洋上風力発電と漁業 海外と日本の経験

Offshore wind farms and fisheries
”洋上風力発電と民主主義”

洋上風力発電と漁業 海外の経験#22 米国 漁業への影響 ノルウエーの研究結果を指摘

2023-03-30 12:45:48 | 日記

 

2023年03月29日

リポート 北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二

[洋上風力発電と漁業 海外の経験#22 米国 漁業への影響 ノルウエーの研究結果を指摘]

日本での、先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。

米国ニューイングランド漁業管理評議会(NEFMC)事務局長トーマス・ニースは、洋上風力発電プロジェクトの漁業への大きな影響に関する報告として、ノルウエー海洋研究所のリポートの存在を指摘している。

洋上風力発電所が放出する磁場が、白身魚のハドックの幼魚の移動能力を低下させ、捕食される機会を増加させる可能性がある。

洋上風力発電所は、高電圧交流 (HVAC) あるいはHVDCのケーブルのいずれかを使用して電力を陸上に送る。

前者は海岸から約 30マイル以内の短距離、後者はより長い距離のプロジェクトに適しているとされる。

最近の複数の研究では、商業的に価値の高い様々な魚種が、HVDC によって放出される磁場にさらされることによって悪影響を受けることが報告されている。

これにより、魚の移動能力が混乱し、状況によって捕食者からの危険にさらされる機会が増大することになる。

米国漁業者は、同じ白身魚のタラとハドックの類似性を指摘している。

米国東部メイン湾沖で提案されている洋上風力発電プロジェクトでは、ケーブルをタラの産卵場に通す計画となっており、個体数を大きく減少させる可能性があることに懸念を表明している。

トーマス・ニースはNEFMCがメイン湾でのすべての活動を管理しているわけではないが、多くの水棲生物資源を利用する漁業を管理していると述べ、洋上風力発電プロジェクトに関し、水産科学の専門知識を取り入れた取扱いを同国内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)に求めるとした上で、産卵場などの“敏感で重要な資源の生息地”にケーブルを配置することを禁止すべきである旨を加えた。

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洋上風力発電と漁業 日本の経験#16 海底送電線新設 北海道内洋上風力に弾み 保護区域指定後押し

2023-03-30 07:42:08 | 日記

2023年03月30日 北海道新聞様から転載

[海底送電線新設 北海道内洋上風力に弾み 保護区域指定後押し]

北海道と首都圏を結ぶ大規模な海底送電線の構想が加速している。国の認可法人・電力広域的運営推進機関(広域機関)は2023年3月29日公表した長期計画で2050年までに最大3兆4千億円を投じ、日本海側と太平洋側に送電線を敷設することを盛り込んだ。地域をまたいだ電気の融通により首都圏で常態化する電力不足の解消を図る狙いで、洋上風力発電をはじめとした道内の再生可能エネルギー拡充にも弾みがつきそうだ。北海道内洋上風力に弾み 促進区域指定後押し コスト低減に課題]

 「北海道と東北における洋上風力の規模が非常に大きく、投資額が膨らんだ」。広域機関の松田章志計画部長は同日の会見で、北海道―東北―関東の送電網整備費用が、全国の計画の9割近くを占めることについてこう説明した。

 政府は50年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、電源に占める再エネ比率を現在の20%から30年度には36~38%程度まで大幅に引き上げるとする。ただ再エネの適地は道内など地方部に集中。現状は地域間の送電網が不足し、電気が余る地域から足りない地域へ融通しきれていない。九州では再エネの出力を抑える事態が頻発し、昨年は道内でも起きた。

 政府は昨年12月にまとめた基本方針で、今後10年で約千万キロワット分の広域送電網を全国に整備する計画を決定。道内からも30年度までに日本海経由の200万キロワットの海底送電網が先行整備される。首都圏では火力発電所の休廃止や原発の長期停止による電力不足が続き、供給の余力を示す予備率は今夏も3・0%台と、かなり厳しくなる見通しだ。


東北上回る導入予定地

 こうした中、政府が再エネ拡大の切り札と位置づけるのが洋上風力だ。40年までに全国で3千万~4500万キロワットの導入を予定。風況の良い道内ではこのうち約3割の導入を想定し、先行する東北や九州を上回る。

 実際、道内では「石狩市沖」と「檜山沖」を中心とした日本海側で建設計画が相次ぐ。関西電力は石狩市沖で総出力178万5千キロワットの建設を検討。国内風力発電大手の日本風力開発(東京)は石狩市沖で総出力300万キロワットの発電所の建設を目指すなど、これまでに約15件の構想が浮上している。

 ただ、具体的な動きには至っていない。洋上風力発電事業者が一般海域で発電所を建設するには、政府が指定する促進区域で実施される公募に応札し、事業者に選定される必要があるが、道内で促進区域に選ばれた海域がないためだ。

 政府はこれまで、秋田県や長崎県などの8海域を促進区域に指定。道内は「石狩市沖」「岩宇・南後志地区沖」「島牧沖」「檜山沖」「松前沖」の5海域が、3段階で一番下の「準備区域」にとどまっている。送電網の確保が課題の一つとされ、経済産業省幹部は「海底送電線の整備は道内の促進地域指定に向けた後押しになる」と話す。

 京大大学院の安田陽特任教授(電力工学)は「海底送電線を通じて東京エリアとつながれば、発電コストの安い風力発電を増やすことができ電力市場価格も下がる。工場やデータセンターなど電力多消費産業の進出も期待できる」と話す。

 北海道電力ネットワークの送電網に接続している再エネの合計出力は昨年11月末時点で495万キロワット。この10年でおよそ2・4倍に増え、海底送電線と洋上風力でさらに加速するのは確実だ。

リスク避け日本出遅れ

 最大の課題はコストで、経産省の試算によると、洋上風力の発電コストは20年時点で1キロワット時当たり30円。液化天然ガス(LNG、10・7円)や原発(11・5円から)、太陽光(12・9円)など他の電源を大きく上回る。30年時点でも洋上風力は26・1円とコスト面では劣る。

 洋上風力は欧州で技術集積が大きく進む一方、日本は黎明(れいめい)期にある。日本エネルギー経済研究所の二宮康司研究主幹は「政府の長期目標がなく、企業がリスクを取れなかったことが出遅れの原因」と指摘。主導権を握る欧州では発電コストの低減が進んでおり「日本も部材の生産やオペレーション、メンテナンスの拠点を造ることで引き下げることは可能」とみる。

 海底送電線を含む送電網の建設費用は、広域機関が50年までに全国で最大7兆円かかると試算。送電網の使用料である託送料金や再エネの賦課金などとして電気料金に上乗せされることが見込まれるため、いかに国民負担を抑えながら実現できるかが課題となる。

 海底送電線や洋上風力が自然環境に影響をもたらす可能性も指摘されている。海洋環境問題の合意形成に詳しい北大北方生物圏フィールド科学センターの宮下和士教授は「事前に海洋調査を丁寧に行うなど、整備による漁業への影響の有無を判断できるようにすることが重要」と強調する。(土屋航、堀田昭一)

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