このババルーについては、本編/江利チエミ・あの歌シリーズでも第一回に取り上げました。
http://blog.goo.ne.jp/udebu60827/e/bfce0a122c82b7649bfaacaa73084db0
私の江利チエミさんのイメージとして、一番強いのは「ババルー」なのです。
ババルーについて補足します。
「ババルー」は、「タブ-」 の作者でもあるマルガリータ・レクォーナが書いたアフロ・キューバンリズムのナンバーで、キューバの大歌手ミゲリート・バルデスの十八番として有名な曲です。
ミゲリートは「ミスター・ババルー」とあだ名されたほどだったとか...
画像のLP「チエミのすべて/2枚組」...に収録されている「ババルー」は、確か3回目の録音バージョンだったと思います。
40年のコマ公演の「江利チエミショウ」で歌われたアレンジと思います。
ミュージカルスターとしてダイナミックな太い発声を前面におしだしていた頃のもの...
それゆえ私はこのババルーのチエミさんを「ミセス・ババルー」と呼んであげたい... そう思っています。
キューバには元々「ギリシア神話」そして「日本の神話」とも共通する「数々の神話」が存在していました。
(世界のはじまり...の話/以下参考資料:HP・CUBA★CUBAさん...ほか)
>星は昔、火に包まれた赤く熱い大きな塊であった。
神オロフィンはあまりに暑かったので、その日を消すべく、神ジェムーを星へ送った。
星に着いたジェムーは来る日も来る日も力の限り働いて、遂に星の表面の火を消し、
星の内側の火をも弱める事に成功した。
水は星の表面を包み込み、高い位置から低い位置へと流れた。
大陸の全てを流れた水はあまりに長い距離を流れたので、最後には塩辛くなってしまった。
こうして、大地には川や海が生まれていった。
オロイニャという罪人がいた。オロイニャは燃えさかる星の真ん中に縛られていたが、あまりの過酷な仕打ちに耐えられなかったので、自分にその罰を与えた神オロフィンに自分を許してくれるよう訴えた。
だが常に思慮深く、善の心を持つ神オロフィンはこう言った、
「お前は今、自分自身の罪の報いを受けなければならないのだ。
だが、誰もお前のことを忘れないよう、時々お前に山の力を与えよう。
そして、山の力を使ってお前の声を人々に聞かせよう。お前の子供達にもな。」
火山はその力で大地を揺らし、私達を驚かせ、恐がらせる。
まさしくそれがオロイニャの叫びである。
そして彼の息子であるアガユはその音とともに家や畑、大草原を自分のものにしてしまうのだった。
※自然崇拝、多神教ということが読み取れます。
これが、スペイン人による侵略・植民(殖民)によって、キリスト教も入っていきます。
これら西欧文化の異種交配によって、キューバの土着信仰(=サンテリア)、文化、音楽は独特の変化を遂げていきました。
代表的な神々を列挙します。(引用/CUBA★CUBAさん)
◆エグレア
赤と黒の衣装を纏った子供の神様。
不思議な形の杖をいつも手に持っている。扉や十字路、幸せを呼ぶ神とされていて、玄関の扉の後ろにエレグアを祀る家は多い。必ず一番初めに出てくる。エレグアを呼んでから儀式は始まり、エレグアが他の神々を呼ぶ。
性格はいたずらっ子のよう。子供っぽい。機転が利く。大事な場面でしっかりと活躍する。
◆オグン
鍛冶屋さんらしい(神話集より。)
緑と黒がカラーで、手には大きなナタ(マチェテ)を持っている。
ずっと葉巻を銜えて踊る。動作は荒々しく、力強い。チャンゴーの兄弟らしい。
◆オチュン
愛と美と豊穣の女神オチュン。
金色の衣装を纏い、扇子を手にしています。
※江利チエミファンには聞き覚えがある神様ではないでしょうか???
