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≪注目意見≫中国とアメリカの人権状況  調査ジャーナリスト 桜井春彦氏

2008年08月27日 09時17分07秒 | 政治・社会
2008/08/26

北京オリンピックが終わった。日本のマスコミはオリンピックをカネ儲けの材料としてあつかう一方、中国攻撃にも熱心で、複雑な対応をしていた。

中国の人権状況が良くないことは言うまでもないが、中国よりもはるかにひどい人権侵害を組織的に行い、国内外の民主的プロセスを破壊している国がアメリカ、そのアメリカに追随している国が日本である。この事実について口を閉ざしている人間が中国を非難するのを聞くとき、人権や民主化ではない別の意図が働いていると思わざるをえない。

アフガニスタン侵攻以来、捕虜(アメリカ政府は「敵戦闘員」と呼んでいるが)に対する拷問は続き、CIA(中央情報局)は拉致事件も引き起こしている。アメリカ国内では監視システムが強化され、令状なしの盗聴が恒常化している。つまり憲法は停止状態にある。

ベトナム戦争の時もそうだが、アメリカは少数勢力を利用することが多い。中国の場合、地政学的にも重要な位置にあるチベットにアメリカが目をつけるのは当然だった。少なくとも1960年代にダライ・ラマたちがCIAから年間170万ドルを受け取り、メンバーがアメリカのコロラド州で軍事訓練を受けていることが明らかになっている。この当時、訓練を受けたチベット人が現在、指導的な役割を果たしていることは想像に難くない。

戦後世界で最も人権を抑圧し、民主化を阻んできた国は間違いなくアメリカである。おそらく、最も大きな被害を受けてきた地域がラテン・アメリカ諸国。弾圧の象徴的な存在がSOA(アメリカ大陸訓練所)であり、ここは「死の部隊」を生み出してきた。

この訓練所では反乱鎮圧技術だけでなく、狙撃の訓練、非正規戦や心理戦、情報活動、拷問テクニックなど教えていた。2001年にWHINSEC(治安協力西半球訓練所)へ名称変更しているが、訓練内容に変化はないと言われている。戦後、アメリカが行ってきた

「テロ活動」の詳しい内容は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を見てもらうとして、ここでは最近の出来事を振り返ってみる。

最近、グルジア軍が南オセチアを奇襲攻撃してロシア軍と軍事衝突したが、この問題を考えるときにコソボ紛争を忘れてはならない。

ソ連が軍事侵攻していた時代からアフガニスタンの武装勢力は麻薬(主にヘロイン)取引で資金を調達していたが、その麻薬の多くはコソボ経由でヨーロッパに流れていた。このシステムを作り上げるうえでアメリカの軍や情報機関が重要な役割を果たしたことは言うまでもない。アメリカの情報機関は資金調達の手段としてベトナム戦争の時にヘロイン、中米での秘密工作ではコカインの取り引きを利用していたと報告されているが、アフガニスタンではヘロインだったわけだ。

こうした潤沢な資金を利用してアルバニア系のKLA(コソボ解放軍)はセルビアに対する武力闘争を開始するのだが、「西側」のメディアはセルビア人による残虐行為を大々的に宣伝する一方、KLAの行為には寛容だった。

「残虐なセルビア人」というイメージを広めるため、偽情報が流されたことも明らかになっている。その片棒を担いだ集団のひとつが人権擁護団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」だ。

こうしたプロパガンダで世論操作に成功した西側の一部勢力は1999年3月にNATOを使ってセルビアに対する空爆を実施、セルビア軍を排除することに成功するが、その後もコソボではセルビア人に対する迫害は続く。2008年2月にコソボは独立を宣言、アメリカをはじめイギリス、フランスは直ぐに承認、ドイツや日本も続いた。これらの国々は南オセチアの独立を認めなければ筋が通らない。

グルジア/南オセチアのケースで日本のマスコミは、グルジアの被害状況を大々的に報道する一方で南グルジアの状況にはあまり関心を示していないが、イスラエルとグルジアとの親密な関係も無視している。

この件についても本コラムですでに触れているが、今回の軍事衝突ではアメリカの関与以上にイスラエルの役割に注目する必要がある。グルジア/南オセチアの軍事衝突の背景にロシアとイスラエルとの対立がある可能性は高い。この問題に関しては、拙著『アメリカ帝国はイランで墓穴を掘る』で触れている。

はるか昔に「言論の自由」を放棄し、自主規制が骨の髄まで染みこんでいる日本のマスコミが日本やアメリカの権力者を刺激しすぎる話を避けるのは当然かもしれない。例えばイスラエルとグルジアとの関係などは、「保守系」あるいは「右寄り」とされる媒体だけでなく、日頃「アカ」とか「左寄り」と罵倒されている媒体や某機関紙も避けている。これが日本の現状だ。



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