
メーカーはアリスソフト。
97年発売の『アリスの館4.5.6』に収録。のちに廉価版が単品で発売。
人の血肉と精気を喰らい、幾百年を生きる女郎蜘蛛・比良坂初音。彼女はいま、宿敵との戦いにより激しく傷ついていた。同じく傷ついた宿敵もまた、傷が癒えれば彼女を再び追ってくるだろう。
初音はたどりついた学園に巣を張り、人に化け、表向きは転校生としてふるまい、裏では人を惑わし操り喰らう。すべては、来るべき宿敵との戦いのために……
プレイ時間は三時間ほど。ゆっくりやればその倍くらいか。
ジャンルで云うなら、学園伝奇百合バトル?。
発売されたのは、もう十年も前になるのか。
エロゲー業界最古参にして最大手の一角、アリスソフト。その数多の作品群の中でも、ノベルゲームの最高峰として名高い本作『アトラク=ナクア』をようやくプレイ。
結果としては、なるほど、噂にたがわぬ完成度。十年前のものとはとても思えない。
97年当時、アリスソフトは前年末の『鬼畜王ランス』の大ヒットもあって、まさに西の横綱であった。東の横綱『同級生』シリーズのelfとともに、完全に業界に君臨していたといっていい。
その独走に待ったをかけたのがLeafだ。Leafは『雫』『痕』という、サウンドノベルわ踏襲したシステムのビジュアルノベルで固定ファンをつかみ、そして97年春に発売されたビジュアルノベルシリーズ第三弾『To Heart』で空前の大ヒットを飛ばす。
それに対抗してか触発されたか、『アトラク=ナクア』はLeafの得手とするビジュアルノベルの形式で、『痕』と同じ伝奇物で、しかも単品ではなくファンディスクの同根作品として発表された。
その姿勢からは「うちは本気じゃなくてもこれくらいの作品を作れるんですよ」という王者の余裕すら感じられる。
……まあ、もっとも、この後のKey作品の大ヒットによる泣きゲー・萌えゲーの台頭、続く葉鍵時代の到来、何よりアリスソフトとelfの長期不振による自滅のため、すっかりそんな貫禄はなくなってしまったわけだが。
ま、だから本作はアリスソフトの最後の横綱相撲だ。
まず面白いのは、主人公の初音が化け物である点だ。
人を惑わし喰らう彼女の視点と、狩られる獲物である人々の視点を交互に描くことによって、獲物を追い詰める初音の恐ろしさと美しさと人の心の弱さが立体的に浮き彫りになっていくのがうまい。
この手法によって物語は最後までぶれることなく、化け物である初音を丁寧に掘り下げている。
倣岸で、怠惰で、嗜虐的で、気まぐれで、強く、弱く、美しく、醜く、長命で、儚い、そんな善悪を超越した人外としての初音の魅力をしっりと描いている。
狩る者と狩られる者を描いた、ややもすると単純に感じられる展開だが、序盤から積み重ねたささやかな伏線が、終盤の一点にうまく集約するのが鮮やか。たいした騙してはないのだが、最小の手間で最大の効果をあげている。
システム・グラフィックはさすがに今やると古臭さを感じるが、雰囲気のよさはいささかも減じられてはいない。プレイ時間の適度な短さも含め、よくできた短編作品だ。
しかし欲をいうなら、何か一つ、短編らしい突き抜けた特徴が欲しかった。
百合が好き。姉さまと呼びたい。セーラー服の美少女にだったら食べられてもいい。そん人には是非お薦め。
97年発売の『アリスの館4.5.6』に収録。のちに廉価版が単品で発売。
人の血肉と精気を喰らい、幾百年を生きる女郎蜘蛛・比良坂初音。彼女はいま、宿敵との戦いにより激しく傷ついていた。同じく傷ついた宿敵もまた、傷が癒えれば彼女を再び追ってくるだろう。
初音はたどりついた学園に巣を張り、人に化け、表向きは転校生としてふるまい、裏では人を惑わし操り喰らう。すべては、来るべき宿敵との戦いのために……
プレイ時間は三時間ほど。ゆっくりやればその倍くらいか。
ジャンルで云うなら、学園伝奇百合バトル?。
発売されたのは、もう十年も前になるのか。
エロゲー業界最古参にして最大手の一角、アリスソフト。その数多の作品群の中でも、ノベルゲームの最高峰として名高い本作『アトラク=ナクア』をようやくプレイ。
結果としては、なるほど、噂にたがわぬ完成度。十年前のものとはとても思えない。
97年当時、アリスソフトは前年末の『鬼畜王ランス』の大ヒットもあって、まさに西の横綱であった。東の横綱『同級生』シリーズのelfとともに、完全に業界に君臨していたといっていい。
その独走に待ったをかけたのがLeafだ。Leafは『雫』『痕』という、サウンドノベルわ踏襲したシステムのビジュアルノベルで固定ファンをつかみ、そして97年春に発売されたビジュアルノベルシリーズ第三弾『To Heart』で空前の大ヒットを飛ばす。
それに対抗してか触発されたか、『アトラク=ナクア』はLeafの得手とするビジュアルノベルの形式で、『痕』と同じ伝奇物で、しかも単品ではなくファンディスクの同根作品として発表された。
その姿勢からは「うちは本気じゃなくてもこれくらいの作品を作れるんですよ」という王者の余裕すら感じられる。
……まあ、もっとも、この後のKey作品の大ヒットによる泣きゲー・萌えゲーの台頭、続く葉鍵時代の到来、何よりアリスソフトとelfの長期不振による自滅のため、すっかりそんな貫禄はなくなってしまったわけだが。
ま、だから本作はアリスソフトの最後の横綱相撲だ。
まず面白いのは、主人公の初音が化け物である点だ。
人を惑わし喰らう彼女の視点と、狩られる獲物である人々の視点を交互に描くことによって、獲物を追い詰める初音の恐ろしさと美しさと人の心の弱さが立体的に浮き彫りになっていくのがうまい。
この手法によって物語は最後までぶれることなく、化け物である初音を丁寧に掘り下げている。
倣岸で、怠惰で、嗜虐的で、気まぐれで、強く、弱く、美しく、醜く、長命で、儚い、そんな善悪を超越した人外としての初音の魅力をしっりと描いている。
狩る者と狩られる者を描いた、ややもすると単純に感じられる展開だが、序盤から積み重ねたささやかな伏線が、終盤の一点にうまく集約するのが鮮やか。たいした騙してはないのだが、最小の手間で最大の効果をあげている。
システム・グラフィックはさすがに今やると古臭さを感じるが、雰囲気のよさはいささかも減じられてはいない。プレイ時間の適度な短さも含め、よくできた短編作品だ。
しかし欲をいうなら、何か一つ、短編らしい突き抜けた特徴が欲しかった。
百合が好き。姉さまと呼びたい。セーラー服の美少女にだったら食べられてもいい。そん人には是非お薦め。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます