つばさ

平和な日々が楽しい

寒稽古がつらいほど飛躍は大きく、積雪が深いほど豊かな実りがもたらされる

2013年01月26日 | Weblog
余録: 2013年01月26日 
 今はすたれた風習をめぐる季語を探すのは、歳時記をながめる楽しみの一つである。たとえば今の季節なら「寒声(かんごえ)」というのがある。寒中に行う声の鍛錬を指し、早朝や夜ふけの寒気のなかで大声を発することで芸を上達させようというのだ▲「歌舞をたしなむ者は寒中に三十日暁天(ぎょうてん)に庭場にのぞんで詠唱し、あるいは鼓舞す。これを俗に寒声と称するなり」と江戸時代の歳時記にある。芸事だけでなく僧の読経も寒中の修業が求められた。さぞや昔の冬の早朝はにぎやかだったろうと空想をたくましくする▲小寒から節分までの約30日間が一年で最も寒いとされる寒の内である。今も行われる武道の寒稽古、昔の芸事の寒声など寒中の鍛錬は精神を集中させると信じられた。春から始まる次の一年の飛躍が仕込まれる厳寒期だ▲寒試しというのは昔の東北地方などの天候占いである。昔の人は寒の内に一年の気候が凝縮されていると考え、寒中の天気の推移でその年の気候や作柄を予言した。むろん科学的予測ではないが、一年の豊凶があらかじめ寒中に仕込まれるという発想が寒稽古に似る▲その寒中の日本列島は上空に強い寒気が入り、29日ごろまで冬型の気圧配置が続くという。気象庁は大雪と暴風雪及び高波についての気象情報を出し、日本海側の大雪などに警戒を呼びかけている。寒冬といわれるこの冬だが、さて天はどんな仕込みをしているのか▲寒稽古がつらいほど飛躍は大きく、積雪が深いほど豊かな実りがもたらされる。何も受験生だけに呼びかけたいのではない。厳寒に耐えて春を迎える心の弾みを昔の人に学びたい今年の冬である。