税抜経理と聞くと入出金に関するあらゆる記録(帳簿、請求書、領収書、契約書など)を税抜で、つまり本体価格と消費税に区分しなければならないと考える人がいます。しかし、税抜経理は会計処理、つまり「仕訳→総勘定元帳→試算表→決算書」という作業において本体価格と消費税に区分するという方式です。ですから、税抜経理を採用していても、消費税が区分表示されていない会計処理のための基資料(請求書、領収書、契約書など)が存在してもかまいません。
◆会計ソフトは税込で入力すればよい(会計ソフトが自動で税抜経理をしてくれる)
会計ソフトは税抜経理を簡単にしてくれます。取引を「税込で入力」すればその金額を自動で本体価格と消費税に区分してくれます。入出金(現金と預金の出入り)を税込で入力していけば仮受消費税(受け取った消費税)と仮払消費税(支払った消費税)が自動で集計されます。
ただし、各取引が消費税の対象(課税)であるか否(非課税)かの判断は自身でしなければなりません。また、ひとつの取引が消費税の対象(課税)と対象外(非課税)に分かれる場合にはそれぞれに区分して入力をしなければなりません。
◆会計ソフトの設定は事業年度開始時にしなければならない
税抜経理を採用するという選択は事業年度開始時にしなければなりませんので、会計ソフトの設定も事業年度開始時にしなければなりません。年度途中から税抜経理に変更した場合、すでに入力した取引を修正しなければなりません。その数が膨大な場合は大変な手数を要します。
◆税込の領収書やレシートが存在する
この問題はインボイス制度の導入によって解消されました。インボイス制度においては、インボイス登録をしている事業者は、請求書や領収書を本体価格と消費税に区分して記載しなければならないからです。しかし、インボイス制度も導入されて日が浅いことから、まだまだこのことが徹底されておらず、インボイス登録をしている事業者が税込の請求書や領収書を発行してくるケースも目立ちます。
◆インボイス登録をしていない事業者に対する支払い
これについても会計ソフトの入力画面で所定の選択をすれば済みます。当然、「仕入税額控除の経過措置」にも対応しています。ただし、特定の事業者がインボイス登録をしているかどうかは自身で調べなければなりません。
◆両方式で税務署に納める税額は異なるのか?
消費税の申告書の様式は税抜経理と税込経理で共通です。両方式いずれであっても税額の計算過程において記載しなければならない金額は同一ですので、当然算出される税額も同じです。
◆両方式で利益は異なるのか?
税抜経理と税込経理のいずれであっても消費税は「利益に影響しません」。
売上110(内消費税10)、仕入55(内消費税5)、諸経費33(内消費税3)とします(すべての取引が消費税の対象であるとします)。
税抜経理の利益は100-50-30=20です。
一方、税込経理の利益は「110-55-33」から税務署に納める消費税2(10-5-3)を差し引いた20と、税抜経理と同じです。
しかし、利益が異なるケースがあります。例えば、減価償却資産220(内消費税20)を取得したケースです(耐用年数10年、定額法で償却とします)。
税抜経理では減価償却費20です。一方、税込経理では減価償却費22です。さらに税込経理では減価償却資産の購入代金に対する消費税20を税務署に納める消費税から減額するため利益が増えます。
この違いを減価償却が終了する10年間で考えてみます。
税抜経理においては減価償却費20×10年=200の費用が計上されます。
税込経理においては初年度22の減価償却費と20の消費税(利益にプラス)、差引2の費用が計上され、2年度以降は22×9年=198の費用、10年間では200という費用が計上されます。結局は10年間で考えれば税抜経理と同じです。
在庫についても同じようなことが考えられます。
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★税込経理から税抜経理に変更した場合に戸惑う点
年度が変わって税込経理から税抜経理に変更をした場合、戸惑う点がいくつかあります。まずは、前期比較です。収益と費用で前期と同程度生じている勘定科目であっても、相当減ったように感じます。次に、税込(消費税額が見えない)を当然として取引してきた項目、例えば交通機関の運賃、飲食代なども税抜で表示されるので非常に戸惑います。
事業者が販売時に受け取る消費税は「預かった」と考えられます。事業者はこの預かった消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額を税務署に納めます。このような消費税の仕組みからすれば消費税が利益計算に表れない税抜経理は合理的です。税抜経理に変更した当初の戸惑いは仕方のないことです。
