僕の横に眠る妻は、ほんとうにほんとうの僕の妻であるだろうか。
夜中にふと、気になって鼻をくいっと捻ったり、唇や頬をつまんでみる。
むゃっ、と言って、妻はその手をうっとおしそうにはねのける。
当たり前だ。
気持ちよく眠っている鼻を突然くいっとされたら、誰だってうっとおしい。
僕がされたら、いらっ、とする。
でもしかし、その夜なぜか、自分がされたくないことを人にしてはいけません、という原則も、どこか釈然とせず、
妻が不快に思うにせよ、耳たぶをつまんでみたくなったのである。
ちょ…今何時よ。
ほぼ寝ぼけて彼女は言った。
時間については僕は知らない。なにせ暗いし、君を見てるから時間はわからない。
僕の返事をあっさりと無視して、状態を起こし、時計を鼻の先まで近づける彼女、
イチジ…ヨンジップン…。
なんなの?一体。眠れないならワタシを起こさずに勝手に起きてればいいじゃないの。いい?何度も言ってると思うけど、ワタシにとって眠ることは何よりも重要なの。生きてる喜びの全てが眠りにつまっているのよ。だから、眠ってるアタシにだけはゼッタイに触らないで、本気で。そういうわけでおやすみ。
といって、また眠りに溶けていった。
こんこんと眠る彼女は、彼女の王国に帰ってしまった。
眠りとは、夕暮れのように人にさよならを言う。
おやすみとは、さよなら。
僕は砂場に一人残されて、帰る場所を失っていた。
窓の月を眺める。
眠りの国は、月の国みたいなところだろうか。空気がないからモノクロームなの?
そんなこと思ってみたけど、寄る辺なし。
確かに、魔法の先生がむかしむか~し言ったように、
ある種の魔法は 本人に知れないようにそっとかけるのがよいことなのかもしれない。
けど先生!いくら魔法使いだっても、そんな夜は少しさびしいものなんですね。
僕は妻にキスをする。
妻は王国の中、天蓋つきのクイーンサイズベッドで、愛犬を抱いて眠っていたそうだ。
犬がね、アタシの眠りを邪魔をするのよ。
翌朝になって、そう話してくれた妻に、
それはほんとうに災難だったね。
と、僕は言った。
夜中にふと、気になって鼻をくいっと捻ったり、唇や頬をつまんでみる。
むゃっ、と言って、妻はその手をうっとおしそうにはねのける。
当たり前だ。
気持ちよく眠っている鼻を突然くいっとされたら、誰だってうっとおしい。
僕がされたら、いらっ、とする。
でもしかし、その夜なぜか、自分がされたくないことを人にしてはいけません、という原則も、どこか釈然とせず、
妻が不快に思うにせよ、耳たぶをつまんでみたくなったのである。
ちょ…今何時よ。
ほぼ寝ぼけて彼女は言った。
時間については僕は知らない。なにせ暗いし、君を見てるから時間はわからない。
僕の返事をあっさりと無視して、状態を起こし、時計を鼻の先まで近づける彼女、
イチジ…ヨンジップン…。
なんなの?一体。眠れないならワタシを起こさずに勝手に起きてればいいじゃないの。いい?何度も言ってると思うけど、ワタシにとって眠ることは何よりも重要なの。生きてる喜びの全てが眠りにつまっているのよ。だから、眠ってるアタシにだけはゼッタイに触らないで、本気で。そういうわけでおやすみ。
といって、また眠りに溶けていった。
こんこんと眠る彼女は、彼女の王国に帰ってしまった。
眠りとは、夕暮れのように人にさよならを言う。
おやすみとは、さよなら。
僕は砂場に一人残されて、帰る場所を失っていた。
窓の月を眺める。
眠りの国は、月の国みたいなところだろうか。空気がないからモノクロームなの?
そんなこと思ってみたけど、寄る辺なし。
確かに、魔法の先生がむかしむか~し言ったように、
ある種の魔法は 本人に知れないようにそっとかけるのがよいことなのかもしれない。
けど先生!いくら魔法使いだっても、そんな夜は少しさびしいものなんですね。
僕は妻にキスをする。
妻は王国の中、天蓋つきのクイーンサイズベッドで、愛犬を抱いて眠っていたそうだ。
犬がね、アタシの眠りを邪魔をするのよ。
翌朝になって、そう話してくれた妻に、
それはほんとうに災難だったね。
と、僕は言った。