日本橋学館大学
2011.10.14 zakzak
大学のホームページで「アルファベットの書き方」「分数の計算」「原稿用紙の使い方」といった授業のカリキュラムを公開した日本橋学館大学(千葉県柏市)が話題を呼んでいる。入試の偏差値は30台で、一部週刊誌には「バカ田大学」とまで書かれたほどだが、学力低下が著しい日本の大学生の実情を正面から受け止めた英断と称賛する声もある。日本の大学教育の現状に一石を投じた同大の横山幸三学長を直撃した。
日本橋学館大では1年生を対象に、「アルファベットの書き方・読み方」などのカリキュラムを実施。教材は「学研ニューコース 中学(1-3年)英文法」といった中学生向け参考書だ。
同様に、数学も「小数の計算」「分数の計算」「比例・反比例」といったカリキュラムが並ぶ。国語は「正しい仮名遣いと送り仮名の練習」「句読点・表記符号の使い方」といった具合だ。
ただし、これらはいずれも入学直後のテストで点数が低かった学生だけが指導教官の薦めで受講する選択科目。「アルファベットの書き方・読み方」も、最近の中学高校では教えない「筆記体」の話だ。ところが、このカリキュラムをHPで公開したため、ネット上は話題騒然。「高卒のほうがマシだ」「何のために大学行くのか」といった意見が相次ぎ、一部週刊誌が「本当にあった『バカ田大学』」などと報じる騒ぎになってしまった。
思わぬ形で“知名度”を上げた格好だが、こうした声に同大の横山学長は強く反論する。
「批判は甘んじて受けますが、なぜ本学がこのような選択科目を用意したのか。それは、中学高校で(基礎教育が)先送りされてきたツケのためです。本学は、学生を社会に送り出す“最後の砦”として責任を果たします。表面だけをとらえてバカにするのは簡単ですが、これが日本の教育の縮図と考えれば、決して笑ってばかりもいられないはずです」
少子化で、日本の大学はどこも受験生集めに苦労している。日本橋学館大では遠方の受験生に対し、教員が出向いて地元の高校や公共施設などで人物評価を主としたAO入試を実施する「訪問入試」まで行っている。合格判定は、高校の成績や卒業認定基準をもとに行うが、その結果、入学後に冒頭のような“特別授業”を実施せざるを得なくなる。授業にはいずれも、ベテラン教員を配置しているという。
漫画「天才バカボン」のパパが通っていた「バカ田大学」と実情はまるで異なるわけだ。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏も次のように言う。
「実際には、日本の大学生の4割は似たような状況。上位校でも推薦やAO入試で入った学生は、日本橋学館大を笑えないでしょう。体裁を気にして、こうした授業を正規のカリキュラムの枠外でこっそり行う大学が多い中、むしろよく決断したと称賛してもいいくらいです。学生や親御さん、出身高校からは必ず感謝されるはずです」
同大では、入学後の必修ゼミも「履修指導(時間割を作ってみよう)」「親睦球技大会(仲間と汗を流そう)」「学生生活マナー(授業の受け方、ノートの取り方)」と、まさに手取り足取りだ。少々甘やかしすぎの感もあるが、横山学長は「学生が居心地良く、生き生きと大学時代を過ごすためにバックアップしているだけ」と胸を張る。
同大の学生も、今回の騒動を気にかけている様子はない。「偏見を持つ人の評価は気にしない」「日々の学校生活が充実しているから、何を言われても気にしない」「学歴コンプレックスがある人ほど、バカにするんじゃないですか」と、総じて前向きだ。
こうした学生の“評価”に、横山学長も自信を深めている。
「私は長らく筑波大で教鞭を執ってきましたが、本学の学生は非常に素直で何事にも意欲的。卒業生も愛校心が強く、今回の騒ぎでも動じることはありません。歴史は浅いですが、本学を笑った人たちには、4-5年後を見ていろと言いたい。派手さはなくとも、世間の中堅層を担う多くの良質な人材を送り出してみせます」
