(1)自民党総裁選と立憲民主党代表選を観ながら
8月の声を聞く頃から、自民党総裁選に誰が出るとかでないとかの自称他称の声が聞こえてきた。私は裏金自民党の末路を見たかったが、どうも安泰のママに推移しそうだ。それは野党第一党の立憲民主党がぬるい代表戦をやっているからだ。
9月7日告示で、元総理の野田佳彦(67)、元代表の枝野幸男(60)、現代表の泉健太(50)そして締め切りギリギリに届をだした1回生議院吉田晴美(52)の4氏だ。前3者は、消費税増税に賛成した野田、消費税減税合意は間違っていたと公言している枝野、現職泉だ。最後に出た吉田は新鮮かというと、ジェンダー平等候補としてなら意義があろうが、どうもぱっとしない。旗幟鮮明に他の候補との違いを明示できていないのだ。
今の立憲民主党は、何処を向いている政党なのだろうか? 各候補共に消費税廃止を主張していない。「税率変えず、給付付税額控除」(野田・枝野)、「食料品の税率引き下げを検討」(泉)というだけだ。吉田は「時限的に5%、食料品は非課税」がせいぜいだ。この30年、日本経済が衰退してきた中で、物価高は続いている。格差が拡大している中で、一律10%の消費税。
(2)野党協力の違い
今回の立憲民主党代表選の特徴は、野党協力にも明瞭に表れている。政権交代を果たそうと思えば、ここがポイントになるはずだ。誰(どこ)と組むのか? 野田・枝野・泉は国民民主と組むと言い、共産党とは一線を画している。吉田は「連立政権を組むなら、選挙前に何処と連携するか明確にする」と言うのが精一杯だ。
これでは「政権交代」と言いながら、改憲派の保守と近づきますということだ。裏金自民党は誰と裏金で連んできたのか。財界・大企業・軍事産業だろう。国民民主党は「連合」をバックにした財界の意向を汲んでいる。これでは「立憲民主党」の看板を外した方が良いだろう。「立憲民主党」を強弁する二枚舌政党を地で行きますか?!
(3)原発政策はどうか?
吉田は、「原発のない社会を目指すのが党是」だと明確に反対している。再稼働にも反対。後の3人は全て容認派。言葉だけ「原発に依存しない」などと言うのみでは、全く信用に値しない。原発を推進してきた自民党を後押しするような政党に未来はない。
放射線は目に見えない。体内被曝すれば、静かに放射能を浴びてしまう。ここまでならば「安全」という閾値がないのだ。私たち人間も生きものだ(日々刻々細胞分裂を繰り返している)。ロボットではない。この問題を外した原発政策・環境政策は有害でしかない。
(4)野党として戦争(安全保障)政策に、どう対応するのか?
4候補共に、ここに全く触れていない。安倍政権以降、集団的自衛権を閣議決定で合憲化して、その手法が定着してしまった。2014年から10年で、こうなってしまったが、こうなった下手人は、どうやら政権党の自民公明両党のみならず、立憲民主党の本音もそうだったからだろう。戦争も飯の種にしていくのだろうか?!
彼らの生活圏に軍事はないと思っているのだろうか? 見て見ぬふりをしてるだけだろう。ロシア・ウクライナ戦争もイスラエル・パレスチナ戦争(ガザジェノサイド)も外している。中東で何故戦火が絶えないのか? それは石油資源の確保にある。その石油資源が私たちの生活を支えている。
こうして「平時」を過ごしている日本人は、日本を取り巻く緊張が高まっていると言われ、「抑止力の強化」に無意識に傾いている。「武力こそが正義」の米国とこの79年間連んできたこの国は、2022年の安保3文書の確認で、「専守防衛」を御蔵に入れ、公然と攻守同盟に転換した。日本国憲法の平和主義を潰したのだ。
市民と野党の共闘論も、実は形骸化した平和主義に気づく努力が足りなかったのだろう。立憲民主党の名称と実態の矛盾に自覚的でなかったのだろう。戦争(安保)政策に一言も触れない代表選の現状を私たちは嘆くばかりではいられない。
気にならない方々は、戦争をイエスと考えているか、無視しているかのどちらかだろう。平時の中に戦時が着々と組み込まれてきたこの20年に、私は愕然としている。
(5)沖縄の立憲民主党はどう考えているのだろうか?
2024年9月8日の沖縄タイムスは、こう報じている。屋良朝博衆議院議員は、どの候補者も推薦しなかったとある。当然だろう。上記の通りだから、推薦できるはずがない。
そして同日、立憲民主党沖縄県連(仲村未央代表)は、代表候補者4氏に「要望書」を提出したようだ。日米地位協定の改定、名護市辺野古の新基地建設の中止、南西諸島の防衛力整備で地域住民と充分に対話することなど6項目だという。県連は各候補者の回答を公表するそうだ(9月9日沖縄タイムス)。
ある意味当然すぎる要望書だろう。片思いでは政治はなりたたないからだ。しかし島々への軍事力強化について明確に反対せず、「充分な対話」でお茶を濁している。対話しないよりした方が良いだろうが、何故明瞭に反対しないのだろうか? ここが肝心要の問題だ。島々に沖縄島も含まれていることは言うまでもないことだ(以下は、別稿の沖縄4区を巡る問題で改めて記したい)。
(6)まとめ
結論は見えている気もするが、私たち琉球諸島・沖縄島の政治と無関係のママ進んで欲しくない。この誠に不十分な要望書ではあるが、各候補者は、立憲民主党の政治としてかみ砕き、新たに魂に取込んでいただきたい。対話と反対の違いぐらい踏まえながら。
このままでは「政権交替」は後退していくばかりだ。埒外に居る私は、新たな政権交代を見据えた取り組みを考えたい。これは在沖日本人の責務かも知れない。(2024年9月10日)