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≪注目記事≫ ■ 新政権、憲法どこへ 小沢幹事長「法の番人」封じ

2009年11月03日 15時35分13秒 | 政治・社会
■ 新政権、憲法どこへ 小沢幹事長「法の番人」封じ

2009年11月3日 朝日新聞

http://www.asahi.com/politics/update/1103/TKY200911020402.html

日本国憲法が1946年に公布されてから、3日で63年。改憲問題をめぐる民主党の対応に注目が集まるなか、小沢一郎幹事長が唱える「官僚答弁の禁止」が論議に悪影響を及ぼしかねないと心配する人たちがいる。ただ、目の前の課題や党内事情もあって、新政権にとって改憲は「後回し」の状態だ。

 「これは官僚批判の名を借りて、憲法の解釈を変えてしまおうという思惑では」

 神戸学院大法科大学院の上脇博之教授(憲法学)は、ニュースで見かけた民主党の動きを気にかけている。

 発端は先月7日の小沢一郎幹事長の記者会見。「法制局長官も官僚でしょ。官僚は(答弁に)入らない」と語り、国会法を改正して内閣法制局長官の国会答弁を封じる意向を示した。

 内閣法制局は「法の番人」とも呼ばれる。法理を駆使して、ときの政府の意向をかなえる知恵袋の役を果たす一方で、例えば海外での武力行使をめぐって「憲法9条の下ではできない」との見解を守り続け、憲法解釈に一定の歯止めをかけてきた。

 一方、小沢氏はかねて「国連決議があれば海外での武力行使も可能」と主張し、何度も法制局とぶつかってきた。新進党首だった97年には、日米ガイドラインの憲法解釈をめぐって橋本首相に代わって答弁した法制局長官を「僭越(せんえつ)だ」と国会で批判。03年には自由党首として「内閣法制局廃止法案」を提出した。

 こうした過去の言動を見れば、憲法解釈も政治家が行うというのが、小沢氏の隠れた真意だと上脇教授は見る。

 「もしそうなれば……」。ある元法制局幹部の頭によぎるのは、05年まで衆参両院で開かれていた憲法調査会の議論だ。「きめの粗い感情的な憲法論に終始し、国政が混乱する」と元幹部は懸念する。


 法制局なしでやってみたらお分かりになると突き放したいところですが、憲法上できないことを『できる』と政治家が言い張って、被害を受けるのは国民。その被害が、二度と回復できないものだったら、どうしますか」

 04年までの2年間、長官をつとめた秋山収さん(68)は、小沢氏の狙いを「9条の解釈が気にくわないという、その一点でしょう」と言い切る。

 内閣が変わるたびに、法制局は、長年積み重ねた国会答弁をもとに「戦争放棄」の9条や「政教分離」の20条など憲法の課題を新首相にレクチャーする。議員が提出する質問主意書の政府答弁にもすべて目を通す。

 秋山さんは、そうした後ろ支えがなければ、政治家の「脱線答弁」が頻発し、それが定着してしまうという。国の基本的なあり方は、憲法改正という民意を問う手続きを経るべきだと秋山さんは考える。「その時々の多数政党の力で9条の解釈が揺れ動くのは憂慮すべき事態だ」

     ◇

 もっとも今、新政権内で改憲や憲法解釈が喫緊の課題として語られることはない。

 「現行憲法に足らざる点があれば補い、改めるべき点があれば改めることを国民に責任を持って提案していく」。民主党はマニフェストで、憲法の見直しの可能性に言及している。にもかかわらず、政権発足で盛り上がっているのは「護憲派」の市民団体だ。

 今月1日、長野市で始まった「第46回護憲大会」。全国から約2800人が参加した。労組や市民団体でつくる「平和フォーラム」代表の江橋崇・法政大教授が「鳩山内閣になり、政治に憲法の理念を実現する可能性が開けてきた。平和、人権を守る新しい出発にしたい」と訴えると、大きな拍手がわいた。

 護憲派が期待を寄せる背景には、連立に社民党が加わっていることへの「安心感」もある。大会に参加した福島瑞穂・社民党党首は「社民党が連立政権の中にある限り、国会の憲法審査会は動かしません」と明言した。実際、衆院では憲法審査会の委員数などを定める規程が政権交代前に可決されたが、会長や委員は選任されないままだ。

 議論が進まないのは「当面の政策が大事で憲法までは考えられない」「予算編成でマニフェストをどう実現するかで精いっぱい」といった民主党内の実情がある。

 議員同士の意識の隔たりも原因のひとつ。衆院選の際の朝日新聞と東大のアンケートでは、民主党議員は憲法改正の賛成派が46%、反対派が22%、どちらとも言えないが31%と割れた。新人議員でも「国際貢献をするなら、より憲法で丁寧に書いた方がいい」(岡田康裕氏)、「戦後の日本を守ってきた9条を堅持する」(京野公子氏)と幅広い。

 大江健三郎さんや井上ひさしさんらが参加する護憲派の市民団体「九条の会」事務局員の渡辺治・一橋大教授は「民主党は、自民党よりもはるかに私たちの声を聞く耳があるが、憲法問題でまだ迷っている」とみる。今後、「米国の圧力で自衛隊の海外派遣を認めるなど、解釈改憲になる恐れもある」と分析し、新人議員を中心に9条の大切さを訴えていくという。(河野正樹、谷津憲郎、野村雅俊)

     ◇

 内閣法制局 1885年に発足した。政府が国会に提出する法案や政令案について矛盾がないかを審査すること(審査事務)と、憲法の統一見解を出したり法律に関し意見を述べたりすること(意見事務)が仕事。各省庁の出身者による「寄り合い所帯」だ

(終わり)

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