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語り得ぬ世界

現実逃避の発展場 Second Impact
since 2014, The First Departure:2005

湘南をわたる風_10

2006-12-11 08:07:26 | 湘南

700系のぞみ155号での珍の席は指定席、2人掛けの窓側。ホームで買ったミネラル水のペットボトルを持って、列車到着とともに乗り込んだ珍は、すぐに席を見つけ、読みかけの宮部みゆき「模倣犯」第3巻とペットボトル以外の荷物を棚に置き、座席に腰かけた。

座席のもう一方の主はなかなか現れなかったが、まあどうせ出張帰りのオッサンやろし、大して気にも留めず眠気が襲うまでの貴重な時間で本を読み始めた。

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すると、「東京ばな奈」が覗くおみやげの袋とバッグを抱えた女の子がやってきて、俺の隣に座った。手荷物はそのまま足元に置いた。後から思えばこのとき「お荷物を上げましょうか?」と聞いてあげればよかったと後悔。これを言い出すタイミングは席に着いた瞬間しかない。それも相手が上げないと確信できるその一瞬を逃すともう変態の領域に一歩近づき、2時間半ずっと警戒されてしまう。

さて、彼女はというと位置的に顔はよく見えないし、ましてや顔を覗き込むこともできないが、かなり若そうで上品なブラウンの髪から垣間見えるだけでもかわいい雰囲気が伝わってきた。しかも脱いだコートの下は、細身なのに思いのほかグラマーでかなりのミニスカート。これは僥倖。いや、神が今回の旅で珍に与えた2度目の試練なのか…。荷物を上げなかった後悔を、俺の目の前で両手を万歳状態で荷物を上げる彼女のイメージ画像が打ち消してくれた。ただし、結局荷物は床に置いたのでそれはありえなかったわけだが。

ところが、彼女は脱いだ大きめのコートをささっと膝にかけたので、ミニスカの露出は約2秒ほど。おぇーッ!警戒されたか?そんなはずはないのに…。ちなみにこちらはずっと本を読んでる態勢なので顔は文庫本に向いたままで、目と意識のセンサーを最大効率で左横の彼女に振り向けていた。自信と確信を持って簡単に悟られるはずはない。

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のぞみが発車。彼女は前の座席に付いているテーブルを起こした。駅弁でも食べるのかと思ったが、定期入れと携帯電話を置いただけであった。駅弁食べるとこ見たかった…と一瞬思ったが、よくよく考えたら、こんなんされたらこっちがトイレに行くとき困る。ん?待てよ…これは会話のきっかけになる。
「すいません、通していただけますか?」
「あ、すいません」
とトイレに立った振りをして車内販売で飲み物を買ってくる。
「よろしかったらどうぞ」
「あら、ありがとうございます」
「東京へはお仕事ですか?」
「いえ、友だちの結婚式で…。あなたは?」
「はい、仕事のあと一日休みを取って湘南方面へ…」
とか何とか言って、デジカメ画像を見せるという流れ。

ただ、現実の彼女はまず携帯でメールをしだした。送信したら携帯電話はテーブルに。置いても何度も手に取りチェックしていた。その後返事が着信したのかどうか不明だが、またメールをし始めた。イマ風といえばイマ風な女の子ではある。

こちらは本を読んでいたが(センサー効率を高めると、リソース不足で読書効率が下がり同じ行を読んだりして停滞するのだが)、彼女は携帯電話を手放し、コートを少し上に引っ張り上げて、寝る態勢に入った。うひょー、膝が出た。
(つづく)

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湘南をわたる風_08

2006-12-09 11:08:39 | 湘南

江ノ島駅は海から離れた町中にあって、藤沢方面に向かって次の駅、湘南海岸公園へは路面電車となる。撮影ポイントは豊富ながら、今回はやはり時間が足らない。

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江ノ島駅に向かう鎌倉行き。
京阪京津線を思い出す。三条から蹴上に向かって走る路面電車って風情があったのに今は地下鉄やもんなぁ。
ところで、薄暮のなか、ここで撮影するために江ノ電が来るのをずっと待っててんけど、これが待ってるとなかなか来ない(笑)目の前をやたら短いスカートの女子高生が自転車で駆け抜けていくのに、カメラ片手にこの付近をうろうろするというのも不審者っぽく見られそうで困った(苦笑)

