2024年08月31日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[洋上風力発電と漁業 海外の経験#92 丁抹 漁業者が海外開発事業者から補償渋りを受けトラブル]
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。
一方、新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。
現在(報告日2024年08月31日)、デンマーク漁業者協会(Danish Fishermen’s Association)が、洋上風力発電開発事業者であるスウェーデン電力大手“ヴァッテンフォール”(Vattenfall)社の補償渋りを受けトラブルになっていると地元紙(https://folkebladetlemvig.dk)が伝えている。
デンマーク関係漁業者と“ヴァッテンフォール”は、ユトランド半島西部沿岸沖合での漁業者の収入減に対する補償について交渉をおこなっていたが、既に法的手続きに入っており、双方に深い亀裂が生じている。
さらに“ヴァッテンフォール”は、デンマーク漁業協会に対して、関係漁業者の代理としての交渉権限があるという証明を要求、同協会はこの対応を「不必要な官僚的手続き」を要求する「挑発的行動」だと批判している。
このトラブルは、洋上風力発電が設置されている保護区域での漁業収入減に対する補償額をめぐる問題で、これまでも、デンマーク漁業者協会は、関係漁業者に代わって交渉してきた経緯がある。
デンマーク漁業者協会は、“ヴァッテンフォール”の狙いについて、関係漁業者間を分断し、補償交渉を有利に進めたいことにあると指摘、実際には関係漁業者からの委任状の取り付けにも問題がないことを明らかにしており、双方の関係は悪化の一途をたどっている。
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