【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
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個人事業者の廃業(確定申告などで還付されるケースも)

2021-02-11 13:01:00 | 所得税の確定申告
個人事業者が廃業した年の確定申告に関する税法の規定は大変「芸が細かい」です。税法は大変緻密で、納税者に厳格で冷酷な部分が多々ありますが、廃業に関する規定については廃業する納税者の心中を察した温かみのあるものとなっています。

還付されるケースもありますので、「廃業したんだから、もう確定申告なんてどうでもいい・・・」では損をしてしまいます。

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◆廃業する年の確定申告

廃業した年であっても、確定申告をするのは翌年の2月16日から3月15日までです。事業所得の計算は廃業する月の分までをします。収入については最後の請求(販売)分まで、必要経費はその収入に関するものを差し引きできます。

◆廃業した翌年に必要経費が生じた場合

廃業後に必要経費が生じることもあります。例えば、遅れて送付されてきた請求書、売上代金の回収不能額(貸倒損失)です。当然、これらについても必要経費に含めることができます。

廃業した翌年、つまり事業所得の収入がゼロの年に必要経費が生じた場合は「更正の請求」をすることによってすでに提出した確定申告書の訂正ができます。しかし、この手続は事後的な必要経費が生じてから2か月以内にしなければなりません。もう少し待ってほしいですね。せめて1年くらいは。

◆事業税の扱い

個人事業者の事業税は、住民税同様1年遅れて課税されます。令和3年分の事業税は、令和2年の所得税確定申告の申告数値を基に、令和3年の5月頃になって都道府県から通知されます。そして、事業税が必要経費となるのは納付をした令和3年です。

令和2年に廃業した場合には、令和3年には事業所得がありませんので、令和3年に納付した事業税は必要経費にはなりません。そこで、令和2年の確定申告でこの事業税を必要経費として計上することが認められています。

◆純損失の繰戻しによる所得税の還付請求

マイナスは繰り越すのではなく、繰り戻すこともできます。令和2年の事業所得がマイナスで、令和1年の事業所得がプラスであれば、令和1年分として納付した所得税の一定額を還付してもらうことができます。

◆事業所得以外の所得との損益通算

廃業後、その年のうちに働き口を探して給料をもらうようになっていた場合には、給料から徴収された源泉所得税が還付されることがあります。

事業所得がマイナスの場合には、そのマイナスを給与所得と損益通算できるのです。たとえば、事業所得のマイナスが100、給与所得はプラス100であった場合、損益通算すれば課税はされません。この場合、給料から天引きされた税金は確定申告により全額還付されるのです。

◆予定納税分の還付

令和2年分として予定納税した分が確定申告による税額よりも多い場合には、確定申告すれば、その多い額を還付してもらうことができます(事業所得以外に所得がないとして)。

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「芸が細かくて温かみがある」のはいいのですが、計算や手続をもう少し簡単にして、さらに申告や手続の期限も延ばしてほしいです。今のような方式では手続を忘れる人のほうが多いと思います。

早急に改正されることを強く望みます!(遡及しての救済もしてほしいです。)

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