お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

絵本で学ぶ アメリカの『常識』

2011-07-18 | my Anthology

手ざわりのやさしい自然の木を使った、幼児向け知恵遊びのオモチャ

小学校4年生でニューヨークから日本に戻った帰国子女の友だちが言うには、学校で一番困ったのが「ラジオ体操ができなかった」こと。2学年上のお姉ちゃんと毎朝オロオロ……。仲間同士のランチで「いまだから笑って言えるけど、ストレスで登校拒否になりそうだったのよ」と、今更ながら慨嘆することしきりでした。ラジオ体操と言えば、日本人なら誰でも、あの音楽とともに自然に体が動いてしまうほど記憶にしみ込んだ、まさに『国民的教養』ですが、それだけに、海外育ちでは絶対に身に付かない『常識』でもあります。

アメリカの幼稚園からそのまま日本の小学校に入学した娘が、最初の週に帰宅するなり言いました。「マミィ、クラスの子が誰でもできるのに、わたしだけできないことがあったの……」。「なぁに?」と聞いても説明ができないまま、私の手を引いて学校に行った娘が「これ!」と指差したのは、運動場に一定間隔で埋め込まれた自動車の古タイヤ。そう『タイヤとび』ができなかったというのです。結局、翌朝7時前に登校して練習したのを覚えています。

『常識』とは、人間が成長していく過程で自然に育まれるもので、そのコミュニティで育った人は誰でも知っていることです。ですから、そうした環境に他所からポンと”投げ込まれた”人は、さあ大変! 自分以外は誰でも知っていることなので、今さら「それな~に?」「どうして?」「どうやるの?」などと大きな声で尋ねるのも憚られ、ひそかに悩むことに。帰国子女ならずとも、オロオロ……する以外ありません。

張り切ってアメリカに留学した友人は、最初のクラスで「出席」を取る教授にどう答えたらいいのかわからず、他の学生たちの反応を必死で眺めて、つじつまをあわせたと語っていました。私は勤務先の大学で、教授/学生が日常的にファーストネームで呼び合う教室風景に驚愕しました(ブログ記事:『たかが呼び名、されど呼び名』)。学校だけではありません。始めての海外暮らしでは、ショッピングをしても(ブログ記事:『アフタークリスマスの恒例イベント』)、お昼にサンドイッチをオーダーしても(ブログ記事:『注文の多い料理店』)、ほんの”ちょっとした”ことで毎日のようにカルチャーショックを受けることになります。

大人でもこれだけのストレスを感じるわけですから、小さな子どもたちはさぞや。でも、子どもたちの順応力の高さに期待しつつ、そんな『常識』を学ぶ格好の手段のひとつが絵本です。実際、小さな子どものための絵本は、まさに常識の宝庫。短いテキストやきれいなイラストの中に、実は、その社会で生きて行くための基本的な知識・常識が満載されています。ひそかに悩んでいるお母さんも、読み聞かせながら「へえ~そうなんだ」と「大人の常識」を身につけられる、というおまけつき。カルチャーショック解消にも、絵本を使わない手はありません。

まず、どこの家庭にも必ず一冊はある『ABCの絵本』は、常識を学ぶ基本のテキストです。凝った絵本の必要はなく、『 Colors, ABC, Numbers』など、ごく一般的なもので十分。これらの子ども向けの特定の単語がアルファベットと一緒にすらすら言えると、けっこう日常会話に使えます。たとえば電話で単語の『綴り』を説明する時などに大いに役に立ちます。日本語では、「ナニヌネノのナです」なんて説明しますが、英語の場合には、"A as Apple"(アップルのA)というように説明します。こういうとき例に挙げられる単語は、たいていABCの絵本に出てくるようなもの。だから絵本に登場する単語を知っておくと便利です。日本人が発音しにくいのは、RとL、NとM、BとVなどですが、ちなみに[BはBoy]、[VはVictory]、[NはNancy]、[MはMary]、[RはRainbow]、[LはLion]あたりが一般的。こうやって説明しながら綴ると、相手に間違いなく伝わります。

