こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『羆嵐』(吉村昭)

2018-01-23 | 現代小説
男たちは、自分たちのつつましい努力が自然の前に無力であることを感じた。

 久々にガツンとくるものが読みたくなって、ノンフィクションの名手、吉村昭先生。大昔、明治ものを読
み漁っていた時に小村寿太郎を描いた『ポーツマスの旗』を手にして以来かな〜。いやあ、ガツンときた!
怖い怖い。簡潔な文体で、ここまで想像力をかきたて恐怖心を高めることができるんだなと。
 話は、北海道で起こった獣害史上最大の惨劇といわれた苫前羆事件を描いたもの。毎年、各地でクマ被害
が出るたび、掲示板などで話題になっていた小説。やっと読めた。感想は「怖かった」のひとこと…て、子
どもか。だって。・・・まっくらな民家に骨を砕く音だけが響いてるんだよ。明かりをつけたら・・・これ
以上は書けねえ。
 別方面からふりしぼるならば、当時の北海道の開拓民のつましい生活ぶりに、当時の人々の苦労と根気と
いじらしさに胸が痛くなる。人間はいつからこんなに奢れる存在になったのかねえ。それでも、時折自然の
反撃にあって呆然と立ち尽くすことは未だにあるものな。「自然の前には無力」、言い尽くされている言葉
なんだけど、吉村氏の文脈で見ると震えながら共感するわ。
 そんななかで、ヒーロー登場のドラマチックさには本当に熱くなった。ぐぐれば三國連太郎以下、ものす
ごいキャストでドラマ化されていたではないの。昭和55年っ。見たし。
 続いて『破獄』を読み進めている。止まらない。しばらく吉村昭ブーム続きそう。