お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

学校のダンスパーティ

2011-03-02 | with バイリンガル育児


子どもの学校行事にも『アメリカならでは‥‥』がけっこうあります。なかでも、日本でまったく経験がなくてとまどったのは、学校を会場にして開かれるダンスパーティでした。中学生になると、まだ大半が12歳の一年生からしょっちゅうダンスパーティがあるのです。もちろんディスコダンスです。

パーティはたいていは金曜日。夜8時くらいから夜中まで(!)。学校の体育館や屋内競技場などに遮光カーテンをめぐらせ、ミラーボールを回したりレーザー光線を走らせたり、とディスコまがいのセットをしつらえ、音楽もプロのディスクジョッキーや生演奏のバンドを雇ったりと本格的。食事は出ませんが、会場の外で子どもたちが持ち寄った飲み物や簡単なスナックが売られます。主催者は子どもたち。ですが、未成年どころか、まだほんとうに”子ども”ですから、お目付役に駆り出されたボランティアの保護者が要所要所に立ち会って監督します。また学校によっては、駐車場や渡り廊下などにプロのガードマンを配備するところもあります。

音楽はいろいろ。ラップやファンクにまじって、80年代風ロックや時には60年代のビートルズの『なつメロ』が流れたりもします。でも、パーティの最後にはちゃんとスローバラードが流れて本格的に照明が暗く落とされ、ラストダンスはチークで……大人のパーティ顔負けの演出が当然のごとく……とあっては、監督の親たちは内心やきもきさせられたり、逆に親がボランティアに出ている子どもはなんとなく居心地悪い思いをしたり……。

パーティ開催の趣旨はファンドレイジング(寄付金集め)。パーティ券を売りさばいて収入を得るのが目的です。もちろん、会場で売るスナックや飲み物の売り上げも寄付に組み入れます。1回のパーティ開催で数百ドルの売り上げになりますので、子どもとってはかなり高額の資金調達のチャンス。売り上げはクラスの活動資金にしたり、修学旅行の経費に充てたり(学年で貯金しておいて旅行費用を下げるために使います)、生徒会の活動費に充てたり、クラブの遠征費の足しにしたりします(広大なアメリカでは州内の移動だけでもかなり経費がかかります)。いずれにしても、お金の使い道はしごく真っ当で生真面目です。

一方、そんなわけで、どこの学校でもダンスパーティが開かれるので、しっかり売り上げるためには企画にもそれなりの戦略が必要になります。まずはスケジュール。人がたくさん集まりそうな週末を選ぶところから始めます。定期試験の時期はダメ。みんなが泊まりがけで出かけてしまう三連休の前の金曜日はダメ。スポーツのハイシーズンはダメなどなど……いろいろ制約があり、けっこう大変です。

人気スポットの週末はパーティラッシュで、同じ学校内でも施設の予約が奪い合いになることもあり、またよその学校とかち合うとお客さんの取り合いになってしまいます。だから、企画を立てるまでが既にひと仕事。たとえ同じ学校でも他学年やクラスとぶつからないように、また近隣の他の学校のパーティとも衝突しないように、事前にヒアリングや根回しをしてスケジュールを調整しあいます。このあたり、最近の子どものネットワーク力は大したものです。

次に大事なのは、人気者のディスクジョッキーやバンドの調達。大人のプロを雇うこともありますが(中学1年生が大人のディスクジョッキーを雇う?そうなんです!)、でも回りには芸達者が案外多くて、「友達のいとこ」とか「お姉さんのボーイフレンド」とかが玄人はだしのDJだったりして、プロより安い"知り合い料金"で引き受けてくれたり、時にはボランティアしてくれるので、コストを下げつつ、パーティをおもしろくするために駆け回ります。

当日会場で売る飲み物やスナックは、親に寄付を募ったり(実際には、ショッピングついでに「これ買っていい?」とねだる)、みんなで家から持ち寄ったり(買い置きのソーダやボトル水を持ち出す)。ドリンクやスナックは会場でひとつ1-2ドルで売りますので、原価がタダならかなりの収入になります。

パーティ券は5ー7ドル程度。値付けは売り上げに大きく影響するので工夫が必要です。友達ネットワークをとことん活用して売りさばきますが、時には寄付として保護者にまとめ買いしてもらい(ドリンク寄付の代わりにパーティ券を買い上げる、という感じ)、それを割引価格で友だちに売ったり、あげたり。こうなると、とにかく参加者を確保して、あとはドリンクやスナックで売り上げようという魂胆です。

さて、学校のさまざまな活動に資金がいるのはどこの子どももお互い様。だからどこの学校でも資金調達のパーティを開きます。そうなると、子どもたちもそれなりに義理堅く、自分のパーティに来てもらったら、次には相手のパーティに出かけて売り上げに協力することになり、お互いに行ったり来たり忙しいことになります。学校はたくさんあるので、いつもどこかしらでダンスパーティが開かれていますから、そうなると、親の目には子どもたちが毎週のように夜遅くまで遊び歩いているように映るのです。このあたりが、ティーンエイジャーになりたて(あるいはティーン目前)の子どもたちと、初めてティーンエイジャーを持つことになった不慣れな親との小競り合いの始まり……というのが世間一般の相場ではないかと思います。

先日、目下アメリカの世論を湧かせている「中国式の教育ママ Tiger Mom」についてご紹介しましたが(ブログ記事:
このごろの子育て論争』)、元祖タイガーマザーのChua教授に限らず、教育に厳しい中国人の家庭では、学校のダンスパーティへの参加を禁じているという例が稀ではなく、わたしの知り合いにもひとりならずそういう子どもたちがいました。でもアメリカの良いところは、『自由な選択』という考え方が徹底していることで、たとえダンスパーティに参加しなくても、その子の学校生活にはなんら問題も支障もありません。他の理由から参加しない子の場合も、もちろん、まったく同じです。





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