くにたちの声

国立市の市政について、国立市民・納税者の立場から発言していきたいと思います☆ presented by Y.Suzuki

高橋監査委員の見解に対するコメント

2009年11月29日 22時10分22秒 | 住基ネット
 昨日の本ブログで紹介した高橋雅幸監査委員の見解について、私のコメントを以下に述べさせていただきます。

 高橋委員はまず、「(1)支出の違法性について」という項で、「一般的に、財務会計行為自体は適法に執行されていたとしても、その行為に先行する行為が違法である場合には、その行為も違法性を帯びる」と前置きしたうえで、私たちが違法支出であると指摘した5項目すべてについて、「『住基ネットに接続していれば本来必要のない支出』という請求人らの主張通りで、住基ネットを一時中断することを原因とする支出であるのは明白であり、違法性の高い支出であると判断する」と述べています。この高橋委員の判断は、極めて合理的かつ適切なものであると考えます。

 しかし、このように支出の違法性を認めながら、「(2)請求人らの請求について」という項では、「これら支出は、住基ネットを一時中断している状況において、住民の福祉を図ることを基本とする地方公共団体としての使命を最低限果たすために必要な支出であり、当然に支出されるべきものであるので、財務会計行為に限定される住民監査請求の結果としては、その支出を差し止め、違法支出相当額の補填を求めることは適当でないと判断せざるを得ない」と述べています。
 違法性の高い支出であることを認め、住基ネットに接続していれば本来必要のない支出であると判断した一方で、地方公共団体としての使命を最低限果たすために必要な支出であり、当然支出されるべきものである、と主張するのでは、論理が破綻していると言わざるを得ません。また、これでは、違法行為を容認することにもなります。わが国が法治国家である以上、違法行為の防止を最優先させるべきであることは、論じるまでもないことです。

 高橋委員は、私たちの住民監査請求について、地方自治法第75条第1項に規定する直接請求により住基ネット切断行為の差し止めを請求すべきであり、住民監査請求により支出の差し止めを請求するのは本末転倒である、とも述べています。これには、ただただ唖然とするばかりです。
 高橋委員は、代表監査委員であるにもかかわらず、住民監査請求制度の趣旨を理解していないようです。
 
 住民監査請求制度は、「住民訴訟の前置手続きとして、まず当該普通地方公共団体の監査委員に住民の請求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え、当該行為又は当該怠る事実の違法、不当を当該普通地方公共団体の自治的、内部的処理によって予防、是正させることを目的とするもの」(最高裁判決昭和62年2月20日・最高裁判決平成10年12月18日)と解せられています。
 すなわち、住民監査請求制度には、住民訴訟という裁判所に司法判断を求める住民の権利が盛り込まれているのです。ちなみに住民訴訟とは、一般に「普通地方公共団体の執行機関又は職員による地方自治法第242条1項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実が究極的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであるところから、これを防止するため、地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として、住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する機能を与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものであって、執行機関又は職員の右財務会計上の行為又は怠る事実の適否ないしその是正の要否について地方公共団体の判断と住民の判断とが相反し対立する場合に、住民が自らの手により違法の防止又は是正をはかることができる点に、制度の本来の意義がある。すなわち、住民の有する右訴権は、地方公共団体の構成員でもある住民全体の利益を保障するために法律によって特別に認められた参政権の一種であり、その訴訟の原告は、自己の個人的利益のためや地方公共団体そのものの利益のためにではなく、専ら原告を含む住民全体の利益のために、いわば公益の代表者として地方財務行政の適正化を主張するものであるということができる」(最高裁判所判決昭和53年3月30日)と解されています。

 一方、地方自治法第75条第1項による直接請求では、住民訴訟によって司法の判断を仰ぐことが認められていません。
 周知の通り、関口博市長は、最高裁の判決も、総務省の是正要求も、東京都の是正勧告も、市議会の「住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)への接続を求める決議」も、ことごとく無視して住基ネット切断という違法行為を継続しています。このように遵法精神に欠ける市長に対して、直接請求がどれほどの効果を持つのでしょうか?
 もし私たちの直接請求が認められて、「住基ネットを接続せよ」という監査結果が出たとしても、関口市長は、当然無視するでしょう。
 あるいは、もし今回の監査結果と同様に、監査委員の合議不調により監査結果の決定をなし得ないということになったら、どうすればいいのでしょうか。住民訴訟の提起が認められていない以上、私たち市民には、もう何もなすべき手段がありません。
 私たちが住民訴訟を視野に入れた住民監査請求を行ったのは、こうした事情を勘案した結果なのであって、高橋委員の「住民監査請求により支出の差し止めを請求するのは本末転倒である」との見解は、まったく的はずれとしか言いようがありません。前述の最高裁判所の判決にもあるように、住民訴訟を提起する権利は、地方公共団体の構成員でもある住民全体の利益を保障するために法律によって特別に認められた参政権の一種なのであって、この権利の前提となる住民監査請求により違法支出の差し止めを請求することを「本末転倒」と主張する高橋委員は、監査委員としての見識を疑われても仕方がないのではないでしょうか。
 また、監査委員としての責任を放棄して「合議不調」としたうえに、「住民監査請求ではなくて直接請求をせよ」とたらい回しにする高橋委員の無責任な姿勢こそ、本末転倒なのではないでしょうか。

 私たちには、組織も資金もありません。私たちは、良識のみを持った市民の集まりです。したがって私たちは、持てる力を最大限に生かすためには直接請求より住民監査請求を選択するほうが合理的であるとの結論に達したのです。

 最後に、「(3)損害の認識について」の項で、高橋委員は、「住基ネットに再接続し、住民基本台帳法第30条の5の通知義務を果たす環境が整ったときには、一時中断をしていた期間にこの行為を直接原因とする支出が、同期間にこの行為により執行しなかった事務に直接係ると見込まれる費用を超える部分がある場合には、その越える部分については国立市がこうむった損害と認識できる可能性はあると考える」と述べています。とても判りにくい文章ですが、推測するに、将来住基ネットに接続した際にかかる事務コストより、切断していた期間の事務コストのほうが大きければ、その差額は市が被った損害である、と言いたいのでしょう。
 なぜ、こんなことをわざわざ付記したのか、その意図が理解できませんが、これについては、既に総務省が試算を行っています。同省によれば、住基ネットの運用にあたっては、市区町村、都道府県、指定情報処理機関がシステムを維持・管理するにあたり、年間約140億円のコストがかかっています。 一方、住基ネットを活用することにより、住民票の写しの添付・年金の現況届の省略や転入通知のオンライン化による事務の効率化や郵送料の削減などにより、年間約400億円の行政事務コスト等の削減効果を生んでいるといいます(総務省ホームページへ)

 したがって、国立市の場合については、住基ネットを切断していた期間の事務コストのほうが、接続した際の事務コストよりはるかに大きいということが予測されます。このような状況を考慮するなら、高橋委員は、「その越える部分については国立市がこうむった損害と認識できる可能性はあると考える」などと他人事のようなことを言わないで、監査委員として、総務省と同様の試算を国立市においても実施すべきだったのではないでしょうか。



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