このところ、パソコンのハードディスクの調子が思わしくなかったのだが、とうとうこの週末に、「X-デイ」が訪れた。ディスクエラーが頻発して、まともに動かなくなってしまった。
パソコンが動かないというのは、私にとっては一大事だ。なぜなら我が家において、私がチャンネル権、録画権を有するテレビとビデオは、このパソコンだけだからだ。こいつが動かないことには、タイガースの試合をテレビで見ることができなくなる。こいつは弱った。復旧が急がれる。幸いだったのは、少し前から壊れる予兆信号を発してくれたこと。おかげでバックアップと心の準備は万全だった。
データのバックアップは完璧だし、ディスク交換もたやすいこと。問題はOSから、再インストールしてやらなければいけないこと。OSを流し終えたら次は、ひとつひとつソフトを元通りに入れなおす作業が待っている。思いのほかに時間がかかる作業だ。でも実は、私、この作業があまり嫌ではない。増築に増築を重ねた木造旅館を解体して、更地から新たにホテルを新築するような喜びを感じるのだ。
言うなれば、「リセット」する感じ。
『リセットして、ゼロからやり直したかった』
自宅に放火した奈良の有名進学校に通う高校生の言葉だった。
社会というシステムに身を置くと、誰もがどこかに「異物感」みたいなものを感じるもの。ただ、雑多な日常が、そんな「異物感覚」を、都合よく忘れさせてくれるものだ。だからそのことに、ことさら気をとられすぎずに、生きてゆけるんじゃないだろうか。しかし、なかにデリケートで知覚過敏な人たちがいて、「異物感」を払拭することができないでいる。常に知覚し続け、どんどんストレスを溜め込んでいってしまう。そのとき彼らのとるべき方法はふたつ。「異物感」と共生する道を探るか、「異物感」を排除する術を見つけるか。少年の選択は後者だった。しかし、その方法はあまりに稚拙で短絡的で想像力に乏しいものだった。
そして、この不幸な“事件”が起きてしまった。
パソコンもテレビゲームも携帯も、リセットスイッチが備わっていることは、誰もが知っていること。だから、ついつい頼ってしまう。だって面倒なことはすべて、リセットひとつで呪文のように、全部なかったことにしてくれるんだから。一瞬にしてゼロに戻してくれる。
少年はすべてをゼロに戻そうと、リセットスイッチに手を触れた。
でも、少年にはひとつだけ考えが及ばなかったことがあった。
パソコンと違い人生には、ゼロより向こうがあることを。
そして彼の人生はマイナス側に振れてしまった。
人生リセットスイッチ(非売品)
あなたの人生をリセットします。
■ 使用上の注意 ■
・1回限りの使いきり商品です。
・本品は試作品のため、日付指
定機能はありません。どの日に
リセットされるかは不明です。
パソコンが動かないというのは、私にとっては一大事だ。なぜなら我が家において、私がチャンネル権、録画権を有するテレビとビデオは、このパソコンだけだからだ。こいつが動かないことには、タイガースの試合をテレビで見ることができなくなる。こいつは弱った。復旧が急がれる。幸いだったのは、少し前から壊れる予兆信号を発してくれたこと。おかげでバックアップと心の準備は万全だった。
データのバックアップは完璧だし、ディスク交換もたやすいこと。問題はOSから、再インストールしてやらなければいけないこと。OSを流し終えたら次は、ひとつひとつソフトを元通りに入れなおす作業が待っている。思いのほかに時間がかかる作業だ。でも実は、私、この作業があまり嫌ではない。増築に増築を重ねた木造旅館を解体して、更地から新たにホテルを新築するような喜びを感じるのだ。
言うなれば、「リセット」する感じ。
自宅に放火した奈良の有名進学校に通う高校生の言葉だった。
社会というシステムに身を置くと、誰もがどこかに「異物感」みたいなものを感じるもの。ただ、雑多な日常が、そんな「異物感覚」を、都合よく忘れさせてくれるものだ。だからそのことに、ことさら気をとられすぎずに、生きてゆけるんじゃないだろうか。しかし、なかにデリケートで知覚過敏な人たちがいて、「異物感」を払拭することができないでいる。常に知覚し続け、どんどんストレスを溜め込んでいってしまう。そのとき彼らのとるべき方法はふたつ。「異物感」と共生する道を探るか、「異物感」を排除する術を見つけるか。少年の選択は後者だった。しかし、その方法はあまりに稚拙で短絡的で想像力に乏しいものだった。