女子高生といえば、関東の女子高生のスカートの短さはマニアの間では有名やけど(笑)膝上で計るのではなく、股下で計るくらい短い。股下3cm。てゆーか、短すぎるやろ、オイ。江ノ電でも集団で乗ってきた女子高生のスカートの短さといったら…。大阪でもたまにえっらい短いスカートの女子高生を京阪電車でも見かけるけど、絶対数は少ない。でも関東は集団。目のやり場に困るけど、たまに普通の丈の女の子(それでも短めやけど)を見ると逆にホッとするで(笑)

さて、三脚がないから日が暮れるともう撮影はできない。江ノ島を離れ、最後の目的地、七里ケ浜へ行くと、江ノ島を臨む七里ケ浜が湘南有数のサンセット・ポイント。平日にも関わらずカメラオヤジやカップルがいっぱい。サンセットを撮るにはもう遅かったけど、ここはフォトアルバムでゆっくりと。

その後藤沢に戻って晩ごはん。藤沢駅前って食べるとこないねぇ。昼ごはんも困ったけど、夜はもっと困った。あちこち探すもこれというところがなく、結局昼と同じ小田急百貨店のレストラン街の居酒屋へ。

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湘南名物、生しらすで一杯。つるっとした食感であっさりしてた。ビールを飲んでてんけど、日本酒の方がよかったかもね。
そして藤沢駅からJR東海道線で東京駅へ。いよいよ旅の終わり。
(つづく)

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湘南をわたる風_07

2006-12-08 08:27:26 | 湘南

さすがに困ってしまった。
「カナコさん、何か事情がおありのようですけど、僕でよかったら聞かせてもらえませんか?」
わざと関西弁のイントネーションを強調して話しかける。
「ありがとう…。もう大丈夫です…」
「嘘言うたらあきません。話したら楽になりますよ」
「いえ、もういいんです。珍之助さんと一緒にいたら楽になりました」
「…ならええんですが…」
「関西弁(笑)」
「え?」
「いいですね、関西弁」
「まったりしてるでしょ?」
「まったり?」
「のんびりというか、穏やかというか、ふわっとした感じですね。元々は京都弁で“とろんと穏やかな口当たり”の食感を言うんですよ」
「へぇ、いい響きですね」
「一つ覚えましたね?(笑)」
「はい(笑)」
やっと笑顔が戻ってきた。

「珍之助さんってやさしいんですね」
しっかり腕を組んで俺を見つめる。
「え?いや…そんなことありません」
じっと見つめる視線を慌ててかわそうとするが、それができない。
「大阪に帰らないでって言ったら?」
彼女は真顔で言ってきた。
「あ、いや…それは…」
「うふふ、困ってる(笑)」
そう言って、すっと視線を外し笑った。
「おちょくったらあきません」
「さあ、どうかしらね(笑)」
どう反応していいのかわからないのでとりあえずトイレにでも行こうと思った。
「あ、お手洗いに行ってきます。待っててください」
頷く彼女をベンチに残し展望台の根元にあるトイレに行った。

そしてほどなくして帰ってくるとベンチに彼女の姿はなかった。
最初は彼女もトイレに立ったのかと思ったが、5分しても戻ってこないので、さすがに不安になってきた。何気なく自身の周辺を見ると、木目のベンチに口紅らしき赤色で『ありがとう』と書いてあった。それは彼女が書いたものかどうかはわからない。そっと指でなぞってみると、指先に上品な赤色が付いた。

