洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

Offshore wind farms and fisheries
”洋上風力発電と民主主義”

洋上風力発電と漁業 日本の経験#84 洋上風力発電 「再エネ賦課金」と腐蝕の構造

2024-08-31 10:19:54 | 日記

 

2024年08月31日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 日本の経験#84 洋上風力発電 「再エネ賦課金」と腐蝕の構造]

新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、洋上風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。

地元にこれらの情報が伝わっているのか理解に苦しみ、日本の洋上風力発電プロジェクトのプロモーションは、国民負担の賦課金を最初からあてにした”確信的背景”を想像させるものとなってきている。

東洋経済ONLINE大塚隆史様は、“「洋上風力汚職」で風力発電協会の残念すぎる検証”と題したリポートの中で、秋本議員が、洋上風力の公募入札ルールについて「具体的な“味付け”をエネ庁に指示している」と強調して、入札ではベスタス社(デンマーク)製の風車を採用するよう企業に繰り返し求めていたと記している。

 

 

東洋経済ONLINE大塚隆史様

2024年08月30日、“「洋上風力汚職」で風力発電協会の残念すぎる検証”

検証委員の1人が「秋本議員に個人献金」の過去

「最初から着地点が決まっていた。結論ありきの検証だ」。日本風力発電協会(JWPA)が2024年7月22日に公表した「検証報告書」について、ある会員企業の社員は憤る。

JWPAは風力発電の業界団体で、約500社のメーカーや発電事業者などが加盟。近年は洋上風力に関する政策提言を積極的に行ってきたが、昨年10月に資源エネルギー庁から行政指導を受けた。「第三者の関与の下で協会の意思決定および活動のあり方等を検証するように」という内容だ。

指導のきっかけとなったのは、洋上風力を舞台とした秋本真利衆議院議員と日本風力開発・元社長の受託収賄事件だ。事件前の秋本議員は自民党に所属、再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の事務局長を務め、風力発電の普及を推進してきた。

東京地検特捜部は、元社長が国会質問などを依頼し、秋本議員がその見返りに賄賂を受け取ったとして昨年9月に2人を起訴した。秋本議員は起訴内容を否認している。

霞が関から「出禁扱い」に

この汚職事件には、JWPAも一定の関与があったのではないかと取りざたされてきた。加藤仁代表理事は日本風力開発の副会長(いずれも当時)。ほかにも同社の関係者がJWPAの要職に就いており、日本風力開発の強い影響下にあったからだ。

秋本議員らが起訴された日、JWPAはHP上で贈収賄疑惑への関与を否定するとともに「協会活動が特定の役職員や法人の意向に左右されることはない」と意見表明した。

しかし翌月にエネ庁から指導を受ける。JWPAは、「エネ庁はおろか、環境省など霞が関全体で出禁の扱い」(業界関係者)となった。

このようなことを背景にJWPAは、東京大学先端科学技術研究センターの飯田誠・特任准教授を座長とする検証委員会を立ち上げた。飯田氏は洋上風力に関する国の審議会で委員を務めている。

同委員会は、JWPAの意思決定および活動のあり方について問題点を検証することを目的に掲げ、「贈収賄事件は検討事項ではない」(JWPA広報)とした。ただ報告書では秋本議員との関わりについても紙幅を割いている。

そこでの結論は「違法性はない」。秋本議員とは交友関係を築いてきたが、JWPAから国会で質問をしてくれるように働きかけた事実は確認されなかったとする。秋本議員のほうから、風力関係の質問をするので質問事項を提出してほしいと要請を受けて対応したときも、なんらかの利益を供与した事実は確認されなかったという。

そのうえで贈収賄事件については、検察の起訴によって協会が潔白だということは明白になったと主張。「特定の会員企業に経済的・人的に依存していたことが特定企業の発言力の大きさにつながった可能性がある」と指摘している。

国内産業への経済波及効果という点では、三菱重工が出資しているベスタスが有望だ。ほかの欧米メーカー製では経済波及効果を得られないと秋本議員は考えていたようだ。

MHIベスタスジャパンの社長は、現在JWPAで副代表理事を務める山田正人氏だ。2020年の昼食会のやり取りについて確認すると、「確かにそうしたやり取りがあった」と認めた一方で、「何の前触れもなくそういう話が出たので他事業者も聞き流した」と述べた。

