切られお富!

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林芙美子と永井龍男が描く禁断の愛

2015-06-09 20:35:27 | 超読書日記
先日、永井龍男の『青梅雨』という短編について書いたついでで、同じ作者の短編『冬の日』を読んだのですが、義理の母と嫁を亡くした婿との愛と別れを描いた作品なんですよね。で、思い出したのは、林芙美子の短編で義理の父と息子の嫁の過ちを描いた『河沙魚(かわはぜ)』という作品があったなと。たまたま、この二人の作家って、同い年なんだけど、男女の差なんですかね。全然印象が違う。もっとも、週刊誌的な「禁断の愛」って感じじゃなくて、日常のなかに関係を描いているところは共通してますが・・・。ということで、簡単な感想のみ。

『冬の日』は、個人的には、有名な『青梅雨』より全然良い作品だと思います。義理の母が婿や孫のために身を引く心境を、畳替えの風景とからめて描く手腕はやはり名手だと思います。ただ、ヒロインの哀しみの描き方がピタッと決まり過ぎていて、完成された遠い風景に思える。読み手は、義理の母と婿の関係をもっと知りたくなるのではないでしょうか。また、向田邦子がこの作品を劇化したら、もっとヒロインの母親の内面に切り込んでくると想像できますね。
 
一方、林芙美子の『河沙魚(かわはぜ)』は何かもっと生々しい生物的な女性の生みたいなイメージがあって、出征していた夫がまもなく帰ってくるんだけど、義理の父親との子供を妊娠しているというエグイ設定。でも、ヒロインが悲劇のヒロインになるんじゃなくて、最後、草むらでおしっこしてスッキリするってあたりが、ちょっと女性の作者でないと書けない終わり方ですね。


(もっとも、谷崎潤一郎が『細雪』の最後を、末の妹の下痢の場面で終わらせた例があるといえばありますが…。)


ちなみに、『冬の日』の母は44歳、婿は32歳、『河沙魚(かわはぜ)』の父は57歳で、嫁は33歳。林芙美子の方は青空文庫で読めるので、興味のある方はどうぞ。三島由紀夫が絶賛した林芙美子作品でもあります。

(以前書いた記事)
・三島由紀夫が絶賛した林芙美子の短篇。


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