何となく複雑な気分でベンチを離れ、コッキング苑を出た。そのままエスカー横の石の階段から下り始めると、やがて神社の鳥居が見えてきた。

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あの涙は何だったのか、そもそも彼女は何者で、どうしてここに来たのか、結局何もわからずじまいだった。失恋による感傷旅行というのが妥当な気もするが、そんな単純なことなのか、それとももっと複雑なのか、今となってはわからない。まさか狐?鳥居を見てふとそう思ったが、さもありなん。ただ、何となく江ノ島にふさわしい出来事だったような気はする。惜しい気もするが…トイレに行かなければどうなっていたのか…。

気を取り直して階段を下り、もと来た道を重い足取りで駅方面に戻って行った。
今日はよく歩いている。潮風に湿り気が出てきた。日暮れが近い。七里ケ浜に行く前に江ノ電の写真を撮らねば。
(つづく)

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湘南をわたる風_06

2006-12-07 08:33:53 | 湘南

彼女は俺の胸に顔を埋め、そして彼女の手からGジャンが滑り落ちた。空いた手は俺の背中をしっかり掴んでいた。
エレベータの中はひたすら静かであった。
ここで何か話しかけたり、動いたりすると、この繊細な均衡を崩しそうで恐い。
「…」黙って彼女の肩をそっと抱き、海を見下ろし続けた。

やがて足に感じる制動とともに、「ピン」と1階到着を告げる無慈悲な機械音が箱の中に響き、彼女は俺の肩から離れた。俺は彼女のGジャンを拾う。ドアが開くと、大声で知り合いらしき人物の陰口を言っているカップル-二十歳そこそこに見える厚化粧の女と腕を組んだ30代半ばらしき男-と入れ違って外に出た。ここに来たときと景色が違って見える気がする。

「あの…」
こちらはこのまま無言というわけにもいかず、会話再開のきっかけを探ろうと話しかけてみた。一方、彼女は少し照れくさそうに目を合わさず「ごめんなさい」と言って腕を絡めてきた。
「…」再び会話の接穂を失ってしまった。

「座りませんか?」
少し早口ですぐ近くのベンチを指差しながら言った。
「はい」
彼女は素直に応じ、二人してベンチに腰かけた。
「あ、猫…。こっちを見てる」
「ほんまや」

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「あ、関西弁。うふふふ」
「思わず出てしまいました(笑)」
「関西弁で喋るって言いましたよね?(笑)」
「そうでしたね(笑)」
風が吹き抜けた。体感温度はまだ高い。

「さっきはごめんなさい」
「いえ…」
エレベータの中のことを思い出し、動悸が早くなりそうな気がした。
「あ、赤くなってる(笑)」
そう言って彼女はいたずらっぽく、でも柔らかく優しげに笑った。
「そんなことありません」
そのときまだ自分が彼女のGジャンを持ってることに気づいた。
「これ、お返ししておきます」
「あ、すいません」
今度は彼女がGジャンを落としたときのことを思い出したのか、少し照れくさそうにしてそれを受け取った。
「顔が赤いですよ(笑)」
「え?もぉ…いじわるですね(笑)」
彼女はそう言って笑いながら腕を組み、頭を俺の左肩に預けてきた。
香水がほのかに匂う。
そのとき再び風が木々の間を渡っていった。香水の香りは一瞬途切れたが、またその上品な匂いが漂い、そして空気に溶けていった。
喋りだすと香水の染み込んだ空気が粉々に割れそうに思え、再び沈黙せざるをえなかったが、彼女も喋りだすことなく黙ってそのまま動かなかった。
しかし、かすかに彼女が震えていることが肩から伝わり、そっと顔を見ると髪に隠れつつも頬を涙が伝わっていた。
(つづく)

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湘南をわたる風_05

2006-12-06 08:22:43 | 湘南

陽が傾いてきている。風は心地いい。
「湘南の風って、潮気が少ないように感じませんか?」
彼女は海を見ながら聞いてきた。
「そういえば…潮風特有のべたついた感じがしない…」
「気象条件がそうさせているのでしょうけど、爽やかですよね」
「うん…」

