露「撤兵」表明後も各地で戦闘 ウクライナは警戒緩めず
ウクライナに侵攻したロシア軍は29日、露国防省が首都キエフ周辺など北部での軍事活動の縮小を表明したことを受け、一部部隊の撤収を開始した。ただ、その後も各地で戦闘や露軍の攻撃が報告されており、ウクライナ側は、露国防省の表明は油断を誘うための策略の可能性があるとして警戒を緩めていない。
ウクライナ大統領府は同日、ロシアとの停戦交渉で提案した内容を公式サイトで公表した。それによるとウクライナ側は、同国の安全が関係国によって保障されれば北大西洋条約機構(NATO)に加盟せず、国内に外国軍の基地も設置しない方針を示した。
また、安全の保障には国連常任理事国である米英仏中露のほか、ドイツ、イタリア、カナダ、トルコ、イスラエルなどが関与するとし、法的拘束力のある国際条約の締結を求めた。
ウクライナのゼレンスキー大統領は同日のビデオ声明で、露国防省がキエフ周辺などでの軍事活動の縮小を表明したことについて、「肯定的なシグナルだが、露軍の砲弾の破裂音を消すわけではない」と指摘。「ウクライナ人を滅ぼそうとしている国の言葉は信用できない」と述べた。
ウクライナ軍参謀本部も「露軍の撤収は部隊の交代に過ぎない。キエフ包囲を断念したと油断させるのが目的だ」と分析。ベラルーシではウクライナ国境への短距離弾道ミサイルの移動も確認されているという。
露国防省の表明に関しては、ロシア側の停戦交渉代表団のメジンスキー大統領補佐官も同日、「停戦を意味しない」との認識を示している。
米CNNテレビやウクライナメディアによると、キエフでは29日夕、倉庫が砲撃を受け、火災が発生した。同日深夜もキエフ郊外で大砲やロケット砲の発射音が聞こえたという。
南部ミコライフでは同日、州庁舎に露軍のミサイルが着弾。少なくとも12人が死亡した。西部フメリニツキー州の飛行場にもミサイル攻撃があり、燃料備蓄施設が破壊された。