お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

マネーボール? アカデミックボール? やっぱりマネーボール!

2010-09-20 | from Silicon Valley


レイバーデーのウィークエンドはカレッジフットボールのシーズン開幕。各地の大学でリーグ初戦の火ぶたが切って落とされ、スタジアムで、スポーツバーで、はたまた自宅のテレビの前で、在校生も卒業生も徹底的に熱くなります。

アメリカではカレッジフットボールは一大ビジネス。人気があるというだけでなく、実際にしっかり稼いでくれる大学の”ドル箱”です。昨年度の雑誌 Forbs の評価によれば、アメリカで最も評価額が高いカレッジフットボール・チームはノートルダム大学。チームの評価額は100Mドルで、年間に稼ぎ出す総収入は46Mドル。第二位はジョージア大学で、チームの評価額は90Mドルで売上高は44Mドル。第三位はミシガン大学の評価額は85Mドルで、年間売上高は36Mドルです。私の住むベイエリアに立地するスタンフォード大学もUCバークレーもFoebsの上位20位までにはランクされていませんが、それでも毎年『億』の単位の収入を大学にもたらしていることは確実。

さて、こんなプロ顔負けの稼ぎ頭たる選手に対して「勉強しろ」なんて恐れ多くて誰にも言えない‥‥と考えられてきた節があります。実際、強い大学のフットボールチームほど選手たちの卒業率は低く、メジャーチームの新入生が卒業する割合は「2人に1人」と言われています。もちろん中には学生のうちにプロに転向する学生もいるのですが、やはりそれは少数派。カレッジスポーツの"花形"であるフットボール選手は「俺達フットボールをしに大学に入ったんだぜ!勉強なんてする必要あるの?」というわけで、あらゆる運動選手の中でとりわけ学業成績が悪くドロップアウトが多いという、ありがたくない評判をとってきました。でも、これじゃただのマネーボール。大学の名が泣きます。

そんな悪しき伝統を覆えそうと地道な指導を重ねてきたのがUCバークレーのテッドフォード監督です。監督就任と同時に「アカデミックゲーム」作戦を開始。選手一人一人にバインダーを持たせ、徹底した個人指導体制での学業管理システムを実施しました。選手は毎週アシスタントコーチと個人面談して、成績と計画の進捗をセルフマネジメントします。個人バインダーの章だてはフットボール用語で統一。「ラインナップ・カード」という章には日課から週ごとの計画さらには月間スケジュールまでが記入され、「スコアボード」の章には試験などの成績が全部記録されているという具合い。しかもスコアボードの記録には「実際の得点(earned score)」とともに「(とれるはずだった)見込み点/期待値(possible score)」の記入欄までがある、という徹底ぶり。成績が一定レベルに達しない選手はフットボールの成績に関係なく、チームからはずされることになっています。

テッドフォード監督の「アカデミックゲーム」作戦が初めて評価されたのは昨年。彼がリクルートし、指導してきた選手が初めて卒業年を迎えたのです。チームの入学者に対する卒業者比率は71%でした。これは、UCバークレーのフットボールチームの過去10年の入学者対卒業者比率を平均を48%も上回る好成績でした。監督の作戦成功!同校の男子学生全員の平均卒業者比率は87%。やがては全額平均まで到達できるのも夢じゃない!と期待させる成績でした。ただのマネーボールじゃない、まさにアカデミックボール。大学スポーツならではの真骨頂発揮です。

さて今年の初戦。バークレーの対戦相手は、同じカリフォルニア大学のデイビス校(UC Davis)。結果は52対3でバークレーの圧勝でした。実はデイビスとバークレーは所属リーグが違い、かなりの実力差があることは周知の事実。つまり、この対戦は闘う前からバークレーの勝ちが目に見えていた試合だったといえます。

バークレーがリーグ違いのデイビスを初戦の相手に選んだのは、実は「予算不足に苦しむカリフォルニア大学同士が助け合うための工夫」と、バークレーの運動部ディレクターは説明しています。というのも、単独では多数の観客を集められないデイビス校もバークレーと対戦すれば高額のシェア収入を受け取ることができるからです。

「どうせ収入をシェアするのなら、同じ州立大学同士で助け合うべきではないかと考えたのです。なにしろカリフォルニア州は大学に割く予算がありませんから」とディレクター。実際、デイビス校はこの対戦に遠征するだけで30万ドルを受け取れることになっていました。そのほかにもチケットの売り上げやテレビ、ラジオの放映権からの収入のシェア分もデイビスに持ち帰ることができるのですから、やはり大学にとってはドル箱でしょう。

バークレー対デイビスのゲームが動員した観客は58,040人でした。入場料そのほかで一人平均$30程度を使ったとごく低めに見積もっても、スタジアムには約1.7Mドルのお金が入ったことになります。これにテレビの放映権、ラジオの放送権からの収入もあり、スタジアムのスポンサーからの広告収入もあります。もちろん大学のギフトショップでは例年通り「今年の新柄」のスウェットやTシャツがたくさん売れました。大学に限らず、スタジアムのあるバークレーの街にも駐車場(ゲームの日は通常より高い価格になります)、飲食店、ホテル等に多額のお金が落ちましたから、経済効果は莫大なのです。

一方、あおりを食ってか、同じ土曜日にバークレーの隣町のオークランドで行われたプロ野球チームのオークランドA's(日本でもベストセラ―になったルイスの本『マネーボール』で一躍有名になったチームです)の試合は、対ロサンジェルス・エンジェルズでしたが、観客動員数は14,227人にとどまりました。

ちなみに、同じ日にサンノゼ州立大学ははるかアラバマまで遠征して昨年度全米チャンピオンであったアラバマ大学と対戦しました。アラバマ大学が動員した観客数は108,220人!スタジアムの大きさが違うとはいえ、さすが王者の貫録!です。試合は大方の予想通りアラバマ大学の勝利で、サンノゼ州立大学は残念ながら試合には敗れましたが、しかし選手はかなりの稼ぎを大学に持ちかえったことは間違いありません。

かくのごとく、カレッジフットボールは人気も稼ぎも『玄人はだし』。アカデミックボールではありますが、やはり、しっかりマネーボールでもあります。





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