Play with Me
「わたしとあそんで(Play with Me)」は、マリー・ホール・エッツ(Marie Hall Ets)作・画のロングセラー(1976年刊行)。暖かなクリーム色を基調としたやさしい色使いと繊細なタッチのイラストで、眺めているだけで穏やかな気持ちになれる絵本です。大人になってから本屋さんで日本語版を見つけ、女の子の表情がすっかり気に入って「姪にプレゼントすればいいわ……」と自分に言い訳しながら買いました。当時の私は苦学生で、文庫以外の新刊本を買うにはちょっと口実が必要だったのです。
誰かと遊びたくて野原に出かけてきた女の子。
「バッタさん、あそびましょ!」
でも、捕まえようとすると、バッタは逃げてしまいます。
「カエルさん、あそびましょ!」
でも、捕まえようとすると、カエルは池に跳び込んでしまいます。
カメにも、リスにも、かけすにも、ウサギにも、ヘビにも、
女ん子は、みんなに「あそびましょ!」と声をかけますが、
でも、捕まえようとすると、みんな逃げてしまいます。
誰も遊んでくれない……。
女の子は、しかたなく、池のそばの石に腰掛けました。
すると、
バッタが戻ってきて、草の葉にとまりました。
カエルも戻ってきて、草むらにしゃがみました。
カメも、リスも、
みんなもどってきました!
それから、それから、
シカの赤ちゃんがやってきて
少女のほっぺたをなめたんです!
ほっぺをなめられている女の子の笑顔の幸せそうなこと。
ああ うれしい!
みんなが、わたしとあそんでくれる!
娘が、ひとことの英語もできないまま遊び友達がほしい一心でアメリカのプリスクールに通い始めたのは、英語どころか日本語さえもおぼつかない2歳になったばかりの春のことでした。でも、はじめての日に張り切って出かけることができたのは、単に何も分からなかったからにすぎません。(ブログ記事:『わたしとあそんで』) 2日、3日と過ぎ、やがて一週間がたつころには、言葉のわからないお友達の輪に入れてもらうむずしさが身にしみて……。ついに、家を出る時にも、プリスクールの入口でも、娘は毎朝べそをかくようになりました。
「だって、誰も遊んでくれないんだもん!」
娘の気持ちは痛いようにわかりました。まだ2歳ですから、本当にかわいそうでした。とはいえ、ここでやめて家に戻ったら、また元のお友達のいない暮らしで一日中退屈するだけです。なんとかならないものかしら?と悩みつつ、毎朝なだめながら連れて行っていました。
先生が抱きとってくださっても駄目。しがみつくので無理に下ろすこともできず、ほとほと困って、「もう連れて帰ろうか……」と諦めかけたある朝、トコトコと近づいて来た華奢でかわいらしい女の子が、私に抱きついている娘を見上げると、娘の手をそおっと握ってにっこりしました。
娘がつられてにっこりすると、その女の子が "Do you want to play with me?" と聞いてくれたのです! 言われたことが理解できたとはとうてい思えないのに、娘はそれまでベソをかいていたなんて信じられない程のハキハキした声で "Yes!" と答えると、私の腕から滑り降り、その子と手をつないだまま、もう振り返りもせずにブランコの方へ歩いていきました。
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