だが山田氏は、報告書のメディア向け説明会の場で矛盾した発言をしている。秋本議員との間において、入札の方向性や個社の戦略に関わるやり取りは「把握している限りなかった」と言明しているのだ。

昼食会の出席者リストには、山田氏、コスモエネルギーホールディングス(HD)の子会社コスモエコパワーの眞鍋修一氏(JWPA元理事)、中村成人JWPA専務理事の名があった。この3人は今回、検証委員会の委員を務めている。現在の代表理事である秋吉優氏(ユーラスエナジーHD副社長)の名もリストにある。

 

 

自民党再エネ議連

2022年6月、洋上風力に関する提言書を萩生田光一経産相(左)に手渡しした、自民党・再エネ議連の柴山昌彦会長(中央)。秋本真利議員(右)は事務局長を務めていた。肩書は当時(記者撮影)

秋本議員とJWPAの距離が接近する契機になったとみられるのが、2020年に開催された「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」だ。この官民協議会で、アジアでも有数の洋上風力の導入目標を初めて策定した。

秋本議員は官民協議会の発案者を自負し、関係企業に自身への支援を強く求めていた。こうした秋本議員の振る舞いは、検証委員会の検証対象からすっぽりと抜け落ちている。

「(エネ庁からは)官民協議会にさかのぼって秋本先生とどういう付き合いをしてきたかは問題視されていない。さかのぼって議論する必要はないということでこの報告書はまとまっている」(山田氏)

検証委員会の人選に疑問あり

冒頭に記した会員企業の社員のように最初から検証には期待していなかったという声は少なくない。そもそも検証委員会の人選に問題があるからだという。

問題を起こした当事者やその当事者に近しい人物を排して検証委員会を設置するのがセオリーだが、JWPAは定石に反して委員を選任した。検証対象となるのはJWPAの旧体制における意思決定と活動のあり方だ。ところが3人いる協会側委員のうち、山田氏と中村氏の2人は旧体制の幹部だ。

それだけではない。元代表理事の加藤氏は、山田氏にとって三菱重工時代の上司。同じく旧体制で副代表理事だった祓川清氏(当時は日本風力開発グループ企業の最高顧問)は、中村氏のユーラスエナジーホールディングス時代の部下だ。

秋本議員とJWPAとの関係に不適切なものはなかったというわけだが、検証委員会による検証範囲はきわめて狭い。

どのような過程で日本風力開発が影響力を強めていったのか。日本風力開発の元社長が自らの思惑を通すためにJWPAに働きかけることはなかったのか等については触れられていない。一部幹部の“暴走”についてもなぜチェック機能が働かなかったのかという視点が弱い内容になっている。

2020年の昼食会での「秋本発言」

2021年12月末、大型洋上風力の事業者公募において、三菱商事などの企業連合が3海域のプロジェクトを独占し「総取り」した。それ以前の動きも検証の対象になっていない。

事業者公募の結果が出た後、JWPAは直ちに入札ルールを変更すべきだと提言。呼応するかのように秋本議員は翌年2月の国会で、事業者公募の際の評価基準の見直しを訴えた。三菱商事陣営の総取りで洋上風力への事業参入の目論見が崩れた企業の1つが日本風力開発だった。

報告書は総取りを受けたJWPAの提言について、「きわめて閉鎖的に取りまとめが行われ、不適切だった」とし、「執行部の自負や思い込みが強すぎたものと考えられる」と総括している。

この公募の結果が出る約1年前の2020年9月。JWPA会員企業と秋本議員の間で昼食会が開かれた。官房長官だった菅義偉氏が出席する予定だったが、首相に就任したため欠席。菅氏の名代として出席したのが秋本議員だった。

その席で秋本議員は、洋上風力の公募入札ルールについて「具体的な“味付け”をエネ庁に指示している」と強調。入札ではベスタス社(デンマーク)製の風車を採用するよう昼食会に出席した企業に繰り返し求めていた。

疑問はまだある。検証委員会で「第三者」と位置づけられた委員だ。

6人いる第三者委員の一人が、西村あさひ法律事務所・外国法共同事業の平尾覚弁護士だ。JWPAは秋本議員の贈収賄事件への対応をめぐり、同弁護士に相談をしていた。

メディア向け説明会で検証委員会座長の飯田氏は、「弁護士の仕事柄、(仕事ごとの)線引きはしっかり引かれている」と強調。説明会から数日後、JWPAの広報担当者から届いたメールには、平尾弁護士との委任契約は委員会設立時には終了しており、「客観性と中立性は保たれている」と記されていた。

