明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

私の選んだ今年の10大ニュース2018 一般編(2位)

2018-12-13 19:00:00 | ニュース
2)トランプが世界を変える?
経済の好調に後押しされて、中間選挙上院過半数を確保したトランプ。下院の民主党逆転勝利も、民主党の中の非主流派であるサンダース社会主義路線寄りの候補が大量当選して結果的に躍進したわけで、トランプに対抗しうる候補者は「素人のオバマ元大統領夫人」ぐらいしかいない、という評価が出ている。結局、中間選挙は上院が共和党、下院が民主党というネジレ議会で終わったが、これは織り込み済みの話。ようやくトランプも一安心して自分の政策に集中できるし、民主党はお先真っ暗の惨状だ。これでトランプは、2期8年大統領を務めることがほぼ確実であると言われている。トランプバンザイである。2018年が一区切りついたところで、今年一年のトランプを振り返って見よう。

1月、パレスチナやパキスタンそれに国連などの世界への支援金を凍結・大幅削減すると発表。アメリカは世界の問題解決よりも国内に集中するってこと?。不法移民の取締を強化する。

3月、ティラーソン国務長官を解任、ポンペオを長官にする。鉄鋼・アルミニウムに関税を掛ける。マクマスター国家安全保障担当をボルトンにすげ替え。中国に追加関税を課す。イスラエル兵発泡事件で国連の調査が提案されたが、アメリカは採択を阻止した。この辺から、トランプの反国連が明確になる。

4月、中国の知的財産侵害を理由に関税を25%ふっ掛ける。日本との2国間貿易交渉を要求。トランプにとってはお友達と言えども容赦しないってことなのか?。シリアのアサド政権を軍事攻撃。荒っぽいことを平気でやりそうなイメージだが、ミサイル発射はこれ一件だけである。意外と平和主義者なのがトランプなのだ。これは評価しても良いと思う。そしていよいよ、貿易でやりたい放題を始める。

5月、無差別乱射事件で全米ライフル協会を擁護(まあ、しぶしぶ擁護したと言う感じであるが)。イラン核合意から離脱し、イランを制裁すると脅す(こちらは容赦ない)。鉄鋼・アルミニウムの関税をカナダ・メキシコにも課税と発表。北朝鮮との首脳会談が現実化。世界がイスラエルを非難する中でアメリカは擁護し、お得意のトランプ節が炸裂。あちこちに難癖をつけてトラブルを撒き散らすが、どうやら人権擁護を放棄して「アメリカの孤立」を加速化する作戦らしい。

6月、米朝首脳会談行う。中国報復関税を発表、貿易戦争始まる。EUも報復関税を発動、ハーレー社がオートバイ生産拠点の一部を海外に移すと発表。ヘイリー国連大使が国連人権委員会から離脱。イラン原油を11月から全面禁輸。そこら中に喧嘩を仕掛けている。

7月、連邦最高裁判事にカバノー氏を指名。米艦合同演習中止で1400万ドル浮いたと発表。NATO首脳会談で各国の防衛支出増額を要求。農務省が関税で損害の農民に120億ドル支援を発表。トランプは外交面では世界から「?」と思われる政策を連発しているが、国内では大盤振る舞いである。流石に「現役経営者」である。

8月、セッションズ司法長官にツイッターでロシア疑惑操作をやめろと発言。オバマの排ガス規制を緩和。元個人弁護士がトランプのスキャンダルを告白。中国への追加関税を発表。300紙以上の新聞がトランプ批判。経済ではWTO脱退もあり得ると脅す。国連パレスティナ難民救済事業機関(UNRWA)の支援金を停止。四面楚歌とはトランプのことだ、と言わんばかりの状況だが、支持率は一向に下がらず、熱狂的な市民運動が全米で広がっている。

9月、エジプトに軍事支援。中東での行動には「?」が続く。IOCによるアフガニスタンでの米兵戦争犯罪捜査をやめるようIOCの刑事・検察官らを脅す。トランプには正義の番人というような意識は皆無である。あるのはアメリカの利益だけ、はっきりしている。中国貿易戦争激化。フォード・ウォルーマートなど、製造業・小売業のトップ達が貿易戦争に反対を表明。イスラエルのネタニヤフ首相と2国家並立方式で合意。

