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求刑を超える判決

2010-09-15 | 裁判員制度
求刑上回る懲役20年=「軽きに失す」と判決―模型店店主殺害の裁判員裁判・横浜(時事通信) - goo ニュース

※引用

求刑上回る懲役20年=「軽きに失す」と判決―模型店店主殺害の裁判員裁判・横浜

 神奈川県秦野市で昨年4月、模型店店主増田守男さん=当時(79)=が殺害された事件で、殺人罪に問われた無職本村(旧姓朝倉)健太郎被告(35)の裁判員裁判で、横浜地裁(高橋徹裁判長)は14日、「検察側の求刑は軽きに失して受け入れがたい」として、求刑懲役18年を上回る懲役20年の判決を言い渡した。

 弁護側は「事件当時、本村被告は記憶を失っており、現場にはグレーのパーカーを着た別の男がいた」などとして無罪を訴えたが、高橋裁判長は「内容的に不自然。荒唐無稽(むけい)で信用に値しない」と否定。本村被告は抗うつ剤の副作用で心神喪失状態だったとの弁護側の主張についても「犯行前後には冷静に行動している」と退けた。

 動機が不明である点については「本村被告が供述しないために解明できない」と強く非難した。 


求刑が軽きに失して受け入れがたい。
供述しないために解明できないと強く非難。
いろいろ考えさせられます。

死亡等結果の重大な犯罪の裁判員裁判の弁護は難しいですね。

弁護人の立つ瀬がなくなります。


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4 コメント

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Unknown (TK生)
2010-09-16 06:20:17
時折お邪魔する同業者です。
各論はさておき、この判決の問題点の一つに、捜査段階の鑑定留置による精神鑑定(本鑑定)に、殆どフリーハンドの信用性を認めた点です。
ご承知のように捜査段階の鑑定では、捜査機関が作った膨大な捜査資料一式が鑑定資料にされ、鑑定判断の基礎となります。しかしその資料の多くは、公判では証拠になりません。
しかし、弁護人がいくらこのことを公判で批判しても、その問題の鑑定資料が証拠に出ていない以上、具体的に当該資料の問題点を述べることができません。
今回の判決は、その点に関して「弁護人から具体的な指摘がない以上、鑑定に対する批判は一般的抽象的なことを述べているにすぎず採用できない」と片付けてしまっています。
捜査段階の鑑定については立法論も含めて対応を考えないと、弁護人のチェックの及ばないところで、どんどん完全責任能力の判断がなされて言ってしまうようで、危惧を覚えます。
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コメントありがとうございました。 (ueyama)
2010-09-16 08:34:20
TK生さま、コメントありがとうございました。

なるほど、報道では分からない個別の事件の問題はあるのですね。

よく分からないのですが、捜査段階の鑑定留置による精神鑑定(本鑑定)とありますが、この段階で本鑑定がなされたということでしょうか。

鑑定書採否についての弁護人の意見はどういうもので、不同意でしたら、どういう経緯の採用だったのでしょうか。

コレがいわゆる簡易鑑定の結果で不同意とされると、模擬裁判でやった、鑑定人のパーソナリティ(説明能力、人当たり等)に大きく依存した鑑定証言を裁判員に判断させることを選択せざるをえないのでしょうか。

これらが公判前整理手続の名前でブラックボックス的に(裁判所は違うというのでしょうが・・・)処理されることは刑事手続にとって決して良いことではないと思うのですが・・・。

などなど、いろいろ考えさせられました。

その上で、担当弁護人と被告人の関係を考えるとあらためて大変だなあと思いました。
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Unknown (TK生)
2010-09-16 20:04:37
上山様
早速のお返事ありがとうございました。
当該事件の鑑定に関してお答えします。

この事件では、まず被疑者段階で簡易鑑定がA医師により行われました。
しかしA医師が書いた意見書(診断書)は証拠請求はされていません。
次に、被疑者段階で刑訴法167条による鑑定留置がなされ、検察官が依頼した鑑定人B医師による精神鑑定が実施されました。
前のコメントでは、この鑑定のことを「鑑定留置による精神鑑定(本鑑定)」と表現しました。
B医師による鑑定の結果作成されたB鑑定書では完全責任能力が認められ、これを受けて検察官は起訴しました。
公判前整理手続きで、検察官はこのB鑑定書を証拠請求し
弁護人は当然このB鑑定書については不同意として、再度の裁判所が任命した鑑定人による精神鑑定を請求しました。
しかし裁判所は、既にB鑑定がなされていることなどを理由に、弁護人の精神鑑定請求は却下しました。
以上の経過を経て、公判となり
公判でB医師が証人として鑑定経過を証言し
B鑑定書は刑訴法321条4項により証拠採用されてしまったのです。
私の承知している限りでは、責任能力が争点となるほとんどの事案が、こうした経緯をたどり
公判段階での弁護人の精神鑑定請求は大抵却下され、被疑者段階の精神鑑定の結論で決着が付いているように思います。

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コメントありがとうございました。 (ueyama)
2010-09-17 08:58:48
TK生さま、コメントありがとうございました。

証拠請求やそのやり取りの経過がよくわかりました。ありがとうございました。

裁判員裁判にするか否か、強盗傷人を窃盗+傷害で起訴するか。責任能力についてどのように判断するかについて検察官に裁量的判断を委ねすぎと感じます。裁判員の負担軽減の名のもとに・・・。

この運用が定着すると実際上は、責任能力の論点は裁判員が判断することはなくなりそうですね。
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