利害関係のない第三者だとするJWPAの説明に、納得できる人はどの程度いるのだろうか。

 

 

第三者なのかあやふやな委員

前述した昼食会の出席リストに名があった眞鍋氏も第三者委員だ。ところが旧体制で理事を務めていただけでなく、秋本議員に5年間で60万円を個人献金していた。個人献金自体に法的な問題はないものの、秋本議員の支援者が第三者として委員に就いたことの適切性は問われてしかるべきだ。

山田氏は、眞鍋氏が個人献金していた事実は認識しているとし、「協会の過去の経緯や歴史を把握していることから選任したため、第三者としては認識していない」(山田氏)と釈明した。

JWPAからは8月29日時点で平尾氏や眞鍋氏を第三者とする報告書の内容を修正していない。これで報告書の信頼性を確保することができるだろうか。

運営体制改善の取り組みなどをまとめた完了報告書をエネ庁に提出したことをもって、JWPAの「霞が関への出禁」は解除された。JWPAは体制の改革などを進めているが、関係者の処分は行わない。「(運営ルールの不備など)協会自体の問題というのが結論」(秋吉代表理事)だからだ。

検証委員会を通じたJWPAの膿を出し切るチャンスは失われた。こうした対応を会員企業は許容するのか。社会の目は会員企業のガバナンス意識をも問うている。

 

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洋上風力発電と漁業 海外の経験#91  米国 MA沖タービン破壊事故 漁船団洋上デモ実行

2024-08-28 15:47:27 | 日記

 

2024年08月28日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 海外の経験#91  米国 MA沖タービン破壊事故 漁船団洋上デモ実行]

日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。

一方、新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。

2024年7月13日、マサチューセッツ州沖の“ヴィンヤード・ウインド”(Vineyard Wind)社による洋上風力発電開発プロジェクトのタービンが破壊、その後、ブレードの残骸がナンタケット島に打ち寄せられ、危険でありビーチが閉鎖される等の事態が発生、米国安全環境執行局(BSEE)は、風力発電所の建設と操業を一時停止する命令を発出する事件が起きた。

このプロジェクトのブレードはグラスファイバー製で残骸とともにガラス繊維が漂着、住民説明会において人体への被害、周辺海域の海洋汚染、魚の食物連鎖を危惧する指摘、意見等が噴出した経緯がある。

かかる状況下、2024年8月25日、25隻の漁船団がナンタケット島沖合に集結、監視下にある“ヴィンヤード・ウインド”プロジェクトに抗議する洋上デモンストレーションを実行した。

当該プロジェクトの故障機は、ブレードが折れ、鋭いグラスファイバーの破片が海に飛び散ったことで調査を受けている。

ニューイングランド漁業者管理協会(New England Fishermen's Stewardship Association:NEFSA)代表ジェリー・リーマン(Jerry Leeman)は、“ヴィンヤード・ウインド”プロジェクトについて、我々の漁業にとって脅威で、今回の事件が海洋コミュニティに壊滅的な打撃を与える可能性があることを証明していると語り、航行上の危険、環境への影響、厳しい気象条件でのタービンの構造的完全性について懸念を表明、今年2024年11月の大統領選挙において政権が交代し、グリーンエネルギー計画が見直しされるための行動をとっていくと加えた。

コネチカット、マサチューセッツ、ニュージャージー、ニューヨークの沖合で計画されていた風力発電所のいくつかは、インフレと金利上昇でプロジェクトの経済性が一変したため、中止または延期されている。

洋上風力発電において、先行する英国の再生可能エネルギー財団“Renewable Energy Foundation”は2020年11月、レポート“風力発電の経済-レトリック(美辞麗句)と現実”を発表している。

この中で、洋上風力発電プロジェクトのコストの予測は、押しなべて規模の拡大と経験効果によって、設置容量の増加にともない平均コストが低下すると説明されているが、現実には、容量が増加するたびに発電コストは上昇しており、その重要な要因の一つに、予想以上に早期に多発する故障にあると指摘している。

 

 

 

