【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

税抜経理(会計ソフトの設定)

2024-09-23 11:30:00 | 消費税
税抜経理と聞くと入出金に関するあらゆる記録(帳簿、請求書、領収書、契約書など)を税抜で、つまり本体価格と消費税に区分しなければならないと考える人がいます。しかし、税抜経理は会計処理、つまり「仕訳→総勘定元帳→試算表→決算書」という作業において本体価格と消費税に区分するという方式です。ですから、税抜経理を採用していても、消費税が区分表示されていない会計処理のための基資料(請求書、領収書、契約書など)が存在してもかまいません。

◆会計ソフトは税込で入力すればよい(会計ソフトが自動で税抜経理をしてくれる)

会計ソフトは税抜経理を簡単にしてくれます。取引を「税込で入力」すればその金額を自動で本体価格と消費税に区分してくれます。入出金(現金と預金の出入り)を税込で入力していけば仮受消費税(受け取った消費税)と仮払消費税(支払った消費税)が自動で集計されます。

ただし、各取引が消費税の対象(課税)であるか否(非課税)かの判断は自身でしなければなりません。また、ひとつの取引が消費税の対象(課税)と対象外(非課税)に分かれる場合にはそれぞれに区分して入力をしなければなりません。

◆会計ソフトの設定は事業年度開始時にしなければならない

税抜経理を採用するという選択は事業年度開始時にしなければなりませんので、会計ソフトの設定も事業年度開始時にしなければなりません。年度途中から税抜経理に変更した場合、すでに入力した取引を修正しなければなりません。その数が膨大な場合は大変な手数を要します。

◆税込の領収書やレシートが存在する

この問題はインボイス制度の導入によって解消されました。インボイス制度においては、インボイス登録をしている事業者は、請求書や領収書を本体価格と消費税に区分して記載しなければならないからです。しかし、インボイス制度も導入されて日が浅いことから、まだまだこのことが徹底されておらず、インボイス登録をしている事業者が税込の請求書や領収書を発行してくるケースも目立ちます。

◆インボイス登録をしていない事業者に対する支払い

これについても会計ソフトの入力画面で所定の選択をすれば済みます。当然、「仕入税額控除の経過措置」にも対応しています。ただし、特定の事業者がインボイス登録をしているかどうかは自身で調べなければなりません。

◆両方式で税務署に納める税額は異なるのか?

消費税の申告書の様式は税抜経理と税込経理で共通です。両方式いずれであっても税額の計算過程において記載しなければならない金額は同一ですので、当然算出される税額も同じです。

◆両方式で利益は異なるのか?

税抜経理と税込経理のいずれであっても消費税は「利益に影響しません」。

売上110(内消費税10)、仕入55(内消費税5)、諸経費33(内消費税3)とします(すべての取引が消費税の対象であるとします)。

税抜経理の利益は100-50-30=20です。

一方、税込経理の利益は「110-55-33」から税務署に納める消費税2(10-5-3)を差し引いた20と、税抜経理と同じです。

しかし、利益が異なるケースがあります。例えば、減価償却資産220(内消費税20)を取得したケースです(耐用年数10年、定額法で償却とします)。

税抜経理では減価償却費20です。一方、税込経理では減価償却費22です。さらに税込経理では減価償却資産の購入代金に対する消費税20を税務署に納める消費税から減額するため利益が増えます。

この違いを減価償却が終了する10年間で考えてみます。

税抜経理においては減価償却費20×10年=200の費用が計上されます。

税込経理においては初年度22の減価償却費と20の消費税(利益にプラス)、差引2の費用が計上され、2年度以降は22×9年=198の費用、10年間では200という費用が計上されます。結局は10年間で考えれば税抜経理と同じです。

在庫についても同じようなことが考えられます。

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★税込経理から税抜経理に変更した場合に戸惑う点

年度が変わって税込経理から税抜経理に変更をした場合、戸惑う点がいくつかあります。まずは、前期比較です。収益と費用で前期と同程度生じている勘定科目であっても、相当減ったように感じます。次に、税込(消費税額が見えない)を当然として取引してきた項目、例えば交通機関の運賃、飲食代なども税抜で表示されるので非常に戸惑います。

事業者が販売時に受け取る消費税は「預かった」と考えられます。事業者はこの預かった消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額を税務署に納めます。このような消費税の仕組みからすれば消費税が利益計算に表れない税抜経理は合理的です。税抜経理に変更した当初の戸惑いは仕方のないことです。

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税抜経理はインボイス時代のスタンダード?