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「珍之助さんはどうして湘南に?」
「江ノ電に乗りたくて…」
まさか初対面の人にブログのことは言えまい。
「昨日仕事で東京に来たんですが、今日はそのまま休みをもらってここまで来ました」
「江ノ電か…おもちゃみたいですよね」
「屋根を掠め路地を縫うように走り、やがて海のそばを走る。こんなロケーションは滅多にないですからね」
「気に入りました?」
「もちろん。そしてカナコさんとも知り合えましたし(笑)」
「お上手ね。うふふ」
今日は富士山が見えないのが惜しいなど俺たちはデッキを一周しながら会話を続け、階下の屋内デッキに下りることにした。

「ほら、写真もこんなに撮りました」
彼女にデジカメのモニターで画像を見せた。
「あ、鎌倉高校前ですね、これ」
モニター画面を覗き込みながら嬉しそうに声をあげた。
「写真なんかではよく見ましたけど、実物もそのままのイメージで味のある駅ですよね。目の前は海。日常的に利用している高校生が羨ましい。僕なんかこんな駅なら電車に乗らずにずっと居たくなります」
「いまの高校生は意識していないでしょうけどね(笑)」
「高校生も10年すればあの駅の良さがわかるでしょう。それで『もっと味わっておけばよかった』と後悔(笑)」
「青春は後悔の積み重ねですからね(笑)」
彼女はそう言って端正な顔をこちらに向けた。モニターを覗き込んでいたので、すごく近かったからまたどぎまぎしたが、今度はしっかりと視線を受け止めた。
「カナコさんも後悔の積み重ねをした?」
「それはそれはいっぱい(笑)珍之助さんは?」
「毎日が後悔の連続(笑)後悔することを恐れて、しないことでまた後悔(笑)それなら、して後悔するほうがマシと遅ればせながら気づきました。くよくよしても仕方ないなと。すでに高校は卒業していましたけど(笑)」
「わたしも後悔ばかり。前向きな珍之助さんが羨ましいわ。わたしは今でも…こうして逃げてるから」
「え?」
「ううん、なんでもない…」
彼女はため息まじりにそうつぶやいた。

次の鎌倉高校前駅の画像を映す。踏切から駅を写したもの。
「わたしもここからの眺めは好きです。この時期はちょうど駅の柱に電飾をつけたりしていますよ」
「へえ…あ、そういえば柱にコードの様なものが巻いてあったな…。でもこの駅には電飾より蛍光灯のままのほうが鄙びた感じでいいと思いますけど」
「そうね…夜は寂しいから電飾もいいかと思ったけど、そう言われると駅の雰囲気はそんな感じかな」
顔と顔の距離が近い。息遣いが聞こえる距離。香水が漂い、何となく鼓動が早まってきたような気がする。

「あら、これは由比ケ浜ね。人のシルエット?いい写真…」
「ありがとう。今回の旅は写真をいっぱい撮ることも目的の一つなんです」
「写真がご趣味なのかしら?」
「趣味とまではいきませんが、何かしら思い出を残すにはやはり映像が一番かなと。その瞬間をこうして切り取って永遠に残せるわけですから」
「確かに」と彼女もうなずいた。
カナコさんを撮っていいですか?という言葉が喉元までせり上がってきたが、それではあまりに馴れ馴れしいから言葉をそのまま飲み込んだ。

陽がさらに傾いてきた。
「そろそろ下りませんか?」
「はい」
「この後どうされるんですか?」
と何気なく聞いてから、口説き始めてるように受け取られたかなと思ってしまった。警戒されるのは心外だが、少し軽率ではあった。
「東京に戻ります」
俺の目を見ずにそう言った。そりゃそうだろう。
デッキの中のエレベータ口に立つと、ほどなく箱が上がってきた。俺たちは揃ってそのまま乗り込んだ。

