要性についても説明している。)https://www.youtube.com/watch?v=p4ucAmwGIq8&t=3964s

 

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