2024-09-16 15:00:00 | 消費税
昨年10月からインボイス制度が始まり、新たに消費税の課税事業者となったことで消費税の経理処理や申告に困惑する事業者は多いです。消費税の課税事業者が対処しなければならない課題のひとつが消費税の「経理方式」、税抜経理と税込経理のいずれを選択するかです。

◆税抜経理とは(仮受消費税、仮払消費税という勘定科目が生じる)

税抜経理とは、消費税が関連する取引に関する仕訳を本体価格と消費税に分けて行うという方式です。例えば、商品の販売を本体価格100、消費税10で行った場合、売上(収益)は100、消費税10は仮受消費税(負債)で処理します。商品の仕入れを本体価格70、消費税7で行った場合、仕入(費用)70、仮払消費税(資産)7で処理します。

税抜経理においては、消費税は負債(仮受消費税)あるいは資産(仮払消費税)で処理されるので損益(利益計算)には影響しません。

◆税込経理とは

税込経理とは、消費税が関連する取引であってもその仕訳に消費税は表さず、本体価格と消費税を合計して仕訳をするという方式です。例えば、商品の販売を本体価格100、消費税10で行った場合、売上(収益)110と処理をして消費税を表しません。商品の仕入れを本体価格70、消費税7で行った場合、仕入(費用)77です。

税込経理においては消費税が収益あるいは費用に含まれます。ただし、事業者が税務署に納める消費税、つまり収益に含めた消費税(100とします)マイナス費用に含めた消費税(80とします)を費用処理(100-80=20)することから最終的には利益に影響しません。収益100=費用80+費用20ということです。

◆税抜経理のメリット

税抜経理のメリットはいくつかありますが、そのひとつが「消費税が見える」ということです。事業年度開始から受け取った消費税の合計額は仮受消費税に集計されます。一方、支払った消費税は仮払消費税に集計されます。税務署に納める消費税は「仮受消費税-仮払消費税」です。仮受消費税も仮払消費税も税務署に消費税を納めるとゼロになります。

税込経理だと、この点がまったく見えません。

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★税抜経理はインボイス時代のスタンダード?

事業者が販売時に受け取る消費税は「預かった」と考えられます。事業者はこの預かった消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額を税務署に納めます。このような消費税の仕組みからすれば消費税は利益計算に影響しません。受け取った消費税を収益(大部分が売上)に、支払った消費税を仕入や諸経費に含める税込経理は合理的でないということです。確かに、税務署は税込経理も認めてくれます。しかし、融資申込みや補助金申請など、税務署以外に経理数値を提示しなければならない局面では「税抜経理を前提」としている思われることが少なからずあります。

なお、消費税の免税事業者は税込経理しか認められません。そんなことから課税事業者になってからもそのまま税込経理を続けているケースも多いです。しかし、インボイス制度導入後はほとんどの事業者が開業時から課税事業者となり税抜経理を選択することが普通になるでしょう。そうなれば、「税込経理は時代遅れの方式」になることは必至です。

税抜経理、インボイス時代においてはスタンダード(常識?)といえるのではないでしょうか。

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株価が乱高下(こんなときこそNISA!)

2024-08-23 18:30:00 | 会計、税金、経営、その他の話題
このところ株価が乱高下しています。8月5日、日経平均株価は史上最大の下げ幅を記録しましたが、わずか数日でこれを取り戻したのには唖然としました。過去幾度とあった大暴落ではこんな短期間で株価は回復しませんでしたが、今回の値動きはなんと表現してよいのかわかりません。おそらく、人類史上最初で最後の出来事といっても過言ではないかもしれません。

このようなことが起きるのは、やはり「日本が弱い」からだと思います。日銀の意表を突く利上げは海外投資家の格好の標的となったのでしょう。「昨夜のNY株式市場が・・・」、我が国の株式市場はこの状態からいつまでたっても抜け出せません。GAFAM(いまではMagnificent7が正しい)と比肩する世界を牽引するような企業が存在しないからです。このような国が他国に配慮を欠いた突然の利上げという「生意気な行動」をすれば大国の餌食になるだけです。

今年から鳴り物入りで始まった新NISAで早くも「損切り」が出ている模様です。NISAの投資対象の大部分が通称「オルカン」と呼ばれる世界全体の株式(しかし大半が米国株式)を対象とした投資信託です。これは日本国民の多くが、それも若年層が我が国経済の先行きに期待していない表れです。

こんなことではどうにもなりません!