下りのエレベータは二人きりだった。
シースルーのエレベータは速度も遅め。二人無言で海を見ていた。
すると彼女が俺の肩にもたれかかってきた。
(つづく)

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湘南をわたる風_04

2006-12-05 08:34:39 | 湘南

「あの…江ノ電でもご一緒でしたよね?」
不審がられてもいけないので、俺は努めて冷静に話しかけた。
「七里ケ浜から乗るときにお見かけしましたよね」
えくぼが印象的な彼女は愛想よくそう答えてくれた。
「湘南観光ですか?」
「はい。あなたも?」
「そうです。大阪から来ました。あなたは?」
「東京です。そういえば関西弁のイントネーションですね」
「大阪に何かご縁でも?」
「いえ、大阪は行ったことがありません。でも関西弁の響きってやわらかくて好きなんです」
「それじゃ、関西弁で喋りましょか?(笑)」
「そうしてください(笑)」

「エスカーで展望台まで行かれるんですか?」
「そのつもりですが、特にあてがあるわけでもなくて…」
「よろしければ展望台までご一緒しませんか?」
「はい、喜んで(笑)」
俺と彼女はエスカーのステップに乗り込んだ。
俺が右側で彼女が左側。

「名乗り遅れました。僕は珍之助といいます」
そう言って俺はペコリと頭を下げた。
「わたしはカナコです」
そう言って彼女はにっこり笑った。品のある笑顔も印象的である。
「今日は暑いぐらいですね?」
「ほんとそうですよね」
と言いながら彼女は無造作にGジャンを脱ぎ、半袖の薄手の白いセーター姿となったが、意外と肉感的だったので俺はちょっとどぎまぎして話が続かなかった。
「…」
「どうかしましたか?」
視線は泳がしていたつもりだったが、まるで内心を見透かされているようなタイミングだったので少し慌てた。
「あ、いえ…このエスカーって名前を聞いたとき、何か変わった乗り物かなと思ったんですけど…」
「ただのエスカレータ。だったでしょ?(笑)」
「そう(笑)そのまんまで、よく考えたらネーミングもそのまんま(笑)」
二人で笑っていると、すぐに次の乗継点に着いた。もう少し乗っていたい。

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ここが最終。チケットを渡す。再び二人で乗り込んだ。
「エスカーって大阪では考えにくい乗り物なんですよ」
「どうして?」と首を少し傾げた。その仕草がかわいい。
「そもそもエスカレータはタダって感覚ですし、観光客を乗せるなら山道にエスカレータを付けるという発想ではなくて、小さくても効率のいいケーブルカーを入口正面に作るでしょうね。でもって他にルートはないですよって印象を与えて観光客を無理矢理乗せる(笑)」
「大阪の人って合理的なイメージですからね」
「ガツガツしてるってこと?すんまへんなぁ」
俺は頬を膨らませ、口を尖らせて見せた。
「違いますよぉ(笑)」
左側に立つ彼女は口に手を当てて笑いながら、俺の左腕を軽く叩く。
「エスカーは途中何度か乗継しないとだめですけど、そこには神社ぐらいしかないですよね?それはそれで信仰心の表れなんでしょうが、大阪なら確実におみやげ店がずらっと並びます。神社だけじゃ儲からん(笑)」
「それっておかしいですよぉ(笑)」
「いえ、大阪人はプロセスより結果とスピードを重んじます。ケーブルカーやロープウェーで一気にダーッと頂上に連れて上がって、降りたらすぐ売店(笑)神社行きたかったら勝手に歩いて行けと(笑)」
「そうなんですかぁ?(笑)」
「それに下りエスカレータがないっていうのも大阪では致命的。なに中途半端なモン作っとんねん。下りるんどないしてくれんねん、背負って下りてくれるんか?って(笑)」
「アハハハハハ」
彼女はよく笑った。
やがて頂上に着き、コッキング苑に入園料を払って入った。
「展望台に行きませんか?」
「はい」

