3月に娘がアメリカでホームステイをしていた。
先日そこの家のアメリカ人の女の子がこちらにやって来て、我が家は現在5人である。
4週間のドイツ滞在だけど、あちらはもうすでに3ヶ月もあるという夏休みに突入していて、最後の1週間はほかの米国人たちとドイツツアーに出かけると言う。
だからうちに滞在するのは3週間。
そして今、ラストスパート。
なんと言いますか、うちの米国人彼女は超おとなしくて控えめで、時々イラついてしまう。
日本人が控えめすぎて時々困る、というのはよく聞かされる話であるが、
うちのアメリカ人は日本人よりのそれに輪をかけて控えめ。
愛想が悪いという訳ではなく、めったにしゃべらないし、
しゃべっても蚊の鳴くような声なので、集中して聞かないと『えっ、なんて言ったの?』となってしまう。
自分から何かを言ってくれないので、いつも私たちが質問を投げかける、それに彼女がごく手短に答えておしまい、というパターンだ。
何かやりたいこととか、食べたいものとか、これはいやだとかなんとか、リクエストをどんどん言ってくれればいいのだけど、それもない。
例えば食べるもので『今日のご飯はハンバーグですよ』とか言うと、
That's great! とか Perfect! と言って控えめなゼスチャーで喜んでいる様子なのに、食事の時間になるとスズメの涙ほどしか食べなくて半分くらいは必ずお皿に残ったまま、という状態が続いていた。
『お口に合わないのかしら、おいしくなかったのかしら?』などと心配していたのだけど、
娘が言うには彼女はアメリカの実家でもいつも全部食べることはなかったとのことで、
なるほど、彼女の習慣なわけだということがわった。
でも、毎回かなりの量の食べ物がお皿に残されているのを見ると切なくなってきてしまうので、
さすがに私も4日目くらいになった時、やんわりと言ってみた(つもり)、『食べられるだけ自分のお皿にとってくださいね。できるだけ残飯が出ないようにしてもらえるとうれしいわ! どうしても食べられないのならしょうがないんだけどね、できるだけでいいから』と。
本当は、『あのね、アフリカや北朝鮮の子供たちとかね、食べ物がなくてかわいそうな子供たちは世界にいっぱいいるのよ、その子たちのことを考えてみたことがある?』と聞いてみたかったのだけど、まあここはガマンガマン。
彼女はその翌日からはかなり努力をしているようで、一応は残飯は出なくなったが食べ終わった後の彼女のお皿はけっこう汚いままである。
ま、食事の習慣はその家族で違うのかなと思うが、食事の後の食器が見苦しいというのはやっぱり、親のしつけの問題ではないかと思う。
というわけで、テーブルマナーの話である。
アメリカ人が食事をする時はナイフとフォークで食事を細かく切ったあと、ナイフはもう用なしとなり、フォークを右手に持って食べる。
ステーキとかの、ナイフがなければ小さくできないという食事でなければ、もしかしたらフォークは出番なしである。
そのとき左手はというと、テーブルにひじをついているか、テーブルの下でてぶら状態である、
という噂は聞いていたが、彼女の食べ方はまったくそのうわさ通りである。
しかも、フォークで食べ物を口に持って行ってモグモグするのを始めると、次に口に持って行く分をフォークにさして、お皿にそのフォークをおいているのである。 (この説明がわかりますか?)
つまり、モグモグしているあいだは、両手がフリーの状態になっているんである。
しかも! この両手がフリーとなっているあいだ、携帯をいじっているんである!
我が家はしつけが厳しい、というわけでは決してない。
でもうちの子がもしこんなことをしていたら、即!携帯はとりあげられる。
そもそも食事中に携帯を手に取る、または携帯がテーブルにあるなんていうことすら、我が家ではよっぽどのことがない限りタブーである。
ま、携帯電話云々は彼女の親のしつけの問題であるので、私はこのさいどうでもよい。
だから私はその件については何も言わない。
が、見ていてやっぱり少しだけ不快感があるのは否めない。
それにしても、フォークを右手に持って食べる、というところは日本人でもよく見られる光景である。
左手がテーブルの下、もしかしたら膝の上にあって、猫背になってハンバーグやスパゲティーをすすっている日本人はファミレスあたりでよく見かけるが、これと全く同じである。
はっきり言ってみにくい光景であることは事実だ。
ドイツでも食事マナーのよろしくない人はいる。
でもこう言う食べ方をしている人には、ドイツではまだお目にかかったことがない。
『私たちが子供だった頃の食事のマナーのしつけはとってもキビシかったのよ!』
と義母はときどき孫たちが小さかった頃におもしろおかしく話していた。
お腹とテーブルの間に手のこぶしくらいの距離があって、両手は必ずテーブルの上。
そのナイフとフォークを持つ手の手首はいつもテーブルの端からこぶしひとつ分の距離をおくこと!
義母は『でも時代が違うから、今ではそんなに厳しく教育する親もいないかもね』といいながら。
5人で食事をしていて、自分だけが食べ方が違う、ということに彼女は気づいていないのだろうか?
それとも、気づいていてもどうでもいいのだろうか?
という疑問は残る。
そしてこれはもう少し大人になればかわるのだろうか?
どうなんでしょう?
ま、アメリカ人がどうであれ日本人がどうであれ、テーブルマナーがいいのにこしたことはないですがねぇ。