10月、NAFTAを破棄してカナダ・メキシコと新たにUSMCAを結ぶ。ウィーン条約から脱退。ハイテク関連27産業への外国資本規制を強化。カショギ事件でサウジを擁護、サウジへの武器売却は中止せず。合衆国憲法修正第14条の国籍付与に関して、出生地主義を否定する。八面六臂の大活躍だが、トランプ一人で全部考えたわけではなく、ブレーンが作っている原案にトランプがサインしてるってことだろうから、ブレーンの考える「アメリカの未来の姿」というのも興味ある。ホワイトハウスでの会議を、一度、公開でやってくれると助かるんだが・・・。

11月、イランとの取引を国際金融決済網から締め出すよう圧力。中間選挙は上院共和党・下院民主党のネジレに終わる。メキシコからの不法入国者の難民申請を拒否。ミシガン州東部地区裁判所がイラク人100人を釈放。何れにしても国際政治の常識からすれば「アッと驚く」施策を連発するトランプは、並の大統領ではない。

12月、アルゼンチンで米中首脳会談、両者歩み寄る。ロシアとも会談を提案。同時にカナダでファーウェイの副社長を逮捕。習近平が超激怒したとかしないとか。トランプは知らないということだが「根は深そう」である。

とまあこんな調子で一年が過ぎた。全体に、好き勝手やりたい放題のように見えるが、実は基本テーマに沿って次々と勧めているのが分かる。まず大前提としては「アメリカ第一主義」で、軍事面ではアメリカが「覇権を放棄する」ということ。これは北朝鮮との和解に始まり、米韓軍事演習の中止・北朝鮮と韓国の宥和で東アジアに平和を齎した。これは過去の大統領の誰もがなし得なかったことで、一つの成果である。それと中東ではIS問題を「アメリカが放置・長引かせていた」が、オバマがロシアに丸投げして解決。これは元はと言えばオバマの功績だが、トランプはオバマのやったことは全部引っくり返しているにも関わらず、中東に関しては化学兵器使用の濡れ衣でシリアを空爆した程度で、後はお茶を濁すような嫌がらせだけでロシア・イラン連合に主導権を握られているのは不思議だ。トランプは中東よりも国内問題の方が大事だと言わんばかりに、「せっせ」と不法移民問題や富裕層税制改革や雇用拡大政策を推し進め、それに貿易戦争と矢継ぎ早に大統領令を乱発して大活躍だ。こんなに一挙手一投足がメディアを騒がせる大統領も珍しい。しかも、その「どれも」が今までの常識的な政策路線を大きく逸脱しているように見えるから「凄い」の一言なのだ。しかも支持率は落ちていない(これが案外トランプは冷静だ、という私の意見の根拠でもある)。もしかしたらトランプは世紀の大政治家なのか、はたまた白人至上主義のイデアリストなのか。答えを出す前に、この年末に向けて抱えている大問題を列挙してみる。

(1)中東ーカショギ事件
サウジの事実上の最高権力者MBS(皇太子)がやらせたというのが「ほぼ固まりつつある」世界の流れだが、トランプは武器売買を持ち出してサウジとの関係を継続している。トルコ領内の大使館で事件を起こしたのは、カショギ氏が来るタイミングでしか「カショギ氏を処理する方法がなかった」ということだろう。トルコ側の盗聴で実行犯の声がバッチリ録音されているので言い逃れはできそうもない。だが、何故それほど危ない橋を渡ってまで実行したのか。私はどうも「サウジ側が引っ掛けられて勇み足」をしてしまったのじゃないか、と思っている。勿論証拠は何もなく、憶測に過ぎない。だが結果としてMBSは権力の座から追い落とされて、対イスラエルのアラブ連合を指導する「父王の返り咲き」あるいは父王寄りの王子の支配に戻るのではないだろうか。これでサウジはイスラエルの穏健な味方ではなく、誇り高きアラブの盟主として中東の安定に貢献する方向に動き出すであろう。それは取りもなおさず英米ヨーロッパの側から離れて、露中イラン側に入らざるを得ないということである。カショギ事件は、実は「イスラエルの問題」なのではないか、そう感じている。来年以降の、トランプとプーチンの「駆け引き」が見ものである。

(2)フランスー暴動で風前の灯のマクロン
ゴーン・ショックが日産とルノーの主導権争いに発展する中で起きたパリの暴動が、マクロン政権を揺るがしている。経済のプロとして登場したマクロンだが、その肝心の経済で富裕層優遇の政策が仇となって貧困層からの怒りを買ったことからも分かるとおりに、全般的に支持率が低下し、一転して大盤振る舞いで政権運営を維持する緊急事態だ。フランスはドイツと一緒に一方の旗頭としてEUを引っ張っていく大国だが、実は製造業が隆盛のドイツと比べてどちらかと言うと農業大国であり、労働組合が強いフランスは国力が「ちょっと弱い」。そこで何とかして製造業を強化しようと焦っているとこに来てゴーン・ショックが起こり、日産のクーデターに足元を掬われ、パリ暴動で政権も危なくなってきた。これはトランプとは関係がないが、EUも一波乱ありそうである。

