書店風雲録 (ちくま文庫 た 53-1)田口 久美子筑摩書房このアイテムの詳細を見る |
いけない、ビクタースタジオに忘れたストップウォッチを取りに行っていない。この場を借りてなんですが、奥ちゃん、ごめんなさい。■昨日の「本屋」の記事つながりでひとつ。本屋で僕が一番思い出すのは、なんといっても池袋の西武百貨店の中にある「リブロ」である。いや、《かつてあったリブロ》と書いたほうがピンとくる。ご存知の方も多いと思うが、僕は鹿児島から出てきた「田舎もの」である。時に昭和56年(1981年)。最初の下宿は石神井公園駅から20分ほど歩く、練馬の三原台というところであった。大家さんは書道教室を営む方で、そこには当時大人気を博していた「おしん」の小林綾子さんが通って来ていた。ある日、庭に向かったガラスをトントン叩く音がしたので開けてみるとなんとそこに、大家さんと「おしん」ちゃんが立っていた。「こんばんは~」「こ、こんばんは」…どうも、大家さんはテレビを見ない僕が、おしんちゃんのことをよく知らなかったので教えてやろうと思ったのだと思う。今でもあの時の愛らしい姿は眼に焼きついている。(もちろん、大家さんではなく、おしんちゃんの)■で、そんなわけで僕が東京の本屋として認識したのが、そのリブロであった。確か当時はまだ現在のように地下ではなくって、10Fあたりにあったはず。田舎ものの僕としてはそれはそれはカルチャーショックもいいところで、広さ、本の品揃えにとにかく舌を巻いた。残念ながら学生の身であるので金はない(今もない)。でも、僕はとにかく通いに通って、いろんな棚にある本を睨み続けた。するとだいたいであるが、どの棚にどんな本があるか、がわかってくる。最初は、とにかく本を探すのだけでも一苦労し、帰る頃にはたいてい疲れ果てていた。しかし、それも慣れてくるととにかく本を探すという行為自体が楽しくて仕方なくなる。「よ~し、リブロをほぼ征服したぞ!」と思った矢先にリブロは丸ごと地下に引っ越してしまった。■本当はこのあとのことを書きたかったのだけど、長くなるといろんな方に「長い!」「もっと簡潔に!」と叱られるので、また明日。ところで写真の本はまさに当時のリブロに勤められ、現在は向かいにある巨大な書店「ジュンク堂」で活躍されている田口久美子さんの本。あの頃のリブロを知っている方には落涙の一冊である。
さて、さいたま在勤をきっかけに「蜷川幸雄と『さいたまゴールド・シアター』の500日」(平凡社新書)という本を出しました。市民、特に中高年の芸術活動、公共劇場、文化行政のあり方などについて55歳以上限定劇団の実例から切り込んだ(つもりの)ドキュメントです。ぜひご笑覧ください。(ちょっとPR)
2年近く取材していて思ったのは「芸術は効率ではないけれど、なぜか生き残る」ということでした。今年はぜひお会いしましょう。