陽が傾いてきたことを実感しながら奥まったところにある展望台をめざす。
「カナコさんは江ノ島によく来られるんですか?」
「そうですね、来るのはたまにですけど、その分すごく来たくなるときがあります。珍之助さんは初めて?」
「はい、湘南デビューです(笑)」
「江ノ島・湘南の印象はいかがですか?」
「もっと派手なのかと思ってましたけど、意外と地味ですね。でも僕は人混みとか観光地然としたところは好きではないので、これぐらいがいいですね」
「へぇ。そんな印象をお持ちだったんですね。夏はさすがににぎやかですけど、今時分は静かでいいところです」
並んで歩く俺たちはどんなふうに見えているんだろう…。
展望台の根元に到着し、エレベータで一番上まで上がった。

「あ、ここではあまり外を見ないで。この上が屋外デッキになっています。そこへ行きませんか?」と彼女が誘ってくれたのですぐに横の階段を登って行った。

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「うわぁ…」
屋外デッキからは江ノ島をはじめ湘南の海岸線が一望できる。少し曇っているのが惜しい。
「ガラス越しに見るより肉眼でこの風景を眺めるほうが絶対いいですから」
「ほんとですね…」
絶景とはこのことか。ふと横の彼女を見ると、吹きつける風に髪を押さえることもせず、じっと海を眺めていた。舞い上がる髪も美しいが、少し憂いを帯びた横顔と哀しみを湛えたような瞳がさっきまでの印象と違う。神々しいばかりのその光景に思わず見とれてしまった。
(つづく)

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湘南をわたる風_03

2006-12-04 08:35:41 | 湘南

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長谷駅から藤沢方面に向かって再び江ノ電に乗車。ドアにもたれかかって何とはなしに車窓から沿線の景色を眺めながら極楽寺、稲村ケ崎を過ぎ、七里ケ浜駅に電車が滑り込む。
そのときホームに立っていた女性と偶然目が合う。髪は長めで白いスカートにブーツ、Gジャンを羽織っている30歳前後らしき美女。
「きれいな人やな…」思わず見てしまった。
彼女は一人で乗り込んできて、空いている座席に腰かけた。雰囲気からして地元っぽくないし、旅行者と思われるものの、カップルや女性のグループが多いなかで女性一人って珍しい。かといって荷物もないし、東京の方から気まぐれにこちらに来た人なのか…。

そんなことを考えているうちに江ノ島駅に到着した。さきほどの美女が下車するのを視界の隅に捉えた。こちらも下車して、とりあえず踏み切り付近で江ノ電を撮ってから江ノ島方面に向かうことにした。目の前を電車内でも見かけたダブルデートらしきカップル2組が歩いている。それにしても江ノ島までけっこう遠い。長谷駅から鎌倉大仏までの比ではない。

それでも駅前商店街を越え、地下道を過ぎ、やがて江ノ島に渡る橋梁に差し掛かった。ここで江ノ島と水族館に分岐している。さきほどのカップル2組は江ノ島水族館方面に行ったようだが、こちらはエスカーに乗りたいので江ノ島に向かうことにした。

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長い橋を渡り始めたが、周りの風景を見てシャッターを切りながら歩く。江ノ電で見かけた女性が俺を追い越していくのがわかった。
「へぇ、あの人ってやっぱり観光なのか」
ちょっと嬉しいかも…と考えながら歩いているうちに江ノ島の入口に差し掛かった。シャッターを切る。ついでにあの人も写しておこう。

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若者の姿は少ない。展望灯台もあるし一度はこちらに来るかもしれないけど、だいたいが水族館側に行く人が多いのではないか。そういう意味では、あの女性は何か目的でもあるのか…。

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参道の入口でもシャッターを切る。
店が並ぶ坂道を登っていく途中で彼女を追い越すことにした。同じ方向に歩いているだけなのに、傍から見るとまるで尾行しているみたいなので、このまま付いていくと痴漢か変態扱いされそう…。ここは急いで追い越すほうがいい。
そして、彼女の右側を追い越す瞬間、上品な香水が漂ってきて消えた。名残惜しい感情を引き剥がすようにその場に置いて上へと歩いていき、エスカー乗り場に到着した。

