切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『らんぷの下』一ノ関圭 著

2022-01-10 16:58:41 | 超読書日記
何年か前に『鼻紙写楽』という作品がマンガの大きな賞を取った、一ノ関圭のデビュー作の文庫化なんだけど、長らく積んどく状態にしてスイマセン。傑作でした!簡単に感想。

デビュー作といっても、1975年の作品なのですが(!)、デビュー以来、『らんぷの下』、『茶箱広重』、『鼻紙写楽』の三冊だけという、高野文子どころではない、物凄い寡作の作家です。しかも、『鼻紙写楽』(2015年)だって、四半世紀ぶりの新刊だったことを考えると、この人普段に何をやっているんだろう?

で、作品は劇画調の強い線の絵柄に、力強く生きる女たち!わたしはこのひと、てっきり男だと思っていたのですが、芸大出身の女性だと後から知って二度ビックリ。でも、納得。時代物から発表当時の現代物まで、女性の描き方が深いです。1975年当時はすでに少女漫画界の24年組が活躍していたことを考えると、少し傾向とかアプローチが違うんですよね。というか、典型的な少女漫画の描線や心理主義では、この作品群のような、世の中の荒波にもまれたような女性像は描けないのかもしれない。

ちょっとタイプは違うけど、石井隆の「天使のはらわた」シリーズの、女性からの回答みたいな気はします。また、絵のモデルの話が出てくるけど、このあたりの芸術論みたいなニュアンスも芸大出身という出自と関係あるのかな。

個人的には、「らんぷの下」、「裸のお百」、「ドライフラワー」、「寒椿」が好みですね。

ま、コロナ期の寒い冬の読書に良いです。おすすめ。









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