こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『家蝿とカナリア』(ヘレン・マクロイ)

2016-02-02 | ミステリー、ファンタジー
ついいましがた、ひとひとりが殺されたばかりという現下の情勢では、ペットのカナリアの安全をこれほど懸念する
というのは、滑稽に感じられてもおかしくはなかった。けれども、笑うものはだれひとりいなかったし、どころか、
口もとをほころばせるものすらなかった。


 ミステリーを新開拓したいなあと評判を掘っていたら行き着いたひとり。創元社文庫50周年記念復刊で
手に入れられた。1940年代の作である。名探偵ウィリング博士…知らなかった~けど、精神分析医が探
偵って、当時は斬新だったのではないだろうか。丹念な描写も古きよき時代をとらえながら決して古びず重
くなりすぎず上品で、読みやすい。なんといっても深町眞理子さんの訳はやはり格調高い。(相沢真理子さ
んと間違えていたのはまた別の話^^;)
 舞台は豪華ながらも陰影が巧みに描きあげられた劇場、ひと癖ふた癖ある女優に俳優に演出家に出資者、
謎解きに与えられる素材も、刃物、カナリア、家蝿とまあ、興味は深まるばかり。しかし動物好きとしては
やっぱりカナリアとそれを愛でる刃物屋のじいちゃんにスポットを当ててキュートさに萌えてしまうのであ
る。非常に偏った読み方だ。だってミステリー好きなのに肝心の謎解きが苦手だから。犯人も最後の最後ま
で確信がもてなかったもんね。…理由聞いても「なんじゃそりゃ」だしな。現代医学では「ほんまかいな」
というところもあるのではなかろうか?
 ともあれ、どっぷりとこの世界にはまり、自分物描写と雰囲気を楽しめた。他の作品も読みたい。

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