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切符売り場で「のりおりくん」を見せて50円引き。

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ついにエスカーに乗った。ブログがきっかけとなって、エスカーに乗ったという意味でも感慨深い。

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降りるとそこは神社。巫女さんがあちこちの賽銭やおみくじのお金を回収していた。

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次の乗継点に来たら、彼女がいた。
これは偶然というより縁。何か声をかけねば…と思って近づいた。すると思念が通じたのか彼女の方から振り向いて、俺を見て少し驚き、そしてにっこりした。俺も微笑み返して「こんにちは」と声をかけた。
(つづく)

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湘南をわたる風_02

2006-12-03 22:13:20 | 湘南

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逗子から横須賀線に乗り大船で東海道線に乗り換え、江ノ電の一方の起点でもある藤沢へ。とりあえず昼飯を食うとこを探したけど、駅前にはロクな店なし。まさかここまで来て、マクドやケンタッキー、吉牛、松屋というのでは芸ないしね。でも大阪と違って店って全然ないし…。結局小田急百貨店のレストラン街で、かき天丼を食す。

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いよいよ江ノ電へ。まずは一日乗車券を購入。「のりおりくん」という実にベタでヒネリのないさっぶいネーミング(笑)でも、これが580円とは安いよね。

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江ノ電=江ノ島電鉄藤沢駅。ドーム型の駅が欧風。

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雰囲気は関西でいうと叡山電車に近いね。

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まずは鎌倉まで行くつもりで乗り込んだけど、ここの駅を前にしては降り立たずにはいられなかった。鎌倉高校前駅。映画やドラマ、PVでもよく出てくるところ。駅の前が海。シブい。シブすぎる。この駅だけでも2時間はボーっとできるで。ここもフォトアルバムで詳しく。

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鎌倉駅まで行ってから折り返すことに。次は由比ケ浜駅。サーファーが多いけど、静かでなんとも切ない秋の浜。秋の海っていいよね。夏が賑わってただけに余計に枯れた感じがするのがいい。

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次は長谷駅で降りて、鎌倉大仏へ。平日でも観光客が多いのにはびっくりしたけど、駅からけっこう遠い。今回はいろいろとよー歩いたわ。

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130さんのコメントにもあった大仏の裏側がこれ。個人サイトからの無断拝借ではあるけど、次のも含めてあーちゃんの情報提供。ありがとさん。珍が行った時はこんな行列はなかったと思うけど。

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これが大仏の胎内。20円とはいえ、これかよ…状態(苦笑)

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参道というか、駅からの道の途中で限定ご当地ガシャポンをして出てきたのがこれ。湘南ナンバープレートのピンズ。狙って出てきたから嬉しかったわ。そそるよねぇ(笑)
さて、鎌倉大仏の次に考えたのは七里ケ浜。でも日没の時間を考えて、まずは時間のかかりそうな江ノ島へ行くことにした。エスカーが待ってるし。
ところが、待っていたのはエスカーだけではなかった…。
(つづく)

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いざ湘南

2006-11-14 08:30:26 | 湘南

最近の世間はコップから水が溢れそうな状態。そんな不安感と閉塞感の中、珍もそろそろ充電しないとあかんなと思っていたら、ようやくホンマもんの現実逃避ネタが出てきた。

まずは今週金曜に振休を取って府内某市のパチモン公務員仲間(珍ブログ公式読者)と長浜に逃避予定。前からこっそり計画しててんけど、いよいよ実現。仕事の日程が入らんように入らんように工夫してた(笑)なお、長浜視察の最大の目的は海洋堂ミュージアムであることはここだけの秘密にしていただきたい(笑)
さらに月末28日には東京出張(国土交通省殴りこみ)が決定。こんな機会は滅多にないとばかりに翌日は休みを取って湘南へ。