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洋上風力発電と漁業 日本の経験#83 北海道 洋上風力推進連携会議を開催 事業の採算性に疑問 日刊水産経済新聞

2024-08-07 05:41:29 | 日記

2024年08月02日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 日本の経験#82 北海道 洋上風力推進連携会議を開催 事業の採算性に疑問]

2024年08月07日 日刊水産経済新聞【札幌】

北海道の洋上風力推進連携会議が2日に開かれ、国の洋上風力政策の進捗(ちょく)状況や、道内の「有望区域」における協議会運営状況などについて情報共有し、漁業関係者らと意見交換した。

この中で、道機船連の原口聖二常務は「知れば知るほど、不信感が募るばかり」として、建設コストの上昇などによる洋上風力発電事業の採算性について言及。「北米海域では欧州企業が全然採算が合わないと撤退している。本当に経済的にプラスになるのか。採算の合わない事業を進めていって、われわれがまともな補償を受けられるか非常に疑問」と指摘した。

また、港湾法に基づく事業として、すでに商業運転を開始している石狩湾新港内での洋上風力発電について触れ、「漁業影響調査が行われないままスタートしている。ベースラインがないと、プラスなのかマイナスなのか、漁業への影響を検証できない。ベースラインをしっかりつくるような調査の実施を指導してほしい」と要望した。

資源エネルギー庁の担当官は事業の採算性や補償の問題について、「国が資金収支計画や事業計画をチェックしている。仮に事業を廃止せざるを得ない場合は撤去費用などの積み立てなども実施しながら、皆さまに心配のないよう取り組んでいる。発電事業者と漁業者との調整については、法定協議会で国、都道府県、関係自治体も入り、民民任せにならないように協議を進めている」と回答。

また、漁業影響調査については「再エネ海域利用法に基づくプロセスでは、協議会の中でしっかり漁業影響調査の考え方などを整理しながら、地元漁業者や有識者も交えながら、適切に協議を進めていく」とした。

松前沖は「促進区域」に移行へ

道内では昨年5月に(1)石狩市沖(2)岩宇・南後志沖(3)島牧沖(4)檜山沖(5)松前沖―という日本海側の5区域が「有望区域」として整理され、このうち松前沖、檜山沖、岩宇・南後志沖の3区域は法定協議会を組織し、協議会意見の取りまとめに向けた議論が行われている。

この中で松前沖は7月31日に開かれた第3回協議会で意見取りまとめを行い、「促進区域」の指定に向けた手続きに移行することで合意した。

 

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洋上風力発電と漁業 日本の経験#82  浮かんできた協議会の「盲点」 導入本格化する北海道

2024-08-04 09:25:12 | 日記

2024年08月02日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 日本の経験#82  浮かんできた協議会の「盲点」 導入本格化する北海道]

(2023年08月04日付“朝日新聞”(日浦統)様から転載)

洋上風力発電、浮かんできた協議会の「盲点」 導入本格化する北海道

「ゼロカーボン北海道」を掲げる北海道で、大規模な洋上風力発電の導入が本格化している。導入の決め手となるのが、再エネ海域利用法に基づく「促進区域」の指定だ。一般海域を最長30年間利用できて、国の支援も望める。国は、原子力発電所のような地域の分断を招かぬよう、自治体や地元関係者でつくる法定協議会の同意を指定の要件とする。しかし、ここに来て、この合意形成手法の「盲点」も浮かび上がっている。

7月31日、北海道最南端の町、松前町で3回目となる法定協議会が開かれた。町沿岸の約3710ヘクタールに洋上風力発電所を建設することについて合意した。会議では、若佐智弘・松前町長は「人口減は深刻。気候変動で主力のスルメイカの漁獲量減少に歯止めがかからない」など実情を説明。町を「風をいかしたリニューアブルタウン」とする将来像を打ち出し、発電所が漁業の活性化や雇用創出などにつながる期待感を表明した。松前さくら漁協の吉田直樹代表理事組合長も「漁業資源を守っていかねばならない。漁業者と事業者が互いに知恵を出し合えば、共存共栄できる」と合意の理由を説明した。

意見のとりまとめではヤリイカの漁期や産卵期の2~5月は工事を休止することや、マグロの漁期にあたる7~1月は沖合での工事で振動や騒音の低減措置をとることが明記された。地域振興のための財政面でも、売電利益を地元に還元する基金の設立も盛り込まれた。

