切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『原節子 あるがままに生きて』 貴田 庄 著

2010-06-20 07:10:00 | 超読書日記
ここのところ、映画に関する良い本が立て続けに出てるんですよね。『伊丹万作エッセイ集』とか『ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代』などなど。で、今回取り上げるのは日本映画史上、最高のミューズ原節子に関する本。基本的に情報の少ないひとですけど、この本は丹念に彼女の情報を拾っています。女学校をやめて日活多摩川撮影所に入ったいきさつ、読書好きだったことなど。しかし、原節子って、狛江に住んでいたんですね!知らなかったなあ~。

確かに、狛江からだと日活多摩川撮影所(のちの大映東京撮影所で今の角川大映撮影所)や成城の東宝砧撮影所にも近いから、便利だったというのはよくわかる。でも、松竹大船撮影所は遠いんですけどね。

「好きなもの、まず読書、次が泣くこと、次がビール、それから怠けること」って、彼女の気品とユーモアが現れていてよいです。ただ、小津作品の彼女というより成瀬作品の彼女のイメージに近いかな。

あと、好きな学科は数学と体育で、特に水泳が得意だったというのは、当時としては大柄な彼女の体型の謎を解く鍵になるかもしれませんね。

彼女の「原節子」という芸名の名付け親が当時の日活多摩川撮影所の所長根岸寛一(映画監督根岸吉太郎の親戚に当たる人。)だったとか、ヨーロッパに渡ったとき、川喜多かしことともにマレーネ・ディートリッヒと食事をしたなんて話も興味深いです。

しかし、彼女も今年の6月17日で90歳(!)なんですね!いまはどうしていらっしゃるやら?

というわけで、レアな情報満載な一冊。文庫本ですし、手ごろですから、映画好きの方はどうぞ。なぜだか、ほんわかする一冊です。

PS:わたしの好きな彼女の出演作は、『驟雨』(成瀬巳喜男監督)、『めし』(成瀬巳喜男監督)、『女であること』(川島雄三監督)の3本で、小津作品も悪くないんだけど、小津作品ではきっちり小津調の枠に収まりすぎていて、彼女の地が出てないような気がするんですよ。彼女の肉体、肉声を感じないというか・・・。

そういう意味では、失敗作だけど黒澤明の『白痴』の彼女も嫌いじゃないです。

あと、この本で気になったのは、彼女の最古の作品『魂を投げろ』(1935)が見つかったという話。15歳の彼女を是非見たいなあ~と思いました。これまでは、山中貞雄の『河内山宗俊』が「現存する最古の作品」ということになっていましたよね。

・以前書いた映画『河内山宗俊』の感想。

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貴田 庄
朝日新聞出版

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