明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

酒のよもやま話

2015-09-27 12:00:00 | 今日の話題
酒は人生の友。一人で飲むもよし、友と飲むもまた良し。やはり酒は日本酒が良い。いま日本酒に第三の波が来てるらしくブームだそうである。ますます酒飲みとしては嬉しい限り。

(1)酒との出会い

思い起こせば学生の頃はウィスキーやブランデーなど、アルコール度数の高い蒸留酒が全盛だった。私が会社に入った頃は先輩達はみんなクラブやキャバレーに血道をあげていて、飲むことよりも女の子と遊ぶのに夢中という状態で、飲むのは決まってビールだったような。30台後半になって会社の後輩を連れまわし、安い居酒屋で説教三昧、やはり飲むのはビール、安くて酔えれば何でもよかったのだ。ワインがオシャレな飲み物の象徴で、所謂イタ飯ブームが来てた時もビール、焼酎がサラリーマンに爆発的に売れて二日酔いしないと評判になった時にもビール。酒を味わうなんて感覚は全くなかったあの頃、心も身体も弾けてた。

日本酒を覚えてあれこれ飲むようになったのは最近である。キッカケは覚えていない。何かの拍子に飲んだ日本酒がやけに旨かったので「あれっ、日本酒も案外いけるかも」だったような気がする。純米吟醸酒だと思うが定かではない。初めて酒を味わう楽しみを感じたのは、それから何週間もかからなかった。日本酒は旨い、しかも味の違いが明瞭だ。私は味音痴なのかワインは余り味の区別がつかないし、どうも旨いという感じがしなかった。民族なのか気候なのか、寒い地方はどちらかというと、ワインより酒かウィスキーに好みが片寄る傾向があるようだ。一度上野駅構内の店でアイリッシュ・シングルモルトのウィスキーをストレートで飲んだ時は、この世にこんな旨いものがあるのかと感嘆したものだ。だからと言って、ウィスキーを飲むようになったかと言うとそうでもない。やはり私には日本酒が合っているようだ。

ある年の冬の事、いくら酒を飲んでも酔わなくなった。酔っているのだが気持ちいい。いつもはグルグル天井が回ってすぐ気持ち悪くなるのが常なのに、何故かいつまでも飲み続けられるのだ。私は遺伝的に飲んだら気持ち悪くなるはずだが、DNAが変化してしまったのだろうか。とうとう開眼した!私も立派なアル中デビューだ、と独り夜中にはしゃいで踊りまわった。
結局、至福の時は一ヶ月ほどで終わってしまい、また前のように酔って気持ち悪くなるのを繰り返すようになった。近頃人生の終わりに近づき、深いため息と共に己れに問いかけるときがある、果たしてそれで良かったのか悪かったのか、と。

その時以来、あの冬の感覚は戻っていない。

(2)太田和彦の「ふらり旅いい酒いい肴」

毎週水曜日の22時、BS211でやっている番組である。出だしは地域の特長紹介。この前は、私の故郷の水戸だった。相変わらず納豆を特産で紹介している。もうそろそろ卒業してもいい頃だと思うが、思いつかないのかねぇ。

番組のコンセプトはちょっと前までは飲み屋と酒・肴がメインだったような気がするが、最近は太田和彦さんが主役で「美味しいねぇ」しか言わなくなった。食レポも種が尽きてきて、新しい表現を開発するのは中々難しいのだろうな、と勝手に想像している。相変わらず片肘をついて酒杯を高々と掲げ、深々と味わうかのようなポーズは健在だ。私としては、地酒を3、4種類ぐらいは紹介がてらに飲み比べて頂きたいところだが、太田さんの「酒は一人飲みが最高」だというポリシーも尊重していて、雰囲気を味わうに止めたいと思う。いい酒紹介の番組ではないのだ。

島根県松江市の郊外の居酒屋を訪問した時珍しく大絶賛していたが、素晴らしく旨い魚を食べさせるので有名と言っていた。日本一とも言っていたが、相当旨いのは確かである。島根に行く事があればちょっと寄ってみたいところだが、可能性は恐ろしく低い。眺めて我慢するしかないが、このへんはテレビの旅番組の限界であろう。

最近の旅番組の傾向は散歩のついでにぶらりと寄って、「これは旨い!」というめっけもん式のグルメ食レポが主流である。以前からあるミシュランの星つきレストランを食べ尽くすという形式のものも相変わらず頑張っているが、所詮我々には縁のない別世界。行くのも大変という海外のレストランは超論外である。したがって水は低きに流れるの例えのごとく、店に入って偶然食べたカツカレーに「旨い!」を絶叫する式の安易な番組が乱立する事になる。内容もあってないようなものだからどうでもいいが、それにしても呆れるくらいに安易だ。

そもそも旅番組というのは出演者で決まる。一から十まで誰がやるかに掛かっているので、後は大した事をやらなくていいのである。プロデューサーは楽だと思う。そんな中でも一本筋の通った店選びを続ける太田和彦は、私のお気に入りの一人である。