松前沖、道内初の「促進区域」へ

松前沖は今秋にも、道内に五つある再エネ海域利用法に基づく「有望な区域」の先陣をきって「促進区域」に指定される見通しだ。

北海道は全国よりも10年早いペースで人口減が進む。国が推進する洋上風力発電所の建設は、過疎化対策の側面もあり、地元では賛同意見が少なくない。道内では同じく「有望な区域」である檜山沖、岩宇・南後志地区沖でも協議会が設立されて議論が始まった。

ただ、協議会による合意形成手法を懸念する関係者もいる。

8月2日、札幌市内で開かれた道の「洋上風力推進連携会議」の会合。「知れば知るほど、不信感がどんどん募っている。本当に経済的に採算があうのか

北海道機船漁協組合連合会の原口聖二常務理事はこう本音をぶちまけた。沖合を主な漁場とするトロール漁業の業界団体を代表して、出席した。北米で採算の悪化から欧州の風力発電事業者が撤退している例などを引き合いに、日本でも導入した後で「補償がまともに受けられるのだろうか」と疑義を呈した。そのうえで、海外のように、幅広い利害関係者が参加して、広範囲で洋上風力の開発海域を定める「海洋空間計画」を策定する手法を採るべきだと訴えた。

本来、海に区域はなく、魚は自由に移動する。ある地域で起きた沿岸漁業への悪影響が回り回って、沖合のトロール漁業に及ぶ可能性は否定できない。「なのに、我々は地元協議会には参加できない」と原口氏は憤る。

環境保護団体からは、協議会の構成員が限られている点への不満も表面化している。

環境保護団体に募る不満

昨年12月20日、北海道自然保護協会(札幌)など4団体は国と道に、石狩市沖で進む洋上風力発電所に関する協議会に、環境保護団体を構成員として参加させるよう求める要望書を提出した。

石狩市沖は安定して良質な風が吹き、遠浅の海岸をもつことから、10社が洋上風力発電所の建設を計画する道内有数の集積地だ。想定される発電容量は最大114万キロワットと、原発1基分に相当する。港湾区域内では今年1月からは、国内最大級の11万2千キロワットの洋上風力発電所の商業運転もスタートしている。

4団体は「風力発電所が計画されている海域は、2019年に石狩市が、市内を環境保全を優先すべきエリアと風力発電導入可能なエリアに分けた『ゾーニングマップ』のうち、環境保全エリアと重なる」などとして、建設中止を求めている。

法律上、協議会の構成員は「漁業関係団体や利害関係者のほか、知事などが必要と認める者」とされる。しかし、昨年末時点で、全国各地で設立されている法定協議会に環境保護団体が構成員で参加している例はなく、その後も参加例は出ていないとみられる。

どこまでを、洋上風力発電における「利害関係者」ととらえるのか。国内では初の試みだけに、試行錯誤が続きそうだ。

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洋上風力発電と漁業 日本の経験#81 漁業関係者から厳しい意見も 北海道 再エネ拡大へ洋上風力推進会議

2024-08-03 21:11:52 | 日記

 

2024年08月02日

北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 日本の経験#81 漁業関係者から厳しい意見も 北海道 再エネ拡大へ洋上風力推進会議]

(2023年08月02日 TVH“テレビ北海道”様から転載)

国のGX特区指定を受け道などが事業拡大を目指す洋上風力発電。その導入を推し進める会議が、札幌で開かれました。会議には国や道、経済団体が参加しました。

道と札幌市が国の「GX金融・資産運用特区」に指定されたことを踏まえ、再生可能エネルギー拡大の切り札とされる洋上風力の導入どう加速させるかを話し合いました。漁業関係者からは、導入効果を見極めるべきだとの意見が出ました。

北海道機船漁業協同組合連合会の原口聖二常務理事は「大型の風力発電をつくることで本当に二酸化炭素が削減されるのか、クリーンエネルギーの付加金(再エネ賦課金)頼みの事業にわれわれ(漁業関係者)が付き合わされるメリットがあるのか不信感が募っている」 と意見を述べました。

道内では現在石狩市沖など5つの区域が、洋上風力発電の検討ができる「有望区域」になっています。 また、松前沖の区域の地元協議会は、先月31日、国が事業者の公募を進める「促進区域」への指定に合意しています。

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