そして、この不幸な“事件”が起きてしまった。
パソコンもテレビゲームも携帯も、リセットスイッチが備わっていることは、誰もが知っていること。だから、ついつい頼ってしまう。だって面倒なことはすべて、リセットひとつで呪文のように、全部なかったことにしてくれるんだから。一瞬にしてゼロに戻してくれる。
少年はすべてをゼロに戻そうと、リセットスイッチに手を触れた。
でも、少年にはひとつだけ考えが及ばなかったことがあった。
パソコンと違い人生には、ゼロより向こうがあることを。
人生リセットスイッチ(非売品)
あなたの人生をリセットします。
■ 使用上の注意 ■
・1回限りの使いきり商品です。
・本品は試作品のため、日付指
定機能はありません。どの日に
リセットされるかは不明です。
⇒tacocoさん
ムシキングなんかと勘違いしてるんやろか?そいつを教えることも大人の役目の気がします。そうそう、幼少の私(笑)のボキャブラリーにも、"リセット"並びにその類語は、持ち合わせていませんでした。今どきは幼稚園児ですら、日常平気で使ってますからね。
⇒yuさん
"異物感"は誰もが持ちうる大切な感覚だと思います。問題は、この"異物感"を重荷に感じてしまうこと。重荷に耐え切れなくなった時、誰がどうケアしてあげられるか。彼の父親の責任が問われてしかるべきでしょうね。
>私もかなり変かも・・・。(笑)
あ、こう言えているうちは大丈夫!^^
⇒wanちゃん
wanちゃんこそは、「リセット名人」やろうと密かに決め付けてます。
せやろ?傷んだハートの回復方法、タイガースファンに伝授して!
⇒gaviさん
>人間ってリセットできないからこそ、年を取るにつれて味わい深いものになっていくものですよね。
エエこと言うやないの!
良いこと悪いこと、すべて含めて自分なんやからね。「リセット」するって、みんな悪いことだけ消し去りたいのやろうけど、良いことと悪いことは表裏一体。片方だけ都合よく、とはいかないもんやからね。
(非売品商法に弱い私であった)
人間ってリセットできないからこそ、年を取るにつれて味わい深いものになっていくものですよね。
過去のドロドロした思い出や、楽しかった事や、辛かった事etc・・・
ぜんぶひっくるめてこそ今の自分があるのだから、自分の過去は全部愛してあげてほしい。
ましてやリセットするなんてもったいない。
私は最近、望んでないのに勝手に記憶がリセットされる事があります、軽くアルツでして・・・(悲)
でも、私がよくするリセットは『精神的リセット』なので言い方としては『リフレッシュ』です。
辞書をひくと、”元気を回復する””新鮮な状態に戻す”とあります。
とすると、昨今の恐い事件が『物理的リセット』になるのかな…。
最近は十代の子供に限らず幅広い年代で、傷んだハートの回復方法が上手に出来ない人が多いと思います。
なんでか、考えてみた…やっぱりわからんかった(=_=;)
数学のように確実な答えはみつからん…。
メチャメチャ恐いですね~。
>「異物感」を排除する術を見つけるか。
今の若者の事件ほとんどそうですよね。異物は見たくないのです。見たくなかったら、消すしかない、自分の目の前からいなくなればいい。この奈良の少年は家というものが父の象徴だったようです。そこに母親や兄弟もいるのに・・・。
なんでもそうですが、バランス感覚って大事ですよね。今の自分について客観的に見ないといけないと思ってます。って、偉そうには言えません。私もかなり変かも・・・。(笑)
私もパソコンをメモリーを増やす、ハードディスクを替えるなど増築しまくって突然ダメになりました~。(笑)なんか相性悪かったみたいです。バックアップもちゃんと取ってなかったのでホント大変でした。やっと落ち着いたとこです。
デパートの屋上で買ったカブトムシが死んで、
「お母さん、電池代えて。」と言う子供が発生しているそうです。
本当の死に直面する機会のない今の子供たちを不幸と呼ぶか
死が身近にありすぎた戦時下の子供たちを、より不幸と思うか。
リセットなどという言葉の意味も知らず、「巨人の星」の続きを楽しみにしていただけの自分の子供時代は、問題を孕みつつも、まだ穏やかだったなぁ、と。