つばさ

平和な日々が楽しい

孤独に耐え、相手国に尽くし、日本の価値観を伝えた侍たちのなきがらが

2013年01月24日 | Weblog
春秋
2013/1/24
 炎熱の砂漠、多湿のジャングル、氷点下の氷原。地球上のあらゆる極限の地で、この会社の社員は働いている。プラント会社の日揮は、約2千人の社員の1割以上が常に海外の建設現場にいる。その多くが難居住、危険地帯と呼ばれる、常人には想像もできない場所だ。
▼アルジェリアのイナメナスも、その一つだった。そんな危ない所になぜ。そう聞かれて、ある社員は「資源がそこにあるから」と淡々と答えていた。石油やガスは、もう簡単な場所では採れない。遠い国、厳しい気候、治安が悪い社会に飛び込んでいくのはこの仕事の宿命なのかもしれない。社員はリスク覚悟で赴任する。
▼多くの途上国の政府が、日揮という一企業に絶大な信頼を寄せている。日本人の技術者が現地の若者を徹底的に指導して、その国の未来を担う人材を育てるからだ。たとえ資源があっても技術が根づかずに悩む途上国は少なくない。テロで亡くなった社員が教師で、生き延びたアルジェリア人は生徒であったかもしれない。
▼遠隔地に単身赴任する駐在員が口にする一番の困難は「危険」ではなく「孤独」だそうだ。その孤独に耐え、相手国に尽くし、日本の価値観を伝えた侍たちのなきがらが、もうすぐ政府専用機で帰還する。できれば仰々しいフラッシュではなく、静かな気持ちで迎えたい。失われた命の重さと遺族の無念を思い頭(こうべ)を垂れる。