在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Viva la libertà di Roberto Andò イタリア映画 自由万歳

2015-12-09 23:03:54 | 何故か突然イタリア映画
Viva la libertà 自由万歳
監督 ロベルト・アンド



Netflixの選択は決して多くはないが、なんとか見られる映画がないわけでもない。
「La grande bellezza (偉大なる美)」で一躍有名になったパオロ・ソレンティーノ。同じく彼の作品「Il Divo(帝王)」はかつてのイタリアの政界の帝王アンドレオッティを描いたものだが、どちらも主役をこなしているのはトーニ・セルヴィッロ。アンドレオッティは顔も姿カタチにかなり特徴があったが、それよりもいつも両手を合わせていじるクセが有名で、トーニはそれを見事にこなしていた。
そのトーニが、再び政治家として登場するのが「Viva la libertà(自由万歳)」。それも二役をこなしていてかなり面白い。

ところで、イタリアはどうして「Viva」(万歳)と付くタイトルが多いのか。日本では戦争や天皇制などを思い出させるというか、また、なんだか他につけるタイトルはなかったのか、という発想にもなるような気がしてそう多くはないと思うが、イタリアは結構多い。なんとなく安易な気がして個人的には好きではない。
そこで、トーニが出ているとは言ってもちょっと軽い印象のタイトルに、見るのを若干躊躇したが、そして、タイトル変えて~とも思ったのだが、見たらこれが面白かった。

イタリア第1党を率いる党首が、ある時プッツンきて雲隠れしてしまう。逃げた先は、かつての恋人のいるフランス。彼女は結婚していて、夫はちょっとした映画監督。子供も二人いて、彼女も映画の製作を手伝っている。
党首がいなくなって困ったのは秘書(この秘書役もかなりいい)。なんとかごまかそうとするのだが、それにも限度がある。というところで、党首には双子の兄弟がいることを思い出す。双子の兄弟は超頭のいい、哲学の大学教授。あまりに頭がいいため精神病院に入っていて、ちょうど出たところ。25年は会っていないという想定。
さて探し当てて会ってみると、瓜二つ(トー二の二役だから当たり前なのだが)。そこで、しばらく身代わりになってもらう。
雲隠れの党首は、プッツンくるくらいだからノイローゼ気味でいつも眉毛を寄せていて、くらーい感じ。方や、身代わりを楽しんでしまうハチャメチャ大学教授は、歌って踊って明るい。演説させれば国民までもが惚れ惚れ。この二役をこなしている。うまい。見事。
コメディだから最終的には元の鞘に戻るのだが、そこまでに至る元恋人とのストーリーなども瓜二つの双子という話を生かしているし、退屈する場面がない。
政治が絡んだ内容とはいえ重たくないし、ホロリとさせる場面もあり、演説の内容などはじっくり聴くと実はかなり理にかなっていて、考えさせたりもする。
台本作りが実にうまいと感心。

いつもの監督記者会見付き上映会で見たのではないのが残念。こういう映画の裏話を監督自身からぜひ聞きたいと思った。