明日香の細い道を尋ねて

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孤独な夜に聴くクラシック(14)ストラディバリウスの秘密が暴かれる?

2023-01-17 11:16:54 | 芸術・読書・外国語
随分前の SmartNews の記事だが、ストラディバリウスの「音の秘密」に新しい発見がありそう、だそうだ。それによると、楽器の表面のニスと木材の間に、もう一層、別の塗料が有るらしい。これが何なのかはまだ解明されてはいないが、赤外線顕微鏡技術によると何らかの「タンパク質」が認められたそうである。
 
調べたのは1718年製のサン・ロレンツォと、1690年製のタスカンだ。ストラディバリにはそれぞれ「名前が付いている」から凄い(ストラディバリウスはストラディバリの語尾が変化した形のようである)。ちなみに私の大好きなイタリア人バイオリ二スト「サルヴァトーレ・アッカルド」の愛用のバイオリンは、1718年製のストラディヴァリウス・ファイヤーバード・エクス・サン=テグジュペリと1721年製のストラディバリウス・ハルト・エクス・フランチェスカッティ、それと1734年製の名器「グァルネリ・デル・ジェス」ということである。グァルネリの方がストラディバリより音が多少大きくて、大人数のコンサートホールに向いているそうだ。このグァルネリは、ネットで検索するとグァルネリと入力しただけで「デル・ジェス」まで一発で出てくるから、相当有名だと分かる。まあ、デル・ジェスの意味は良く分からないけど・・・。
 
とにかくアッカルドに限らず、有名なソリストともなれば、ストラディヴァリの一つや二つは持ちたくなるのは人情であろう。ストラディバリって、そんなに素晴らしい楽器なの?って事になると、ダウンタウンの浜ちゃんがやってる格付け番組でお馴染みの「ストラト当てクイズ」を思い出す。素人にはどっちがストラトか中々分からないクイズだが、これはストラトの音が「どういう音か」を知らないから当たらないのであって、「どちらが良い音か?」と考えると、当てられなくなってくるのだ。勿論、音の良し悪しという評価尺度もあるとは思うが、それを一般の素人が10秒やそこら聞いたからと言って、「ハイこっちです」なんて簡単に決められる訳は無いのである。ましてや一般の人は、音楽を「音の良し悪し」ではなく、メロディや和音の構成で好き嫌いを決めているから猶更であろう。
 
勿論、じっくり聞いていれば当然、ストラディバリウスと普通の楽器の「差」は歴然だと思う。ただ、我々は、音色の差は「演奏家の力量の差」だと思っていて、楽器の違いだとは想像もしていない。ここが、ストラトと他の楽器の違いを当てられない「本当の理由」である。皆が勘違いしているような、耳が「良い悪い」では無いのだ(と思いたい)。なお、この「音の違い」は目で見て「大きいか小さいかを見分ける」のとはわけが違う。まず「良い音って何?」から始まるから始末が悪いのである。回答者の答えがいずれも抽象的な「広がりとか深み」などの表現になっている点でも、問題が難しいと分かる。ストラディバリウスを一発で聞き分ける為には、ストラトの音がどういう音なのかを「知っている」必要があるのだ。回答者の差は、知っているか知らないかの違いだけ。それがクイズたる所以である。
 
ちょっと脱線したが、この「ニスと木材との間の塗料が何なのか?」については、今、鋭意研究中だと言うことだが、これが分かるとストラトの完璧なコピーが、「300年の時を隔てて」出来上がる事になる。一般にバイオリンなどの木製の楽器は、ある程度年数が経って使い込まれることによってパフォーマンスが上がると言われている。しかし耐用年数も勿論有るわけで、おおよそ「300年から400年くらい」だと言われている。
 
とすると現在持て囃されているストラトバリウスの多くが、耐用年数の限度一杯に近づいていると言うわけだ。何だか淋しい気もしないでもない。
 
なお、今年も新春恒例の格付けチェックで、お約束のストラト当てクイズに私もテレビの画面越しに挑戦した訳だが、流石に今回は「見事に当てた」ので気分が良かったことを報告しておきたい。何より2度目の確認で両者の音の違いが(良い悪い、ではなく)まるで眼前で音が鳴っているかのごとくはっきりと、言うなれば「目に見える別物として」聞き分けられたことは収穫であった。それは例えれば乃木坂46の端っこで歌っているそれ程でもない子と、「キューポラのある街」に出ていた頃の吉永小百合!、ぐらいの違いがあったのである(こんなこと書いても分かんないだろうな、若い人は・・・)
 
まあ、誰が一番美しいかというのは個人と時代の好みだ、という意見はひとまず置いとくとして(私は沢口靖子の若い頃が一番だと思うけど)、ストラディバリウスにはそんじょそこらのバイオリンでは足元にも及ばない「部屋の空気を一変させるほどの輝かしさと圧倒的な存在感」がある、と実感しただけでも良いお正月だった。ちなみに私は、いつもはヘッドフォンで聞いているので音の細かいディテールは良く分かるのだが、音響の良いコンサートホールで聞くストラディバリウスの「生の美しい音色」も捨て難いな、と感じた次第である。
 
今度、上野の文化会館でバイオリンのリサイタルなんぞに行ってみようかな、と思わせる何かがあったのは事実である。出来たら、バッハの無伴奏をストラディバリウスで聞いてみたい・・・。


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