■日本橋学館大(にほんばしがっかんだい) 1904年創立の日本橋女学館中・高(東京都中央区)を運営する学校法人日本橋女学館が母体。2000年開学。リベラルアーツ学部のみの単科大で、総合経営、人間心理、総合文化の3学科。受験者数は一般入試28人(倍率1・08倍)、推薦入試73人、特待生スポーツ21人、AO入試52人。東進ハイスクールの偏差値37。学生総数689人(男子465人、女子224人)。初年度学費総計140万7000円。
日本橋学館大では1年生を対象に、「アルファベットの書き方・読み方」などのカリキュラムを実施。教材は「学研ニューコース 中学(1-3年)英文法」といった中学生向け参考書だ。
同様に、数学も「小数の計算」「分数の計算」「比例・反比例」といったカリキュラムが並ぶ。国語は「正しい仮名遣いと送り仮名の練習」「句読点・表記符号の使い方」といった具合だ。
ただし、これらはいずれも入学直後のテストで点数が低かった学生だけが指導教官の薦めで受講する選択科目。「アルファベットの書き方・読み方」も、最近の中学高校では教えない「筆記体」の話だ。ところが、このカリキュラムをHPで公開したため、ネット上は話題騒然。「高卒のほうがマシだ」「何のために大学行くのか」といった意見が相次ぎ、一部週刊誌が「本当にあった『バカ田大学』」などと報じる騒ぎになってしまった。
思わぬ形で“知名度”を上げた格好だが、こうした声に同大の横山学長は強く反論する。
「批判は甘んじて受けますが、なぜ本学がこのような選択科目を用意したのか。それは、中学高校で(基礎教育が)先送りされてきたツケのためです。本学は、学生を社会に送り出す“最後の砦”として責任を果たします。表面だけをとらえてバカにするのは簡単ですが、これが日本の教育の縮図と考えれば、決して笑ってばかりもいられないはずです」
少子化で、日本の大学はどこも受験生集めに苦労している。日本橋学館大では遠方の受験生に対し、教員が出向いて地元の高校や公共施設などで人物評価を主としたAO入試を実施する「訪問入試」まで行っている。合格判定は、高校の成績や卒業認定基準をもとに行うが、その結果、入学後に冒頭のような“特別授業”を実施せざるを得なくなる。授業にはいずれも、ベテラン教員を配置しているという。
漫画「天才バカボン」のパパが通っていた「バカ田大学」と実情はまるで異なるわけだ。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏も次のように言う。
「実際には、日本の大学生の4割は似たような状況。上位校でも推薦やAO入試で入った学生は、日本橋学館大を笑えないでしょう。体裁を気にして、こうした授業を正規のカリキュラムの枠外でこっそり行う大学が多い中、むしろよく決断したと称賛してもいいくらいです。学生や親御さん、出身高校からは必ず感謝されるはずです」
同大では、入学後の必修ゼミも「履修指導(時間割を作ってみよう)」「親睦球技大会(仲間と汗を流そう)」「学生生活マナー(授業の受け方、ノートの取り方)」と、まさに手取り足取りだ。少々甘やかしすぎの感もあるが、横山学長は「学生が居心地良く、生き生きと大学時代を過ごすためにバックアップしているだけ」と胸を張る。
同大の学生も、今回の騒動を気にかけている様子はない。「偏見を持つ人の評価は気にしない」「日々の学校生活が充実しているから、何を言われても気にしない」「学歴コンプレックスがある人ほど、バカにするんじゃないですか」と、総じて前向きだ。
こうした学生の“評価”に、横山学長も自信を深めている。
「私は長らく筑波大で教鞭を執ってきましたが、本学の学生は非常に素直で何事にも意欲的。卒業生も愛校心が強く、今回の騒ぎでも動じることはありません。歴史は浅いですが、本学を笑った人たちには、4-5年後を見ていろと言いたい。派手さはなくとも、世間の中堅層を担う多くの良質な人材を送り出してみせます」
■日本橋学館大(にほんばしがっかんだい) 1904年創立の日本橋女学館中・高(東京都中央区)を運営する学校法人日本橋女学館が母体。2000年開学。リベラルアーツ学部のみの単科大で、総合経営、人間心理、総合文化の3学科。受験者数は一般入試28人(倍率1・08倍)、推薦入試73人、特待生スポーツ21人、AO入試52人。東進ハイスクールの偏差値37。学生総数689人(男子465人、女子224人)。初年度学費総計140万7000円。