■ 混乱するイランの大統領選挙はイラン攻撃の引き金になるか? 桜井晴彦氏
2009/06/16 http://plaza.rakuten.co.jp/31sakura/
イランの大統領選挙で現職のマフムード・アフマディネジャドが圧勝した。「改革派」のホセイン・ムサビ候補の支持者はこの結果を受け入れず、選挙に不正があったと主張して抗議活動を開始、数万人規模のデモが展開され、放火や破壊で混乱しているようだ。
アフマディネジャド大統領に敵意を持つ日米欧の勢力が監視する中で行われ、具体的な不正行為が指摘されていないところをみると、反対派の主張を鵜呑みにすることはできないのだが、選挙が「出来レース」だった可能性を伺わせる話は伝わっている。選挙前、ムサビの勝利を拒否すると発言していた人物がいる。
イランの国家元首は「最高指導者」であり、「大統領」ではない。その最高指導者、アリー・ホセイニー・ハメネイがムサビの敗北を予告したというのだ。
ただ、その一方で、ムサビに対して、勝利してもライバルを刺激する演説はしないようにと伝えられていたとも言われている。
こうした情報が正しいならば、ムサビ敗北はハメネイの「命令」でなく、「希望」だったのだろう。選挙後、ハメネイは選挙について調べると発言しているが、どちらに有利な結論に達しても、混乱は避けられないかもしれない。
イスラエルやアメリカの親イスラエル派にとっては好ましい展開だ。
本コラムでは前にも指摘したが、アメリカとイスラエルは2006年の春頃からイランでクルド人グループなど少数派と連携しながら秘密工作を続けてきた。レバノンからアフガニスタンに至地域で展開されている工作の一環で、テヘランで起こった「爆弾テロ」に関わっていた可能性も指摘されている。
2007年1月に「サンデー・タイムズ」紙は、イスラエル空軍の2飛行大隊が攻撃訓練を行っていて、レーザー誘導爆弾で目標に通じる「トンネル」を作り、「小型核爆弾」を撃ち込む計画だと報道している。イスラエル政府は否定しているものの、攻撃が実施されれば、中東全体がイラク化することを覚悟しなければならない。
また、つい最近、ヒラリー・クリントン国務長官はABCの番組で、イランが態度を変えないならば先制攻撃も辞さないという趣旨の発言をしている。イランの不安定化に成功すれば、アメリカ軍が侵攻するチャンスが生まれるはずだ。
ジョージ・W・ブッシュ政権時代、親イスラエル派はアメリカ軍の粛清を進めたが、それでもイラン攻撃に反対する声は小さくない。
ロバート・ゲーツ国防長官はイラン攻撃がイスラム世界に「聖戦世代」を作り出し、孫の世代にはアメリカが戦場になると発言したとも伝えられている。
こうした軍事的な緊張が続いているイランなのだが、内政の問題も深刻だ。高い失業率、燃料不足、インフレなどで国民の間で不満が膨らんでいることは確かで、不安定な状態になっていることは否定できない。
イランの不安定化はこうした戦争に反対する力を弱めることになるだろう。イスラエルや親イスラエル派にとっては、それで良いのかもしれないが、アメリカを祖国と感じている人々に取っては深刻な事態だ。
1951年にイランの首相に選ばれたモハメド・モサデグを倒した際にもデモは有効に使われた。デモでモサデグ政権を揺さぶり、1953年のクーデターにつなげたのだ。1958年には、イスラエル、トルコ、イランの情報機関が協力関係に入っている。
この関係はイランのイスラム革命で一角が崩れ、昨年のガザ侵攻でトルコとの関係も悪化して崩壊状態だ。
イランを破壊したいイスラエルも追い詰められている。
(終わり)
2009/06/16 http://plaza.rakuten.co.jp/31sakura/
イランの大統領選挙で現職のマフムード・アフマディネジャドが圧勝した。「改革派」のホセイン・ムサビ候補の支持者はこの結果を受け入れず、選挙に不正があったと主張して抗議活動を開始、数万人規模のデモが展開され、放火や破壊で混乱しているようだ。
アフマディネジャド大統領に敵意を持つ日米欧の勢力が監視する中で行われ、具体的な不正行為が指摘されていないところをみると、反対派の主張を鵜呑みにすることはできないのだが、選挙が「出来レース」だった可能性を伺わせる話は伝わっている。選挙前、ムサビの勝利を拒否すると発言していた人物がいる。
イランの国家元首は「最高指導者」であり、「大統領」ではない。その最高指導者、アリー・ホセイニー・ハメネイがムサビの敗北を予告したというのだ。
ただ、その一方で、ムサビに対して、勝利してもライバルを刺激する演説はしないようにと伝えられていたとも言われている。
こうした情報が正しいならば、ムサビ敗北はハメネイの「命令」でなく、「希望」だったのだろう。選挙後、ハメネイは選挙について調べると発言しているが、どちらに有利な結論に達しても、混乱は避けられないかもしれない。
イスラエルやアメリカの親イスラエル派にとっては好ましい展開だ。
本コラムでは前にも指摘したが、アメリカとイスラエルは2006年の春頃からイランでクルド人グループなど少数派と連携しながら秘密工作を続けてきた。レバノンからアフガニスタンに至地域で展開されている工作の一環で、テヘランで起こった「爆弾テロ」に関わっていた可能性も指摘されている。
2007年1月に「サンデー・タイムズ」紙は、イスラエル空軍の2飛行大隊が攻撃訓練を行っていて、レーザー誘導爆弾で目標に通じる「トンネル」を作り、「小型核爆弾」を撃ち込む計画だと報道している。イスラエル政府は否定しているものの、攻撃が実施されれば、中東全体がイラク化することを覚悟しなければならない。
また、つい最近、ヒラリー・クリントン国務長官はABCの番組で、イランが態度を変えないならば先制攻撃も辞さないという趣旨の発言をしている。イランの不安定化に成功すれば、アメリカ軍が侵攻するチャンスが生まれるはずだ。
ジョージ・W・ブッシュ政権時代、親イスラエル派はアメリカ軍の粛清を進めたが、それでもイラン攻撃に反対する声は小さくない。
ロバート・ゲーツ国防長官はイラン攻撃がイスラム世界に「聖戦世代」を作り出し、孫の世代にはアメリカが戦場になると発言したとも伝えられている。
こうした軍事的な緊張が続いているイランなのだが、内政の問題も深刻だ。高い失業率、燃料不足、インフレなどで国民の間で不満が膨らんでいることは確かで、不安定な状態になっていることは否定できない。
イランの不安定化はこうした戦争に反対する力を弱めることになるだろう。イスラエルや親イスラエル派にとっては、それで良いのかもしれないが、アメリカを祖国と感じている人々に取っては深刻な事態だ。
1951年にイランの首相に選ばれたモハメド・モサデグを倒した際にもデモは有効に使われた。デモでモサデグ政権を揺さぶり、1953年のクーデターにつなげたのだ。1958年には、イスラエル、トルコ、イランの情報機関が協力関係に入っている。
この関係はイランのイスラム革命で一角が崩れ、昨年のガザ侵攻でトルコとの関係も悪化して崩壊状態だ。
イランを破壊したいイスラエルも追い詰められている。
(終わり)