さて、簡単な会話表現なのに、日本人は案外上手に使えない、必要十分なだけ言えていないのじゃないかと思われるのが"Thank you"と"Excuse me"です。アメリカでは"Thank you" を言う機会の多いことは驚くばかり。いくら言っても言い足りない感じがするくらいですが、頻繁に使われるのは”Excuse me"も同様。ほんのちょっと場所をあけてもらうときも、込み合った場所で人の体に触れてしまったときも、相手の言葉が聞き取れなかったときも"Excuse me"ですし、人前でくしゃみをしてしまったり、万一にもゲップが出てしまったら、それこそ間髪入れず"Excuse me!です。そして、大事なのは、"Excuse me"と言って、場所を空けてもらったら、必ず"Thank you"と結ぶこと。ここまでがセットです。最後の"Thank you"を言わないと、最初の"Excuse me"が「すみません、通してください」ではなく「どけ!どけ!」と言ったのと同じことになります。だから"Thank you"を言わないで行こうとすると、皮肉たっぷりに"You are welcome"なんて言われちゃうことも。くれぐれも要注意!です。小さな子どもには、こんな絵本を使った練習はいかがでしょうか。『Excuse Me!

アメリカ暮らしで困ったのは、難しい英語表現ができないことよりも、超簡単(なはずの)日常表現が簡単に口から出てこないことでした。たとえば子ども相手に「あ、そこのそれとって、あっちに置いてね」というようなことがすらすらっと言えないのです。でも、絵本を読んでいると、こういう日常会話がだんだん身についてきます。私ははじめは擬音語や擬態語がまったく言えず、往生しました。そう「キィッときしむ」とか「ぐちゃぐちゃぬかるんでいる」とか、「ぬるぬるする」とかが言えないのです。だから「これでもか!」って言うくらい擬音語、擬態語づくしの絵本に出会ったときは快哉を叫びました。『We're Going on a Bear Hunt』。リンゴの歯触りも、マシュマロの口当たりも表現できませんでしたが、これらはそもそも知らなかったと言った方が正確。こういう表現も、やはり絵本で覚えました。それから動物の鳴き声。これがまた日米で違うんです。でも、大丈夫。これは、まさに絵本の出番! ひよこは?猫は?犬は?牛は?----『Who Says Quack?』と懇切丁寧にひとつずつ教えてくれます。

『ラジオ体操』こそないけれど、アメリカにも国民的教養というべき、誰でも知っている歌や手遊びやゲームは実にたくさんあり、これらができないと、やっぱり幼稚園でオロオロ‥‥することになります。大人たちも、時にはふざけて子どものようなゲームをするので、職場でもときどき困惑することがあります。そんな中でも『Five Little Monkeys』はクラシックで、プリスクールのサークルタイムにも度々登場します。年中行事の歌で、とりわけ重要なのはクリスマス。クリスマスの歌は実にたくさんあり、それらはすべて国民的教養というべきアメリカの『常識』。パーティには欠かせませんので、おとなもシャンペンで酔っても歌えるようにしておきましょう。『Wee Sing for Christmas

アメリカ人はジョークが大好き! 子どものときからしょっちゅう冗談を言いあいます。しかし言わずもがな、ジョークも『常識』とか『教養』とかがないとなななか楽しめません。これも子ども向きの絵本参考書があります。『Knock, Knock, Who's There?』 こういユーモアのネタは、子どもと遊ぶときだけではなく、大人の会話にも案外と役に立ちます。でも、もちろん子どものだじゃれはアメリカでも実に無邪気。たとえば”See you later alligater!”とか、"Icecream makes everday Sundae (Sunday)" なんていう、他愛のない可愛いものが一般的です。だじゃれは、洋の東西を問わず、同音異義語を使った音遊び。このときに役に立つのはライム(韻)の知識です。これも日常使う程度なら絵本が一番。『Lyle Lyle Crocodile』はおススメの一冊。

絵本って、やっぱり国民的教養の書なんです。




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