彼が芸能界に籍を置いているかどうか知らないが、旅と酒の組み合わせが一つのジャンルとして確立してきた昨今、テレビ業界のヒエラルキーの中でどのような位置にあるか興味のあるところである。蓋し、この手の番組の先駆けである事には間違いない。何しろ◯十年前には、既に居酒屋百選を上梓しているツワモノである。彼も頭が薄くなり、趣味の悪いシャツを羽織って出てくるのはご愛嬌か。健康に留意し、末長く愉しませて戴きたいと願うばかりである。

追伸、船橋の三番瀬という太田さん絶賛の店に、友達が三人でこないだ寄ったらしい。噂通り酒も肴も旨くて満足したとの由、さすが看板に偽り無しであった。マスターも面白い人で、BGMがビートルズという一風変わった店である。ただし予約しないと入れないらしいのでご注意を。

(3)吉田類の「居酒屋放浪記」

月曜日の夜9時から、BS-TBSで放送。最近はBSのほうが面白い番組をやっている。吉田類は言わずと知れた高知のさすらい人。太田和彦もデザイナーだが、吉田類もフォービズム画家出身である。太田和彦が「居酒屋道」とも言える生真面目な側面を垣間見せるのに比べ、吉田類はあくまで居酒屋をこよなく愛する市井の人である。お約束のごとく地元を散歩してから、常連客で満員の居酒屋へと暖簾をくぐって、活気に溢れた店内に突入。抑えたナレーションとのコンビネーションも爽やかに、気付けばあちこちで乾杯の渦である。吉田類は常連客のオススメをさり気なく、時に厚かましく取り上げて、その店の隠れた人気メニューをあぶり出す。15分で散歩と店紹介は短いといえば短いが、この番組はそれ程の語るべき何かを持っている訳でもないし、吉田類も深くは掘り下げないスタンスでサッと回るのに徹している。そんな軽い居酒屋巡りの旅は、月曜日の夜より週末の方が合ってるようだが、番組を見て行ってみたいと思う方には丁度良いのかも。都内なら、会社帰りに寄っても面白い。

先週の何軒目か、吉田先生が焼き鳥のタレを目の前にしカメラに向かって賞めちぎった。「タレは見たところこんなに薄いですが、味は濃厚でしっかり甘みを包み込んだ絶品です」と箸をのばす。そしたら店主が「それ、醤油です」だって!
思いっきりハズした吉田先生、爆笑の嵐に飲み込まれたが、恥ずかしそうな照れ笑いがご愛嬌である。私は最初、居酒屋を訪ねる紹介番組のつもりで見ていたが、最近は吉田類の飄々たる人柄に何となく愛着を感じてきている。知識をひけらかすでもなくちっとも偉ぶらない所が好きである。太田和彦といい吉田類といい、人柄で魅せるというのは当代稀れかも知れない。貴重な番組である。まぁ、好きになれば何でもよく見える、とは言えるけど。

因みに吉田類は都内から近郊がテリトリーである。主に駅前の大衆酒場がメイン。こちらは行こうとすれば行けないことはない。私の知っている店に来てくれると嬉しいのだが、なかなか実現しそうでしない。近くの駅には来たらしいが。

残念!

(4)おんな酒場放浪記

こちらは金曜日の23時30分からBS-TBSである。 万波奈穂・倉本康子といった女性陣が担当する吉田類の女版である。番組の構成が散歩と居酒屋である事に変わりはないが、この居酒屋というジャンル、どうも女性には難しいのじゃなかろうか。ビールのジョッキなど飲むところをカメラのアップで写すのだが、顔が酒焼けでテカッているのが何とも見苦しい。何とかならないだろうかといつも思いつつ、ついつい最後までの見終わって後味の悪いまま寝付くのが悔しい。

金曜日の最後の番組という事で隙間を埋める感が濃厚だが、酒飲みは案外構っちゃいないようで隠れた人気がある。確かに夜遅く居酒屋に多少キレイな(というか、その辺の居酒屋では間違いなく綺麗な)お嬢さんが一人で入って来れば、酔っ払ったおじさま達は超ウキウキ、店が一気に緊張感に包まれる事請け合いであろう。鼻の下を伸ばしてとよく言われるが、あれは「にやけた」顔をごまかすために口元を固く閉じる事で出てしまう無意識の典型的表情らしい。女性は男の顔に現れる内心の欲望をよく見ている、という良い見本である。本人は意識していないだけに面白い。

女性陣は時々入れ替わるが何時だったか、ちょっと好みの女性が出たきた事があった。名前は忘れた。好みの女性がでてくるのはいいのだが、肝腎の居酒屋の記憶がどっかへ行ってしまう。やはり「それなりの」女性が良いのだろう、酒場放浪記なんだから酒場を外しちゃいけない。

女性陣の酒を呑んでのコメントは、期待はしてないがやはり物足りない。土台、ビールやお湯割りやサワーだのホッピーだのと、邪道である。酒は地酒の純米酒に限る。私の好きな「李白」や「手取川」ならなお良い。

