中国で高学歴志向拍車、大学統一入試の受験者5年連続最多…名門大卒業生でも厳しい就職難が背景
【北京=川瀬大介】中国で7日、大学統一入試「高考」が始まった。今年の受験生は前年比51万人増の1342万人と、5年連続して過去最多を更新した。若者の就職難が高学歴志向に拍車をかけ、清代までの官僚登用試験「科挙」になぞらえられる高考の競争環境は激化の一途をたどっている。
7日朝、北京中心部の試験会場では多くの保護者が受験生を見送るために集まった。「幸先の良いスタートを切る」という意味の四字熟語とかけて縁起が良いとされるチャイナドレスを着た母親も目立った。一人娘を見送りに来た父親(47)は「この1か月、娘は毎日3、4時間の睡眠で頑張ってきた。実力を出し切ってほしい」と祈るように話した。
中国では基本的に高考の点数によって大学の合否が決まる。就職では学歴が重視されるため高考は人生を左右する。2023年の大学や専門学校など高等教育への進学率は6割に達し、13年の2倍近くになる中、4月の学生を除いた都市部の若者の失業率は14・7%に上るなど高止まりする。名門大の卒業生でも就職が難しい。高校留年や浪人をしてより良い大学を選ぶ人が増えている。香港紙・明報は今年の再受験者は413万人に上ると伝えた。
共産党政権は不正防止に力を入れる。党序列6位の丁薛祥筆頭副首相は2日、「高考は多くの家庭や青年の前途命運に関係する」と強調し、試験の公正公平を担保するよう厳命した。教育省は会場に携帯電話を持ち込んだだけでカンニング行為と見なすと通知し、中国メディアによると北京や広東省ではAI(人工知能)に監視カメラの動画を分析させ、不正がないか確認する試みを導入した。
教育費の高騰も社会問題化している。民間調査研究機関「育●人口研究」が2月に出した報告書によると、中国で0〜17歳にかかる全国平均養育費は22年、53万8312元(約1160万円)で1人当たり国内総生産(GDP)の6・3倍に達した。親の負担が「産み控えの主因」になっていると指摘した。(●は女偏に「過」のつくり)