切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『female 』 (新潮文庫) 

2004-12-14 01:18:27 | 超読書日記
ここのところ、小説は読んでないなというわけで、軽い気持ちで読んでみたこの本。

本の帯によると、「(五人の)女性作家によるエロティック・エンターテインメント。」ということなのだが…。

五人の作家と言うのは
・小池真理子
・唯川恵
・室井佑月
・姫野カオルコ
・乃南アサ

で、たまたま私はこの五人の本を読んだことがなかった。知らない作家のモノを読むのもいいかって感じで、読んでみたのだけど、まあ、私の率直な感想を言うと、「つまんねえ…。」。

まず、小池、唯川、室井の三人は30代半ばから40歳の女性が主人公。まさに、『負け犬の遠吠え』状況の主人公たちなのだが、主人公と同年代の女性が読んだら生きてくのがいやになってしまうんじゃないかなと思うようなストーリー。実に悲惨な感じに描かれている。でも、私が知ってるこの世代の女性ってそれなりに快活に生きてるんだけどなあ…。「女と老いの始まり」というテーマでいうなら、林芙美子の「晩菊」とか「水仙」(特にこれは大好き)なんて傑作もあったし、岡本かの子の「老妓抄」なんてのもあるけど、どれも「老いてなお盛ん」って感じだったしな…。

三人の中では唯川の「夜の舌先」というのが、一番スマートで読み物として読ませるけど、あとの二人はどう考えても凡作って感じ。Vシネかミニシアターものの低予算映画のネタだなあ。

姫野カオルコの「桃」は、ちょっと技巧的に凝ってるのと作者の感性だけで書いてる部分が混在していて、いまいち分かりにくかった。五人の中ではちょっと毛色が違っていて、ひょっとしたら一番才能がある人なのかもしれないのだけど、もうちょっと整理して書いてくれないかなという印象。ただ、ちょっとネタバレになるけど、似たようなテーマなら「青空のマリィ」っていうやまだないとの傑作マンガの方が断然スマートでかっこいい。

最後の乃南アサは多分一番の凡作でコメントなし。特にオチがガッカリ。

総じて、「エロティック・エンターテインメント」という割には、セックス描写はオヤジの読む週刊誌レベルで、五感に訴える感じは皆無。皆人気作家なんでしょうが、これがベストの作品ではないにしろ、どうも私とは感性合わないみたい。

こういうネタのオムニバスなら、マンガのほうがきっとマシなんじゃないかな…。岡崎京子の「ヘルター・スケルター」とかやまだないとの「ガール・フライデー」なんかの方が断然皮膚感覚にくるって感じなんですけどね、私は。

因みに、この短編集はオムニバス映画として撮影進行中なんだそうですが、この本を読む限り監督が気の毒。まあ、意地悪な気分で映画観に行っても良いけど。
(監督は、塚本晋也、松尾スズキ、廣木隆一、篠原哲雄、西川美和の五人。)


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4 コメント

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女流作家粗製濫造? (不老愚 助光)
2004-12-14 19:05:29
この所若い(と言っても40歳前くらい)女性作家がやたら出て来ましたね。

これには出版社の商業主義が露骨に見えてます。

「若い女性が書いた本なら売れる」とばかり内容・出来栄えは二の次で、売れればいいとして粗製濫造です。室井佑月なんかテレビで見るとバカ丸出しで何にも知らない。

おまけに芥川賞・直木賞も女性ばっかり。

出版業は経営が大変で苦し紛れの悪足掻きとしか思えません。
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読者もバカじゃない。 (切られお富 )
2004-12-15 07:08:33
コメントありがとうございます。



私は商業主義自体は悪くないと思っているのですが、出版社の方々にわかって欲しいのは、「読者もバカじゃない」ということ。今や出版社の天敵ブック・オフに行くと、いわゆる「ベストセラー」本が大量にあったりします。私は子供の頃に読んだ文庫本なんかも捨てられない性分ですが、<暇つぶし>や<話の種>以上の価値のない本は、うわべの発行部数ほどには人の心に届いてないということなのでしょう。



それと<女流作家問題?>ですが、昔の女流作家や24年組みに代表される少女漫画家って、無茶苦茶リテラシー高かったと思うんですけど、最近はそうでもないですね。(いまでも凄い人は凄いけど。)結局、単なる男性・女性の性別上の違いだけになってきたなという印象。



あと「若い女なら何か思い切ったことを言うだろう」というオヤジ的な思い込みも、もうやめて欲しいですよね。現実の女性たちは、契約社員や派遣社員が増えてて思い切ったことなんか言える様な社会情勢ではないですから。上っ面の大胆な発言より、「ちゃんとしたこと」を言える女性コメンテーターが増えて欲しいな。
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お富さんの仰る通り (不老愚 助光)
2004-12-15 20:16:22
私は女性の性描写を読む気になりません。それはまるで昔のストリップ劇場を見る様な哀しい気持ちになるからです。

私達オジサン族のスケベ心を「此れでもか!此れでもか!」とばかりに刺激して幾許かのお金にあり付こうと言う魂胆が哀しいのです。

確かに私はスケベです。しかし此の頃のようにこうもアカラサマにやられては「モウケッコウ」と言わざるを得ません。

「源氏物語」が女流作家による恋愛小説なのに何故名作なのかと言えば それは「性描写」が無いからだと私は思います。
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でも・・・。 (切られお富)
2004-12-16 11:59:49
確かに、映画なんかで女優が「必然性があれば脱ぎます。」なんて言ったりしますが、少なくとも日本の映画でその「必然性」とやらを感じることは皆無ですよね。



小説に関しても、不老愚助光さんの仰ることに99%同意するんですが、でも1%の可能性のために、ついつい本を手にしてしまうんですよね、活字読みとしては…。



ヘンリー・ミラーやDH・ロレンスみたいな、表現の世界に新しい地平を切り開くような性表現が、女性の側からなされないかって。(私が知らないだけかもしれませんが。)



小説だと松浦理英子の『ナチュラルウーマン』、マンガだとやまだないとの『エロマラ』といった辺りに、そんな可能性を感じなくもないのですが…。
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