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◆会計ソフトは税込で入力すればよい(会計ソフトが自動で税抜経理をしてくれる)
会計ソフトは税抜経理を簡単にしてくれます。取引を「税込で入力」すればその金額を自動で本体価格と消費税に区分してくれます。入出金(現金と預金の出入り)を税込で入力していけば仮受消費税(受け取った消費税)と仮払消費税(支払った消費税)が自動で集計されます。
ただし、各取引が消費税の対象(課税)であるか否(非課税)かの判断は自身でしなければなりません。また、ひとつの取引が消費税の対象(課税)と対象外(非課税)に分かれる場合にはそれぞれに区分して入力をしなければなりません。
◆会計ソフトの設定は事業年度開始時にしなければならない
税抜経理を採用するという選択は事業年度開始時にしなければなりませんので、会計ソフトの設定も事業年度開始時にしなければなりません。年度途中から税抜経理に変更した場合、すでに入力した取引を修正しなければなりません。その数が膨大な場合は大変な手数を要します。
◆税込の領収書やレシートが存在する
この問題はインボイス制度の導入によって解消されました。インボイス制度においては、インボイス登録をしている事業者は、請求書や領収書を本体価格と消費税に区分して記載しなければならないからです。しかし、インボイス制度も導入されて日が浅いことから、まだまだこのことが徹底されておらず、インボイス登録をしている事業者が税込の請求書や領収書を発行してくるケースも目立ちます。
◆インボイス登録をしていない事業者に対する支払い
これについても会計ソフトの入力画面で所定の選択をすれば済みます。当然、「仕入税額控除の経過措置」にも対応しています。ただし、特定の事業者がインボイス登録をしているかどうかは自身で調べなければなりません。
◆両方式で税務署に納める税額は異なるのか?
消費税の申告書の様式は税抜経理と税込経理で共通です。両方式いずれであっても税額の計算過程において記載しなければならない金額は同一ですので、当然算出される税額も同じです。
◆両方式で利益は異なるのか?
税抜経理と税込経理のいずれであっても消費税は「利益に影響しません」。
売上110(内消費税10)、仕入55(内消費税5)、諸経費33(内消費税3)とします(すべての取引が消費税の対象であるとします)。
税抜経理の利益は100-50-30=20です。
一方、税込経理の利益は「110-55-33」から税務署に納める消費税2(10-5-3)を差し引いた20と、税抜経理と同じです。
しかし、利益が異なるケースがあります。例えば、減価償却資産220(内消費税20)を取得したケースです(耐用年数10年、定額法で償却とします)。
税抜経理では減価償却費20です。一方、税込経理では減価償却費22です。さらに税込経理では減価償却資産の購入代金に対する消費税20を税務署に納める消費税から減額するため利益が増えます。
この違いを減価償却が終了する10年間で考えてみます。
税抜経理においては減価償却費20×10年=200の費用が計上されます。
税込経理においては初年度22の減価償却費と20の消費税(利益にプラス)、差引2の費用が計上され、2年度以降は22×9年=198の費用、10年間では200という費用が計上されます。結局は10年間で考えれば税抜経理と同じです。
在庫についても同じようなことが考えられます。
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★税込経理から税抜経理に変更した場合に戸惑う点
年度が変わって税込経理から税抜経理に変更をした場合、戸惑う点がいくつかあります。まずは、前期比較です。収益と費用で前期と同程度生じている勘定科目であっても、相当減ったように感じます。次に、税込(消費税額が見えない)を当然として取引してきた項目、例えば交通機関の運賃、飲食代なども税抜で表示されるので非常に戸惑います。
事業者が販売時に受け取る消費税は「預かった」と考えられます。事業者はこの預かった消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額を税務署に納めます。このような消費税の仕組みからすれば消費税が利益計算に表れない税抜経理は合理的です。税抜経理に変更した当初の戸惑いは仕方のないことです。
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