ドイツと私

ドイツ生活3回目、ドイツ初上陸は30年前。
今まで知らなかったことや考えても見なかったこと、再発見することはまだまだ!

見てしまったネコババ現場(たぶん)

2015-06-25 | 日記

電車に乗ると人間ウオッチングができておもしろい、なんて思っていたんだけど、

今日目撃したのはなんというか、その、あまり見たくないものであった。
 
というのも、
シュツットガルトの中心街へ行くのに乗る電車S4。
私が乗り込んだ一番前の車両のちょうど私が座ろうと思っていた4人がけの席に中年の女の人がすでに一人で座っていた。
しゃきっとしたかんじの私よりもちょっと年上くらいの彼女は青と白のピンストライプのシャツと紺のブレザー。
大きめのバッグが横においてあって、エルメス調のシルクのスカーフがちらりとのぞいている。
目をつぶっているので、そうとうお疲れのようである。
ドイツの電車ではあまり見ない光景である。
 
そんなわけで私はその場所はあきらめて斜めむかいの席に座った.
女性は進行方向を向いていて、私はその斜め前方の進行方向右側の壁側の席で、
その女性の席がちょうどよく見える位置だった。
 
4駅行ったところのLBで、彼女は自分が降りる駅についたことにやっと気がついたのか、少々慌て気味にスカーフをバッグから取り出して首に巻き、その後早足で電車を出て行った.
それと入れ替わりに、こんどは60歳代くらいの女性が空いた席をねらったように乗り込んできた.
その年配の女性が座ろうとした瞬間、座席と座席の間にかなりの厚みのある四角い黒い物があることに気がついた。
財布が落ちていたのだった。
 
どう考えてみてもあのブレザーの女性のもの。
 
次の瞬間そのばあさんがそれを手に取るのを見て、
さっきの女性は今おりていったばかりだから、電車の入り口あたりから『忘れ物ですよ~!』とでも言うのだろうとおもいきや、なんと、
自分の持っていたハンドバッグじゃなく(ハンドバッグはファスナーを開けないといけないタイプだったからか?)、もうひとつ持っていたパンパンに詰まった買い物袋に急いで押し込んだんである!
 
ちょ、ちょっと待ってよばあさん! その財布は絶対にアンタのじゃあない。
 
私はつまりこのばあさんがネコババする現場を目撃しちゃったわけである。
 
そういうことするんだ~、このばあさん!
 
一見そんなことをしそうなばあさんじゃないと思ったのに、である。
でもそのネコババ現場を目撃しちゃったら、急にずるがしこいばあさんに見えてくる。
 
 
人間ウオッチングとはいえ、こういうのは見たくなかったな。
 
そのばあさんは、あたりを見回すなんてことはいっさいしなかった。
ばあさんの視線は拾った財布から買い物袋、そしてそのあとは何ごともなかったかのように、別の袋から出した雑誌に移動してそのまま、動く気配はない。
 
斜め向かいのよく見える席からその一部始終を私が見ていたわけだから、ふつうなら『誰かが見ている』ことはわかったはずである。
しかも、そんな犯罪(ネコババは犯罪です)を犯そうとしている訳だから他人の視線が気になって当然のこと。
なのにそのばあさんは慌てる様子もなく、ごくごくフツーにしている。
いや、周りにいっさい目を向けようとしないのは、必死でフツーにしているしていたからなのかもしれない。
または、よっぽど度胸がいいばあさんなのか?
 
さて、その一部始終を見ていた私。
どうしよう?
 
すぐに立ち上がって、そのばあさんに
『今あなたのやったことは犯罪です! でも今すぐに出してその人に連絡してあげてください! そうすれば犯罪ではなくなります.それだけでなく、きっとその人は喜んであなたはとてもいい気分になることでしょう。さあ!今すぐにそのお財布を出しなさい!さあ!』
 
な~んて言っている私を想像してみたのだけれど、できるわけない。
 
それに、もし言ったとしてもばあさんは
『これは私が落とした財布なのだ!』としらを切ったに違いない。
『あんたにそんなことを言われる筋合いはない』なんて言っちゃってたかもしれない。
逆に名誉毀損だなんて騒がれちゃうかもしれないもんね。
 
さりげなくそのばあさんの横に座って、耳元でささやいてみようか?
『私はずっと見てましたよ~ん』
それでもってニヤッと意味深に微笑んでみるんである。
なんちゃって、そんな役者じみたことは私にはとうていできない。
 
それなら、ばあさん本人じゃなく、第3者に言ってみるのはどうか?
たとえば私の真向かいに座っている中年男性。
またはそのばあさんの真向かいに座っている若い女性。
 
『私ね、見てたんです、あのばあさんがお財布をネコババするところを!一緒に解決してくれませんか?』なんて。
 
だいたい、どうして私以外に誰も見ていなかったんだろうか?
いや、見ていたんだけど、私と同じで何も言えなかったか、それとも『めんどくさいことに関わりたくない』から無視しているだけなのか。
 
本当に私だけが見ていたのだとして、それで誰かに助けを求めたとしても、きっとだれも相手にしてはくれないのが現実だろうと思う。
 
警察に行ってみる?
いや警察だってきっと『そんなヒマはありませんから』と取り合ってくれないだろうな。
 
 
とかなんとか考えているうちに電車は中央駅に到着。
多くの人がここで電車を降りるのに、ばあさんは降りようとしない。
その次の駅でもかなりの人が降りたが、ばあさんはここでも降りようとしない。
そして私の目的地に到着。
6時にVHSの予定なのに時計はもう5時57分をさしている。急がなきゃ!
私が電車を降りると、そのばあさんも降りた。
私は急がなきゃいけなかったので早足で歩きながら、でもやっぱり気になってそのばあさんがどちらの方向に行くのか見届けるべく(何の目的もないんだけど)時々後ろを振り返る。
ばあさんがホームに降りたまま立ち尽くしているのが最後に見えた。
 
いったいどこに行くつもりだったのだろう?
お財布を見つけたから予定変更したんだろうか?
ホームから動かないということは通常なら電車を乗り換えるためのはず。 でもばあさんと私が降りた駅は乗り換えの駅ではない。
じゃあなんで?
 
と、そこでまた別のことに気がついた。
もし電車の中でお財布を見つけて、ネコババしないで届ける場合、やっぱりそのお財布と一緒に電車を降りなければならない、ということになる。
だって電車には運転手が一人しか乗っていない訳だし。
ってことは、あのばあさんはもしかしたらその足で『落とし物預かり所』まで行ったかもしれないわけだ。
 
でも...
 
それからばあさんがどうしたのかは想像するしかない。
 
DBの『落とし物預かり所』に行ってくれている、と願うしかない。
 
 
 
まったくそれにしても、お財布を落としたのが私じゃなくて、よかった。
気をつけなくちゃ!
 
 


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