(3)英国ーEU離脱を巡って大荒れ
マクロンの窮状と歩調を合わせるように、メイ首相が進めるEU離脱案も国民の大反対に会って「頓挫しかかって」いる。これはメイ首相の退陣までいきそうな雲行きだ。離脱後もEU関税ルールに従うという方法で経済の落ち込みを回避すれば「それじゃEUに入ってるのと同じ」じゃないかと反対され、関税ルールに従わないで完全離脱するという方法をとれば「経済に与える影響は計り知れない」と反対され、ニッチもサッチも立ち行かなくなってしまったのだ。離脱は来年3月と待ったなし、フランス共々、英国も「決断の時」を否が応でも迎えざるを得ない。一人ドイツだけが勝組であるが、こちらもメルケルの与党が移民を巡って大きく支持を落としており、彼女が首相を引退した後の後継者選びが不安定の要因になりそうである。英仏独の政権の動向によっては、EU本体もが「空中分解」しそうな雰囲気が出てくるのだ。EUが分裂して「トランプ流の○○ファースト」の嵐が各国を吹き荒れると、第二次大戦以来の欧米優位も一気に崩れて、中国・インドの「数の論理」が世界を席巻しそうである。

(4)中国ーファーウェイの副社長が逮捕
その中国が「顔を真っ赤にして激怒」しまくっているというのが、ファーウェイ問題である。今日、副社長が保釈されたとのニュースがあったが、中国側の猛烈な申し入れが聞き入れられたものと見られている。これはカナダに対する中国の報復で、カナダ元大使逮捕というニュースの後に副社長の保釈があったので、この辺が貿易戦争の「仕掛けあい」である。貿易戦争真只中の中国習近平とアルゼンチンで会談したトランプは、ファーウェイ事件は知らなかったと「しゃあしゃあ」としているが、交渉の達人を自認している彼が「裏で一枚噛んでいない、わけがない」のは明白である。喧嘩腰で言いたい放題にぶちかまして、パンチが当たる寸前に「寸止め」するお得意の「ケンカ仲直り術」で今回も乗り切るか、それとも中国と「静かな冷戦」に発展するのか。答えはトランプの胸先三寸にある。

(5)アメリカー国内の好景気はどこまでつづくのか
ニューヨークでは株の上下に一喜一憂する毎日だが、ことトランプのやることには「先を読む」のが恐ろしく難しいのだ。今年に入ってからも経済は好調を続けているが、それがトランプの政策から巻き起こっているというのが彼の主張だが、どうなのか。最近結んだUSMCA(米国・カナダ・メキシコの協定)には、非市場経済国FTA条項というのが付け加えられていて、例えば仮想非市場経済国(中国など)と貿易すると「即座に協定を破棄出来る」ことが明記されている。こんなところにまで中国締め出しを画策しているのかと驚くが、トランプはアメリカ・カナダ・メキシコを軸とした「北米グループ」を形成しようとしているのではないだろうか。3国の人口は約5億人、充分である。世界を股にかける超大金持ちはタックスヘイブンに会社を置いて儲けまくっているが彼らは放っといて、庶民は5億人を相手にして「商売に精を出す」ことで安心平和に暮らしていけるし、製造業・農林水産業を復権させてもう一度輝かしいアメリカを取り戻すというトランプの政策の中心は「中産階級の程よい生活」を実現することにある。その考えに賛成する人々が「トランプを支持している」限りは、トランプ政権は安泰である。ということは経済の世界で、EU欧州連合・中国ロシア中東朝鮮連合・インド日本環太平洋アジア南米連合・アメリカ北米連合・アフリカ連合の5つのグループで、「クローズドな経済圏」を作っていこうとしているのではないだろうか。これが加速するのか失速するかは、来年以降の世界経済の展開に掛かっている。

以上、来年は「いよいよトランプ劇場」が見せ場を迎える。今までのゴタゴタは「序章に過ぎなかった」ような驚きの事件が、続々と起こる「かも」。トランプの世界かき回し策が炸裂して「自由経済が保護貿易派に圧倒される」のか、逆にアメリカ発の株価債権大暴落が「世界大恐慌の引き金を引く」のか。それとも・・・

とにかく、結論は来年のお楽しみということで、今年はお開きに致しましょう。次回はお待ち兼ね、第一位です。

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