切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

三津五郎の父方の祖父が、永井荷風の『腕くらべ』に出てくる歌舞伎役者のモデルだったという話。

2015-12-24 22:58:25 | かぶき讃(トピックス)
たまたま、関容子さんの『舞台の神に愛される男たち』という対談集を読んでいて、今は亡き三津五郎のくだりに突き当たり、関さんが母方の三津五郎家ではなく、父方の坂東秀調の方について尋ねていた冒頭は、「さすが鋭い!」と、思わず膝を打ちました!で、あの艶っぽい花柳小説『腕くらべ』に出てくる歌舞伎役者のモデルが、三津五郎の祖父にあたる三代目秀調だったとは、目からうろこ。しかも、エピソードが凄いんです!というわけで、簡単な感想だけ。

三代目坂東秀調はもともと長唄のひとで、若くしてその美声を九代目市川團十郎に買われたものの、それを妬んだ関係者によって、お茶に水銀を入れられて声をつぶし、悔やんだ團十郎が役者にしたという、数奇な運命の役者。

思えば、三代目澤村田之助が脱疽で足を切断したのも、そもそものきっかけは、妬んだ役者が舞台に釘を出しておいたからだというし、昔の芸能の世界って、今の芸能界の比ではないですね~。

また、病気ついでだと、五代目歌右衛門が苦しんだ白粉の鉛毒同様に、お歯黒にも鉛が使われていたケースがあって、明治になってお歯黒の風習がなくなって、女性の平均寿命が20年延びたなんて話まである・・・。

と、そろそろ話を戻して、三代目秀調の件。スラリと背が高くて、新劇や翻訳劇もこなす美貌の女形だったそうですが、この人が『腕くらべ』の瀬川一糸のモデルだったとは。

歌舞伎の世界と文学って、思わぬところから繋がってくるなあ~というお話でした。ご興味のある方は、関容子さんの本と『腕くらべ』をご一読あれ!

(過去のブログ記事)
・『腕くらべ』 永井荷風 著



腕くらべ (岩波文庫 緑 41-2)
クリエーター情報なし
岩波書店
舞台の神に愛される男たち
クリエーター情報なし
講談社
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