アンダンテ ~私の歩幅で~

季節のこと、音楽のこと、誕生日シリーズなど

辻井伸行さん in ドイツ

2009年07月14日 | 音楽
7月2日の「クローズアップ現代」で放送されました

  心癒やす “至福”の旋律
  ~ピアニスト・辻井伸行~

興味があったのに見損ねてしまった方は、
内容が、とっても気になりますよね?

ということで、私なりに、まとめてみたのですが、
かなりの長さになってしまいました。

最後のスタジオでのトーク部分は、
また改めて、別記事で公開しますね。


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♪ オープニング
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 まるで森の中かと思いたくなるような
 そんな映像と照明の効果の中。

 辻井さんが奏でる
   ショパン エチュード 作品10-4
 冒頭部分。

 演奏は、途中でフェイドアウトされて・・・


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♪ 審査員は語る
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 ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール。
 今回の審査員の1人に、ご自宅でのインタビュー。

 実際にコンクールで使った審査員の公式ノートを
 見せてもらいました。

 ノートは、1人の演奏者につき1ページを使って、
 批評を書き込んで、点数をつけるのがルール。

 しかし、この審査員のノートを見ると、
 辻井さんのページに書いてあったのは、
 曲目と作曲家名のみです。

 コンクールのときのことを、審査員は語ります。

 「彼の演奏が始まると、
  私は思わずノートを閉じてしまいました。

  手をひざにのせ、すっかり聴き入ってしまったのです」


 さらに、審査員は続けます。

 「最近、テクニックに頼る演奏家が多い中、
  辻井さんには新鮮さを感じました」

 「若いピアニストは、極端に音を大きくしたり、
  速く弾こうとする傾向があります。

  でも彼は、まったく、そんなことはしなかった」

 「左手で安定した音を出しながら、
  右手では歌うような演奏ができる、
  世界でも数少ないピアニストの1人です」


 辻井さんの飾り気のない素直な演奏は、
 審査員全員の胸に、深く響いたのでした。


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♪ 恩師は語る
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 ピアニストの川上昌裕氏は、
 辻井さんが6歳の頃から12年間、指導してきました。

 川上氏は、辻井さんのために、
 左手と右手、それぞれを、カセットテープに録音しました。

    そのようにして録音した曲の数は、
    100を超えています。

 辻井さんは、そのテープを聴いて、
 左手で弾く音と、右手で弾く音を、別々に覚えました。

 左手と右手、それぞれが奏でる音の重要性を理解してきたこと。
 それが、現在の心地よい表現につながっているのでしょう。


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♪ ピアニストの視点から
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 作曲家でありピアニストの加古隆氏は、
 辻井さんの腕や体の動かし方に注目しています。

 「鍵盤をたたいた後、絶妙のタイミングで力を抜いて、
  弱い音を美しく響かせている」

 「演奏している姿を見ても、とっても体が流れているし、
  力でかたまったり、どんな場合でも、かたくなって
  ピアノをたたきつけるような、そういうことはない」

 「美しい音、美しい響きというのは、
  それだけで、人の心をふるわせることができると思う」


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♪ ドイツのドルトムントにて
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 国際コンクールで優勝してから、3週間。

 クラシック音楽の本場、ヨーロッパのドイツ。
 さっそく世界への第一歩を踏み出します。

 辻井さんは、繰り返し語ります。

 「優勝はスタートライン。
  腕を磨いて、器の大きな立派なピアニストになりたい」


 ドイツでは、ほとんど名前を知られていない辻井さん。
 そんな辻井さんに用意されたコンサート会場は、
 オフィスビルの一角にある多目的ホール。

 リハーサルに臨む辻井さんは、
 いつもと違う雰囲気と、会場の小ささを、
 すぐに感じ取りました。

 また、実際にピアノを弾いてみると、
 音が響かないなど、なかなか調子がつかめない様子。


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♪ 音楽祭、当日
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 辻井さんのチケットは、24ユーロ(約3千円)で、
 この音楽祭に招かれた音楽家の中では、
 もっとも安い価格でした。

 コンサート当日。
 会場に来た人たちにインタビューしてみると・・・

  「急に来られなくなった友だちから、
   チケットをもらったのよ。
   大して期待していないわ」

  「満足できる演奏じゃなかっったら、
   (途中で)帰るつもりよ」

 と、厳しいコメントばかり。


 評価の厳しいドイツの観客を満足させることができるのか?
 辻井さんのプロとしての今後を左右する正念場です。

 独特の緊張感を覚えつつも、辻井さんは決心して、
 「行ってきます」と言って、ステージへ出て行きました。


 辻井さんは、おじぎをして、ピアノの前に座りましたが、
 何回も座り直したり、鍵盤をハンカチで拭くなどして、
 なかなか弾き始めることができません。

    空気がシンとしていて、
    厳しい目で見られているなと感じたので、
    失敗は許されないと思った。

 そして、いよいよ鍵盤に指が乗り、演奏が始まりました。
 最初の曲は、辻井さんがもっとも得意とする
   ショパン エチュード 作品10
 です。

 演奏が進むにつれて、観客の表情が変わり始めました。
 (きっと、それは空気となって、辻井さんにも伝わったのでしょう)

 音楽に合わせて、頭を動かしたり。
 思わず感嘆の声をあげそうになったり。

 アンコール曲を含めて、
 用意していた曲をすべて弾き終わった辻井さん。

 会場は、大きな大きな拍手に包まれて。
 その拍手は鳴りやみません。

 ステージを後にした辻井さんは、
 鳴りやまない拍手に、思わず立ち止まりました。
 そして、自ら、再びステージへ。

    とにかく感動してくれてるんだってことが分かって、
    うれしかったです。

    (さらなるアンコール曲の)
    用意は特にしていなかったので、
    (ピアノの前に)行ったはいいけど、何を弾こうかなと、
    ピアノに向かってすぐに考えました。

 そして、辻井さんが弾き始めたのは、
   リスト ハンガリー狂詩曲 第2番
 でした。

 優勝したヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールでは、
 一番観客を盛り上げた曲。

 最後は、スタンディング・オベーション。
 観客の心をつかんだ手応えを、辻井さんは得たことでしょう。


 2時間に及ぶコンサート。
 辻井さんは、もてる力を、すべて出し切りました。


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♪ エンディング
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 スタジオで、辻井さんの演奏。

 まるで満天の星空の下で弾いているかのような。

 曲目は、ショパンの子守歌。



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♪ 2009 年 7 月 21 日 公開記事
  「器の大きなピアニスト」とは?


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