![]() | 忍法忠臣蔵―山田風太郎忍法帖〈2〉 (講談社文庫)山田 風太郎講談社このアイテムの詳細を見る |
あらすじ
元禄赤穂事件……いわゆる忠臣蔵の裏側では忍者同士の争いがあった。
討ち入りをもくろむ赤穂浪士たちを暗殺しようと、上杉家は忍者を差し向けた。
だが、上杉家の家老は、いまここで赤穂浪士たちが暗殺されれば世の疑いが上杉家に向けられるであろうことを察し、暗殺阻止のために五人のくのいちを差し向けた。
暗殺ではなく色によって赤穂浪士を堕落させようと目論むくのいちであったが、先に差し向けられた暗殺者たちと争うことになる。
忠義と女が大嫌いなはぐれ者の忍者・無明鋼太郎はくのいちの監視役となり、争いを見届けることになるのだが……
史実において、赤穂浪士たちは決起までに何人かが脱落しているのだが、その脱落の陰には忍者の暗闘があった、という設定がまずしびれる。史実の合間、というのをうまいこと狙っているものだ。
さらに赤穂浪士のダメッぷりと、主君の迷惑具合、将軍家の気まぐれといいかげんさ、家老の苛烈な忠義、そういった人間臭すぎる政治模様がたまらない。同藩で暗殺部隊と暗殺阻止部隊が出動していて、それが浅野家でも吉良家でもないって、どんだけ錯綜しているんだよ。
さらに忠臣蔵を題にとっておきながら、いや、だからこそ、徹底して忠義というものの欺瞞、迷惑さ、気持ち悪さを描ききっているところが素晴らしい。
忠義のもろさ、忠義の生んだ狂気、忠義の名のもとにでうちすてられる人々の命、人生。そういったものを執拗なまでに描いている。
ここまで真っ向から忠臣蔵を否定しておきながら、最後にはしっかり史実につなげていく構成力の巧みさあざとさにはただただ脱帽してしまう。
もちろん、いつもの荒唐無稽な忍法合戦も素晴らしいし、くのいちメインなのでエログロ展開多めでサービスもばっちり。単なる娯楽物としても十二分なクオリティを保っている。
難を云うなら、主人公か。
惚れた女が玉の輿に乗ろうとしたから女嫌いになってみんなぶっ殺す、という逆ギレする現代の若者みたいな性格でありながら、狂言回してきな役割のため理不尽なほどの無敵っぷりで皆殺ししまくる主人公が、もうなんだコイツとしかいいようがない。なにをしたいのか読者にも本人にもわからない。やばい。
あまりにもひどいのでちょっと魅力的ですらある。
とにかく赤穂浪士を題にした作品として、あまりにも異色であるがあまりにも完成度の高い一作。
むしろ忠臣蔵好きならこっちも必読だろと云いたくなる作品。
忍法帖と歴史物の融合という点で理想的過ぎる。
常に弱者の視点、はぐれ者の視点、ダメ人間の視点で物事をとらえる風太郎史観がたまらない、たまらないんだZE!
web拍手を送る
ずっと放置かと思ったら、怒濤の更新。
うな様ファンとしては、嬉しいですけどね。
『忍法忠臣蔵』は、忍法帖の中では好きな作品なんですが、読んだのはだいぶ前なので、細かい内容は覚えてなくて……主人公に萌えた記憶しかないんですが……もしかして、私、趣味悪い?
同じように、柳生十兵衛萌えゆえに『魔界転生』好きなんですが、やっぱり趣味悪いんだろうか……
あと、はぐれ者、ダメ人間視点の風太郎稗史にハマったのなら、明治ものも読むべきだと思うんですよ。
というわけで今後の更新に期待しています。
風太郎の主人公はダメすぎてむしろ魅力的なので、萌えればいいと思うよ!
明治ものは、警視庁草紙の上巻だけ手に入って下巻が手に入らないんだ死ねえええ!
そんな感じで今日も更新しませんね!うなー!