NISAは株式投資による国民の資産形成だけでなく、日本企業の成長と発展もその目的とすべきです。やはり、「投資対象は日本企業に限定」「日本企業投資枠を設ける」「暴落時には日本企業への投資枠を特別に設ける」など、日本企業への投資を促進することが絶対に必要です。

こんなことをしていると、もう一度、今後は立ち直れないほど落とされますよ!
そう思えば、1980年代のブラックマンデー、この間のリーマンショックは秋でした・・・

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インボイスに電子取引など

2024-07-17 18:31:00 | 会計、税金、経営、その他の話題
昨年半ばから今年初めにかけて事業者を混乱させたインボイス(適格請求書)に電子取引でしたが、今ではすっかり落ち着きを取り戻したようです。

◆インボイス制度の最大の目的

インボイス制度の最大の目的は免税事業者にも消費税を納税させるということですが、この目的は達成されたといえます。今や「登録番号」を請求書に記載せずして消費税を請求するという「不心得者!」は皆無といっても過言ではありません。

国税庁は当面、消費税の申告処理(仕入税額控除の正確性)については寛大な対応をするとしています。しかし、いざ申告をするとなると気になります。「免税事業者の仕入税額控除」「売上代金から差し引かれた振込手数料相当額」など「これでいいのだろうか?」と不安になることが多々あります。

2割特例、特例が終わってからの税額を早くも気にする事業者が多いです。2割特例が終わる頃、小規模事業者の廃業が増えるかもしれません。

◆電子取引

そもそも電子取引がなんであるかの認識が進んでいません。特に電子帳簿やスキャナ保存との混同が目立ちます。

にもかかわらず、電子取引は日々増加しています。それに応じて電子取引におけるトラブルも増加しています。広くネット上の取引が安全で円滑に行われるためのわかりやすい法整備が必要だと思います。税務はそれを利用する、税務的な観点から必要な規定を設ければよいのです。

◆定額減税

6月の月次減税は順調に行われたようです。しかし、大切なことは月次減税の合計額が、最終的な定額減税額に一致するとうことです。また、減税しきれない人についてはその旨が源泉徴収票に記載しなければなりません。これが大変な作業です。

◆ふるさと納税

今年は能登地方の市町村、しかも「返礼品なし」が増えるでしょう。しかし、この善意にふるさと納税仲介サイトのポイントが付与されるのは悲しいことです。(ポイントの付与は2025年10月以降廃止されます。)

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定額減税、順調に実施される

2024-07-17 18:30:00 | 会計、税金、経営、その他の話題
事務手続の煩雑さへの批判や経済効果に対する疑問の多かった定額減税ですが、どうやら順調に行われている模様です。もっとも危惧された、給与を支払う側の「定額減税を知らなかった」「定額減税を忘れていた」はほとんどないようです。

◆給与明細の記載方法

定額減税額は給与明細に記載しなければなりません。その記載方法は様々ですが、一番多いのは控除欄に「通常の徴収額」と「定額減税額をマイナス」で記載するという方法です。控除欄にマイナスで記載するということは「手取り」が増えるということです。通常の徴収額が1万円、定額減税額も1万円であればその月は所得税の徴収はありません。

◆定額減税に到達したかの記録

これが大変です。給与明細に書ききれないでしょう。「給与明細の別紙」として、月ごとの定額減税額と各月の合計減税額を記載することになります。

「定額減税額3万円」「6月以降の通常の源泉徴収額8千円」とします。

6月減税額8千円
7月減税額8千円
8月減税額8千円
9月減税額6千円→減税終了

ということになります。しかし、こんな「きれいな金額」にならないケースもあります。通常の源泉徴収額が月によって変動する場合は大変です。

◆結局は年末調整

年度途中で「扶養親族が増減する」ことがあります。定額減税額は扶養親族数に応じて決まりますので「月次」と「年末」で定額減税額が異なることもあります。

今年は入念に扶養親族数を確認しなければなりません。特に扶養控除されない年少扶養親族(年齢16歳未満の扶養親族)は正確に把握されていない、つまり扶養控除等異動申告書に記載されていないケースがありますので注意が必要です。

◆源泉徴収票の記載(定額減税しきれない場合)

年末調整でも定額減税しきれない金額がある場合、その旨と金額を源泉徴収票に記載しなければなりません。そうしないと「給付金」が受け取れません。

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「ややこしいことをしてくれたね・・・」

年末調整や確定申告の時期にため息が聞こえそうです。

「本当にこれでよかったのだろうか?」

定額減税の「後始末」、来年になっても続きそうです。

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