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始末書と懲戒処分

2013年07月29日 | 労務
おはようございます、社会保険労務士の山田透です。
始末書について考えてみます。始末書とは、事故を起こした場合に、事実の経緯・顛末(てんまつ)を上司又は官に具申する文書。(広辞苑より)
職場では労務管理上、始末書を提出させることで本人の反省を促し、不祥事などの再発を予防し、職場の秩序を回復させることを目的として、始末書の提出を求めることがあります。

始末書の提出は強制できるのか?
始末書は事実経過の部分と、謝罪・反省の部分に分けられます。
会社は事実経過の部分を書かせるのは問題ないのですが、本人の自由意思によらずに謝罪や反省の文を書けと強制することはできません。憲法第19条が保証する思想及び良心の自由に反すると解されるからです。始末書の不提出を処罰することは、事実上謝罪や反省を強制することになりかねず、多くの裁判例では、始末書を提出しないことを理由に懲戒処分を行うことは許されないと判示しています。
その意味でいうと、始末書の提出命令に従わない従業員に対して懲戒処分を科すことにも問題があるといえます。

顛末書と始末書の違いについて
①業務命令としての顛末書
業務命令としての顛末書は、事の顛末を報告させ、職場における問題発生の原因等を究明し、職場の秩序回復や問題の再発防止に役立てようとするものです。事実経過を報告するものですから、顛末書の提出を命ずることは問題はありません。事故等を起こした当該従業員が知り得た事実関係を客観的に会社に報告することを求めるものですから、正当な理由もなく従業員がその提出を拒んだ場合、それを理由とした懲戒処分が可能であると解されます。

②懲戒処分としての始末書
会社が、始末書の提出を命令するためには、就業規則等に「始末書を提出させ、将来を戒める」等の懲戒の内容が記載されていることや就業規則等が周知されていることが必要になります。一般的に、戒告では始末書を提出させず、譴責(けんせき)以上で始末書を提出させます。
従業員が始末書の提出を拒否した場合に、業務命令違反としてさらに懲戒処分ができるかどうかについては判例も学説も肯定説と否定説に分かれています。(多くは否定説です。)
トラブルを起こした従業員が後日同様のトラブルを起こした場合、前回の懲戒処分の際に始末書を提出しなかった点を反省の情が見られないと評価して、次の懲戒処分の量刑に反映させるという程度であれば肯定されると解されています。
始末書と顛末書の違いを認識し、特に顛末書に反省文や謝罪文を加えさせてしまうと、懲戒処分としての始末書と同様の扱いとなるため、慎重に検討してから運用したいものです。

著作権:山田 透


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