![]() | おおきな木 |
シェル・シルヴァスタイン,Shel Silverstein | |
あすなろ書房 |
『大きな木』という絵本の村上春樹訳がでたらしい。
ということでさっそく買ってみた。そして、本田錦一郎訳との違いを確認すべく親父と読み交わしをしてみたところ。
これは本田訳の勝ちである、と思う。
村上訳はやや堅さがあって、どこか小説的なアプローチなのに対し、本田訳は日本語をなるたけ縮め、漢字を使わず、小さな子どもに寄り添うあたたかさが感じられる。
さらに、決定的に違うところは、木が全てを子どもに与えてもうなんにもなくなってしまったとき、そのまさに切り株だけの木を作者が評して一言のシーンにて、
それで木はしあわせに ― なんてなれませんよね?(村上訳)
と、いうのと、
それで木はしあわせ ― でもそれはほんとかな?(本田訳)
と、いうのでは作者の主張具合が幾分違うと思う。村上訳の方がいくぶん尖っている、と思いませんか?
原文や作者の性格がどちらに寄っているかはよくわからないけれど、
しあわせのありやなしかに対して、具体的な発言は避ける方が日本の作品としてはベターである。
ただ、僕はこの「大きな木」という作品があまり好きではなかったのにも関わらず、
村上訳を読み、その解説を読むにつれ、なぜか作者の性格やスタイルについてある種の好意を抱いたのは確かで、
その意味で僕は、このどちらかといえば人気の出なそうな村上訳の「大きな木」の方が好きです。