日本酒の蔵元は全国で1300蔵、昭和20年には7000蔵あったというから、激減である。飲む人と飲む量は間違いなく増えているから、多様化の中に埋没してしまったとも言える。日本酒の等級による課税制度や三倍酒と言われる粗製乱売が祟って、日本酒は酔うためだけの安酒というイメージが定着した。商品を大事にしなかったメーカーにも責任はある。しかし、日本酒は一升瓶を抱えて徹夜で呑むといったガブ飲みするものではなく、せいぜい1種類につき1合か2合を、じっくり味わって飲むものに変わってきた。純米吟醸酒ブームである。日本酒はワインと同じ様に味を楽しむものという認識が、やっと生まれて来たのがここ2、3年だろうか、素晴らしい事である。

私はそろそろテレビでも、「日本酒ソムリエが選ぶ銘醸酒」みたいな「教養番組」が出てこないかなと心待ちしている者の一人である。勿論、旅と連動して全国の蔵元さんを訪ねるのだが、そこにテーマやポリシーを加え、北は北海道から南は沖縄まで、1年と言わず2年でも3年でも、行ける所まで行って欲しい、そう思う。酒は蔵元で作るのだが、日本酒独特の風土という地域性と密接に繋がっています。その風土というものを、季節の風景と絡めて酒の味わいを演出する。そんな番組なら絶対ヒットすると思うのだが如何だろうか。やるからには1時間の枠を取ってじっくりとやってもらいたいものである。

(5)夕焼け酒場

俳優のきたろうと西島まどかが案内する酒場巡り。土曜日の夕方6時、またBS-TBSだ。最近の番組は、何故かTBSでもフジでも朝日でも、同じテーマ同じ場所の似た様な作りになっている。ある週は「関ヶ原」を各局が取り上げ、また違う週は「信長」を取り上げる。またある週は各局が「三陸」を散歩かと思えば、違う週は「輪島」でバッティングするといった具合。まさか制作会社が素材を各局用に撮りためて使いまわしているわけではないだろうが、なんとなく勘繰りたくもなる。
こないだ吉田類の酒場放浪記とおんな酒場放浪記で、同じ店が出てきた。片方は再放送なので実際は放送日は離れていたのだが、不思議と重なる、世間は狭いものである。

さてこの番組はきたろうの味のあるキャラクターが魅力なのだが、私は秘かに西島まどかのファンである。こういう風に自分の隠し事を告白するのが、不思議と楽しく感じられるというのがSNSの魔力である。ツイッターで馬鹿な写真をバラまく所謂バカッターと呼ばれる人種は、実は明るい普通の若者だったりする。 SNSというのは自分の味方ばかりでは無いのだが、本人は受けてると思ってやっている。この送り手と受け手のギャップ、結局それが失敗の元なのだが、いつ自分もそうなるか分からない所にSNSの怖さがある。麻薬に似ているかも。

この前の放送だったか、きたろうもお客さんと乾杯してたが、吉田類とはだいぶ雰囲気が違うなと思った。きたろうは自分も同じ客同士という感じで乾杯しているが、吉田類はレポーターとして盛り上げ役に徹している感じ。あれは地なのかも知れないが、吉田類には天性の華やかさを感じると言えば持ち上げ過ぎか。

(5)酒と健康

酒は家飲みが一番だ。私の好きな酒を好きな時に好きなように飲む、それ以上の悦びがあろうか。いや待て、料理は得意じゃ無いし味音痴だし。それに一緒に飲む相手やシチュエーションが違えば、酒の味も変わってくるのじゃ無いか?

まず第一に酒の味に影響があるのは自分の身体の健康状態だ、とは近所の酒屋の主人の弁である。確かにこれは実証できる。体の調子が良い時に飲むと美味いが、また同じ酒を体の調子が悪い時に飲むと不味く感じる。「あれー、変だな」となるが、ちっとも変じゃない。身体が受け付けないというだけである。つまり、そういう不調な時は何を飲んでも不味いだけである。酒は控えて薬を飲もう。

私は、旨い酒はいつ何処で誰と飲んでも一人でも旨い、と言う考えだ。それは健康である事が条件である。酒を正しく味わうために、舌の味覚・喉の感覚を正常に鍛えておこう。

(6)ナレーション

ナレーションも馬鹿にはできない。私は石丸謙二郎の声と語り口が大好きである。旅番組などで出演しているが、実に爽やかである。一流の人というのはどこで本当の力を発揮するか分からないものだが、ナレーションというのは本人も意外だったかも知れない。石丸謙二郎の隠れた才能が表に出たと思う。彼がナレーションすると、旅が急に深くなる。お気に入りの純米吟醸酒を飲みながら、石丸謙二郎のナレーションで旅番組や歴史番組を見るのが最近の夜の定番である。

ふと窓の外を見上げて夜空の星をボーッと眺める。少し酔ったかもしれない

最新の画像もっと見る

コメントを投稿