二十代の私には、やはりすべてが可能だという幻想があった。地図が見える
未来がやってくるなどということを信じてはいなかった。
二十代半ばの沢木氏が、三十代後半の小澤征爾にインタビューした時のエピソード。小澤は「三十までは
なんでもできると思っている。ところが三十すぎると自分に可能なことが、地図のようにはっきり見えてく
るんですよ」と語り、当時の沢木氏はその言葉を面白がる。なにせ、地図を持たずに世界を放浪する沢木だ
ったから。しかし、いざ自分が三十を過ぎてみて、その言葉が生々しく実感されてくるのだ。この短いエッ
セイは、「脳裏に浮かぶ地図を、どうしたら燃やし尽くせるのだろう」と締めくくられている。
約四半世紀ぶりに再読。思えば、当時私も二十代だった。きっかけははっきり覚えている。勤めていた会
社で課されていた朝礼スピーチで後輩がこの話をして、とても印象に残り、即座に本を手にしたのだ。「地
図を燃やす生き方って、かっこええやん」。確かに、なんだってできると信じていた時代だった。社会にも
まだまだ勢いがあったし自分も調子に乗っていたし(?)。それが、いつごろから?気がつけばぼんやりと
ではあるが地図をなぞるように生きているぞ。すでに人生を折り返し、もう冒険はできないというあきらめ
があり、なんとか平穏に日々を過ごしていければという妥協があり。挙句、地図が描けるだけでもラッキー
じゃないの?自分で燃やすどころでなく、無意識でなくしたり破けたりしちゃってるほうが怖いよ!という
のが辛い現実だったりもする。ああ、なんて夢のない。それでも、今よりはるかにがむしゃらだった若き日
々を思い出し、喝を入れられた気分。現在七十歳を越えた沢木氏はどう思うのか聞きたい。
再読しようと思ったきっかけは、新年早々に見た夢にある。手放して5年がたった、楽しい思い出がつま
ったマンションにしのびこんで、あれこれ取り戻そうと画策しているさなか、火事を出してしまうというと
んでもない悪夢。「不法侵入の上、出火!どうしよう、もう犯罪者や〜新聞に名前でるやん」とパニックに
なったところで目が覚めたのだけど・・・まずは過去への執着を捨てろ、過去を燃やせということだなと思
った時に、この表題を思い出した次第。処分しないでおいてよかった。
とらわれてはいけない過去と同時に、やはりいくつになっても決めつけてはいけない未来がある。(計画
と蓄えは大前提だけど)
明日は何ができるだろうと、生を終える瞬間までワクワクできる生き方がしたいと、あらためて思った。
未来がやってくるなどということを信じてはいなかった。
二十代半ばの沢木氏が、三十代後半の小澤征爾にインタビューした時のエピソード。小澤は「三十までは
なんでもできると思っている。ところが三十すぎると自分に可能なことが、地図のようにはっきり見えてく
るんですよ」と語り、当時の沢木氏はその言葉を面白がる。なにせ、地図を持たずに世界を放浪する沢木だ
ったから。しかし、いざ自分が三十を過ぎてみて、その言葉が生々しく実感されてくるのだ。この短いエッ
セイは、「脳裏に浮かぶ地図を、どうしたら燃やし尽くせるのだろう」と締めくくられている。
約四半世紀ぶりに再読。思えば、当時私も二十代だった。きっかけははっきり覚えている。勤めていた会
社で課されていた朝礼スピーチで後輩がこの話をして、とても印象に残り、即座に本を手にしたのだ。「地
図を燃やす生き方って、かっこええやん」。確かに、なんだってできると信じていた時代だった。社会にも
まだまだ勢いがあったし自分も調子に乗っていたし(?)。それが、いつごろから?気がつけばぼんやりと
ではあるが地図をなぞるように生きているぞ。すでに人生を折り返し、もう冒険はできないというあきらめ
があり、なんとか平穏に日々を過ごしていければという妥協があり。挙句、地図が描けるだけでもラッキー
じゃないの?自分で燃やすどころでなく、無意識でなくしたり破けたりしちゃってるほうが怖いよ!という
のが辛い現実だったりもする。ああ、なんて夢のない。それでも、今よりはるかにがむしゃらだった若き日
々を思い出し、喝を入れられた気分。現在七十歳を越えた沢木氏はどう思うのか聞きたい。
再読しようと思ったきっかけは、新年早々に見た夢にある。手放して5年がたった、楽しい思い出がつま
ったマンションにしのびこんで、あれこれ取り戻そうと画策しているさなか、火事を出してしまうというと
んでもない悪夢。「不法侵入の上、出火!どうしよう、もう犯罪者や〜新聞に名前でるやん」とパニックに
なったところで目が覚めたのだけど・・・まずは過去への執着を捨てろ、過去を燃やせということだなと思
った時に、この表題を思い出した次第。処分しないでおいてよかった。
とらわれてはいけない過去と同時に、やはりいくつになっても決めつけてはいけない未来がある。(計画
と蓄えは大前提だけど)
明日は何ができるだろうと、生を終える瞬間までワクワクできる生き方がしたいと、あらためて思った。