・・・オーバタラバ オチュン ニ イエマイヤ オチュ----ン・・・ そう、同じマルガリータ・レクオーナ作の名曲「タブー」の中に出てくる歌詞・・・ サンテリア神の名だったのですね。
また、 私には「イエマイヤ」と聞こえてしまう(というかカタカナ表記の英語的か西語敵かという差だけだという云いかたもできますが)この「名詞」も、おそらくは下記の神様=ジャマヤーの固有名詞と思われます。
◆ジェマヤー(イェマヤ/イェモヤ)
青と白がカラーの美しい海の神。
母性の象徴とも言われる。
ダンスでは穏やかな美しい海の姿と、荒れ狂う嵐の海の姿の両方が見られる。
ドレスは波の模様を表す、青と白のラインが美しい。
◆チャンゴ
酒飲みで、女好き、喧嘩好き、雷と太鼓の神様・・・とキューバ男性が最も共感しそうな神。
キューバで最高の打楽器演奏者はチャンゴーの名を取ってチャンギートと呼ばれている。
手には斧を持っていて、ダンスではオグンの持っているマチェテ(ナタ)と火花を散らす。
オチュンの恋人・・・という話も。
※ババルーの出だしの部分 ♪ババルー アイババババババ ババルー の次に ♪チャンゴ---- と出てくる神様ですね。
◆オバタラ
サンテリアの信者で「自分の神はオバタラです。」という人は常に白い衣装を身に着ける。
サンテリアに入信した人も最初の数年は全身真っ白の衣装で付き人と共に過ごす。
手には髪の毛のような柔らかい藁を束ねた物を持っており、
腰を低く折って踊る。
全ての神を生み出した最高の神らしい。
両性と言われてるが、ダンスでは女性の格好をしている。
※先に書いたタブー オ--バタラバ と聞こえる部分も、このサンテリア神のことのようですね。
そして...
◆ババルー・アジェー
キューバで最も愛され、信仰されている神様。
別名サン・ラサロ(キリスト教の聖ラザロと混同されてしまった節があります。)
サン・ラサロの日にはキューバ中でフィエスタが開かれる。
色は紫で、肩から提げ袋、松葉杖を付き、犬を連れている。
天然痘 、ハンセン 氏病、AIDS、 性病 など病気の神で、起こると病気を撒き散らすという。
身体中に発疹、 足を引きずり、倒れこむように登場し、そこをチャンゴーによって手助けされる。
そのうち、エレグアから先に藁の付いた2本の棒のようなものを渡され、元気になるが、また弱っていき、最期には泡を吹いて倒れる。
ババルーはこのサンテリア神を崇める歌...であります。
『ババルー』『タブー』の歌詞には、キューバの神々の名前が散りばめられていたのですね。
私はチエミさんの『タブー』の
> オーバタラバ オチュン ニ イエマイヤ オチュ----ン・・
ここ大好きなんです。
そういえば、この「オチューン」のあと、「ディーヴァー」と続きますね。まさに「女神オチュン」と歌っているわけですね。
この『タブー』は10インチLP「チエミのスタンダード」に収録されたものが唯一無二です。
『ババルー』は、う--でぶさんの言われるとおり3つの録音がありますが、私は1番最初のテイクが好き。
ラテン・リズム&スペイン語で歌われた後、転調してジャズ・リズム&英語になります。
これがミュージカル的な華やかさがあって良い!
どうしても英語以外は馴染みがないので、これまで「意味も判らず」聴いて口づさんでいました。
調べてみるとなかなか面白いモノですね。
わたしは、この「ババルー」が一番好きです。
とにかく、すごい迫力で、ぐんぐんと突き進んでいくというかんじです。
私は最初の チエミさんのLPがこの2枚組だったので、それ以前のLPを全く恥ずかしながら知らなかったので、テネシーもカモナマイハウスもこのLPから聞き始めだったので、これ以外はなかなか受け入れられなくって。
だからテネシーも、カモナもこのLPの録音野母のが好きです。
それに、この2枚組にはいっている真室川音頭。ババルーとこの2曲は「すごいっ!!」。
最後の ババルー アジェーのところには ノックダウンです。
♪こ----の雨に濡れて---- とか...