くにたちの声

国立市の市政について、国立市民・納税者の立場から発言していきたいと思います☆ presented by Y.Suzuki

国立市の措置内容が公表されました

2009年06月24日 23時14分50秒 | 国立マンション訴訟
昨日、私たち259名の国立市民が求めた住民監査請求に係る監査委員の勧告に対する市の措置内容通知書が公表されました(措置内容の全文はこちら)。

その内容は、案の定「求償権を行使するに値しない」の一点張りです。
まさにこのブログで、5月18日に予想したとおりの結果です。
あまりに予想通りなので、思わず笑ってしまいました。
以下に、私見をまじえながら、内容を紹介しましょう。


故意・重大な過失について

通知書では、「求償権を行使するに値しない」という市長の判断の根拠となっている3人の弁護士の法的見解が紹介されています。
この3人は、市が公費を使って意見書を求めた、杉井静子、後藤邦春、伊藤健次の各弁護士です。
杉井弁護士と後藤弁護士は、「求償権なし」との見解です。
杉井弁護士は市の顧問弁護士ですが、後藤弁護士は、明和マンション裁判で市側の訴訟代理人を務めた人です。
このような裁判の当事者に意見を求めること自体、不適切ではないでしょうか。
市側の訴訟代理人だった弁護士、すなわち上原公子前市長の違法行為を弁護する立場だった人が、「前市長に対する求償権はあるか否か」と問われて、どう答えるか。「求償権なし」と答えるに決まっています。はじめから出来レースなのです。

杉井・後藤両弁護士は、意見書のなかで、明和マンション裁判の高裁判決が「前市長に重大な過失があったとは認定していない」と述べています。
国家賠償法は、公務員に「故意または重大な過失」があった場合に求償権を認めているので、上原前市長には重大な過失がないから「求償権なし」と判断しているわけです。これには正直、驚きを隠せませんね
司法試験をパスした法曹の判断なのかと、疑問を持たざるを得ません。

すでに5月19日のこのブログでも書いたように、法律上、「故意」とは、一般に「結果の発生を認識しながらそれを容認して行為するという心理状態」(内田貴『民法Ⅱ債権各論』330頁など)を意味します。前記高裁判決は、上原前市長の一連の行為について、「本件建物の建築・販売を阻止することを目的とする行為」であって、「異例かつ執拗な目的達成行為である」と認定しています。となると、こうした目的をもって一連の行為を行った以上、前市長が結果の発生(マンション業者の営業活動が妨害されること)を認識できなかったとは通常考えられません。したがって、前市長の行為は故意によるものであると判断できます。不法行為法を学んだことのある人間なら、このように結論づけるのが常識的です。

市が意見書を求めた3人目の弁護士である、伊藤弁護士も高裁判決を検討した結果として、「前市長には、営業の自由を妨害する目的を有していたこと、及び『行政目的を達成する上での中立性・公平性』をもって行政活動を行うことについて故意少なくとも重大な過失があることが認められる」としています(伊藤健次「法的意見書」5頁)。
弁護士として至極合理的な見解であると思います


寄附行為について

この通知書は、明和地所が国立市に対して行った寄付行為に関して、「市は本件損害賠償金の支払がなければ行われ得なかった本件損害賠償金と同額の寄附を受けており、実質的には会計収支上のマイナスは発生していない」という伊藤弁護士の見解の一部だけを紹介したうえで、「本件寄附はその実質において損害の補てんと言うことができ、このような場合には求償権の行使は認められない可能性が高いと考えられる」と述べています。
しかし、これは、伊藤弁護士の見解を正しく伝えていません