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デジカメ片手に葉山の海岸とPLAGE SUD(横須賀市やけど)へ行って、鎌倉に出て江ノ電を一日乗車券で乗り倒して、七里ガ浜に江ノ島行って、エスカー乗って…もう計画考えるだけでタマラン。とにかく所有メディア合計3GBで写真を撮りまくるしかないね。もちろんこの場で写真とレポートを掲載しますのでお楽しみに。
いやぁ、何か目標があると希望と勇気が出てきますな。

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エスカーの正体

2006-10-02 08:16:18 | 湘南

あーちゃんがご乗車あそばされた「江ノ島エスカー」、気になるのでちょこっと調べてみました。やっぱりというか、江ノ電(江ノ島電鉄)が運営してるんやね。ちなみに上りしかないそうで、下りは歩けと(笑)まあ、途中土産物屋が点在しているのは想像に難くない。一応江ノ電ホームページでは「参拝に訪れる高齢者をはじめ、観光に来られる家族連れ・カップルに利用され、喜ばれております。」とあるけど、高齢者に下りを歩かせるというのも酷な気がするでぇ。それに車椅子はどうしたらええねん?下りは逆運転してくれるんかな?と思ったら、同ホームページには「江の島展望灯台ではバリアフリー化されておりますが、江ノ島エスカーには車椅子対応の設備は設けられておらず、また、3連・4連は有効幅が90cmとなっておりますので、大変心苦しくはございますが、車椅子でのご利用はお断りさせて頂いております。」とある。展望台はバリアフリーしてても上がられへんかったら同じやん。このあたりは課題やな。藤沢市も費用負担を求められているのでは?

Esu01

あーちゃんのコメントでもあったように、「江ノ島エスカー」とは、4つのエスカレータ(乗車別では3区)により高低差46mを総延長106m、約4分で江ノ島頂上までつないでいる。大人350円。乗車券+コッキング苑(藤沢市営植物園)入園券+展望台入場券が750円でセットになった乗車券もある。

Esu03

地元の商業ポータルサイト「ふじさわの商店街」では、1区のエスカー乗り場の横にある公衆トイレを画像(上の画像)入りで紹介し、「ここを逃すと、しばらく公衆トイレがありません」と親せつに案内。エスカレータに乗ってて催すとスピード遅いだけに困るよなぁ(笑)駆け上がるとよけい刺激されてヤバいし(笑)そういう意味ではありがたい情報。っつーか、2区、3区にもトイレ作れや。係員用のトイレくらいはあるやろ。それとも係員もトイレ行くのに頂上か1区のどっちかまで行かなあかんのか?(笑)

Esu02

どんなんかなぁと思ったら、まんまエスカレータやん(笑)
確かに「有料エスカレータ」とは珍なる存在ですな。これに乗ったままずずーっと上がっていくわけやけど、見た感じは地下鉄のエスカレータみたいやん。壁には広告だらけ。途中は壁がなくなって景色は見れるのかな?そんなエスカレータなら途中で無賃乗車・降車されるわな…。でも、広告しか見せないエスカレータを興ざめと言うなかれ。そもそも江ノ島にこんな乗り物があること自体、人間の「楽をしたい」という欲望のために、自然を冒涜し、景観をぶち壊すような異質なモノを置いてるわけで、存在自体がアナーキー(笑)ある意味新幹線と肩を並べる超越的な人工物やで。

しかし、「江ノ島エスカー」のネーミングの由来はなんやろね。素直に考えて、「エスカー」の「エ」は当然「江ノ島」の「江」やろし、エスカレータから取った「エスカー」やろけど、エスカーの「カー」は車やろっ!って大阪人ならつっ込むわな(笑)

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生粋の大阪人・珍にとって未知なる江ノ島名所をまた知ったということで、ますます逃避行したくなりました(笑)

江ノ島エスカー公式ページ

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