伊藤弁護士は、本件寄附について、「国立市から明和地所株式会社に対する損害賠償金の支払いは、既に行われており、この支出を会計的に撤回するためには、過年度の支出命令を取消、その結果として、支出命令がなくなったにもかかわらず、公金が支出されているという状態を解消するために、金員を収納する必要があるが、本件ではそのような手続きはとられていない。すなわち、収入金票によれば、収入科目は、款、項、目、節とも寄附金とされ、細は一般寄附とされていることから、損害賠償金の補填でないことが明らかである。また、提供された資料からは、明和地所株式会社は『損害賠償と遅延金はいったん納入されたものであり、債権放棄はありえない。』としていることから、明和地所株式会社には損害賠償金の返還の意思はないものといわざるを得ない。したがって、明和地所株式会社からの寄附金の受け入れをもって、国立市に発生した損害が補填されたということはできない」と述べているのです(伊藤健次「法的意見書」10頁)。
自分たちに都合のいいような部分だけ紹介するのは、やめていただきたいものです


庁議で検討せず

 さらに、先の監査委員勧告が、求償権について「庁議において検討せよ」と求めていることに対して、この通知書は、「本件住民監査請求の監査結果及び内容に不服があるとして住民訴訟が起こされ、市は応訴の意思を表明している以上、求償権の対象者及び範囲について庁議で検討することは適当でない、また、求償権行使に至らない理由については、訴訟の方針に直接関連する内容であることから、現時点で庁議において詳細に検討して結果を公表することは適当でない」と意味不明のことを述べています。
住民訴訟が提起されたから、庁議で検討しない、とはどういうことなのでしょうか
住民訴訟が提起されたからといって、コソコソやらないで、堂々と庁議で検討すればいいのではないでしょうか
いかにも小役人が書いた作文という感じです


幹部職員の責任

それにしても、市の幹部職員には、関口市長の失政を正すような気骨のある人はいないのでしょうか
昨日、この通知書とともに市議全員に配布された1枚の資料によれば、今回の通知書を公表するまでに、合計4回の庁議が開催された(4月28日、5月12日、6月12日、6月19日)とあります。この庁議に出席していた幹部職員のなかに「市長は求償権を行使すべきだ」という正論を述べる人はいなかったのでしょうか

伊藤弁護士は、意見書のなかで、求償権の対象となる公務員に部長職を挙げています。
すなわち「部長会において、本件地区計画の決定と本件条例の制定を行う案を検討し、その中で損害賠償請求訴訟が提起される可能性も検討されていたというのであるから、地区計画の決定及び本件条例の制定は組織的検討を経ていたということになる。そうとすれば、部長会において、営業の自由に対する制約に関し法的根拠の検討、『行政目的を達成する上での中立性・公平性』に対する検討がなされていれば、前市長の行為は事前に抑制されていた可能性は大である。そして、いやしくも、地方公共団体の部長職にある公務員が、行政目的の正当性のいかんによらず、営業妨害行為が法律優先の原則に違反することについては、認識していたはずであり、仮に認識していなかったとしても、容易に認識し得たものであるから重大な過失である」(伊藤健次「法的意見書」6-7頁)とし、「部長会を構成した部長職にあった公務員にあっても前市長の違法行為に協力したと認められる限りにおいて、組織的過失(重大な過失)を行った者である」(伊藤健次「法的意見書」8頁)と断じているのです

私たちは、今回の住民監査請求および住民訴訟においては、敢えて部長職を求償権の対象とはしませんでしたが、伊藤弁護士のような見解があることを幹部職員は肝に銘じていただきたいものです。


お粗末な監査結果

結局、予想通りの措置内容が公表されたのは、去る4月24日に監査委員の出したお粗末な勧告のせいでもあります。
すでに5月18日のこのブログにも書きましたが、この勧告は、「求償の対象者および範囲について検討せよ」という的はずれなことを言っているので、市は、○○のひとつ覚えのように「求償権を行使するに値しない」と回答すれば、もうそれでお終いなのです。
まったく無意味な措置内容ですよね。
市長は、「求償権を行使しない」という職務懈怠を続けたままだし、監査委員は機能不全に陥っているし、国立市は依然として、無法都市そのものです。

こうした状況を打破すべく、私たちは住民訴訟で、私たち自身の「権利のための闘争」を展開していきたいと思います


コメント
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