【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

登録番号を信用情報に!(あくまでも空想です)

2023-11-26 12:00:00 | 消費税
インボイス制度がはじまって約2か月、請求書や領収書の登録番号のチェックに四苦八苦している事業者が多いです。

◆目指すべきは偽インボイスの「完全排除」

インボイス制度がはじまってから増大した事務手数のひとつが請求書や領収書の登録番号のチェックです。「登録番号が記載されているか」「登録番号は本当に登録されているのか」、特に後者の作業は「適格請求書発行事業者公表サイト」で調べなければなりませんので本当に大変です。

「登録番号は本当に登録されているのか」を調べずに済むのであれば事業者の事務手数は大幅に軽減されます。しかし、そのためには偽インボイスの完全に排除されるような社会のシステムが必要です。

◆事業者の申告状況を公表する

適格請求書発行事業者公表サイトで各事業者の「消費税の申告状況」を公表すれば偽インボイスは当然として、記載事項に不備のあるインボイスも大幅に減るのではないでしょうか。申告状況としては「直近の申告日付」でいいでしょう。適格請求書発行事業者公表サイトを閲覧すれば、その事業者が実在し活動をしているということが一目瞭然です。「直近の申告日付」があまりにも古ければ、その事業者はすでに活動を停止していると推測されます。

このようにすれば、各事業者はすすんで正確なインボイスを発行することでしょう。正確なインボイスを発行することが事業者の信用の証になるからです。そうなれば、「登録番号は本当に登録されているのか」をチェックする義務を事業者に課す必要もなくなり事務手数は大幅に軽減されます。

◆「法人番号」はすでに信用情報となっている

同じく国税庁が発行し公表している法人番号はすでに信用情報のひとつとなっています。「法人番号公表サイト」で調べれば、会社が実在することは当然として、活動拠点が登記された場所であるかも判明します。

税を目的として構築された情報を他の目的に転用することは好ましくありませんが、それが適正な課税につながるのであれば許されてもいいのではないでしょうか。

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インボイスと税務調査

2023-11-18 17:30:00 | 消費税
インボイス制度がはじまり、予期してなかった内容の請求書や領収書に遭遇し、早くも税務調査を心配している事業者がいます。

◆税務調査は重点指向

法人税(会社)、所得税(個人事業者)、消費税(会社および個人事業者)の税務調査は全ての会社や個人事業者について行われるわけではありません。また、税務調査の対象に選定された会社や個人事業者のあらゆる入出金を調査するのではなく、問題がありそうな(税額を違法に減らしていそうな)入出金を抽出して調査します。

◆調査対象にされそうな事業者

インボイスは仕入税額控除によって事業者が税務署に納める消費税額に影響してきます。事業者は販売の際に受け取った消費税から、仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いて税務署に納付をします。この支払った消費税を差し引くことを仕入税額控除といいます。この仕入税額控除はインボイスを入手した支出に関する消費税についてしか行うことができません。

インボイスを入手していない支出が多いと思われるのに、大部分の支出に関して仕入税額控除をしている事業者はインボイス制度導入後に調査対象に選定されるでしょう。例えば、仕入先や外注先の大部分がインボイスの登録をしていないであろう個人事業者であるにもかかわらず、それらを仕入税額控除の対象として申告している場合です。

◆多額の出金

多額の出金に関するインボイスは注意が必要です。仕入代金や設備購入代金がそうです。「支払先がインボイス登録をしているか」「登録している場合は請求書や領収書に登録番号か記載されているか」、入念に確認することです。

◆継続する支払い

少額な支払いであっても継続して支払いをする相手先であれば、間違った処理を継続してしまうと累積したミスは相当な額になります。家賃(特に駐車場)や接待に利用する飲食店などはその典型です。「多分登録しているだろう」は甘いです。支払いの都度、領収書の登録番号を確認しなければなりません。

◆「インボイスのみ」の税務調査は行われない

インボイスのみの税務調査が行われることは考えられません。「法人税(会社の場合)」「所得税(個人事業者の場合)」と同時に「消費税」の税務調査が行われ、消費税の調査の一環としてインボイスの調査が行われます。

◆消費税の修正申告と追加納付

インボイスのない支払いを仕入税額控除していると、その分だけ消費税を過少に申告していることになります。これを税務調査で発見されたら、仕入税額控除を取り消した税額を計算し、当初申告税額との差額を納付しなければなりません。これを修正申告といいます。

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★経理業務も重点指向で
インボイスは全ての出金について確認をしなければなりません。しかし、制度導入当初はインボイスの不発行や記載不備が続出すると思います。そんなことから税務当局もインボイスに関しては実情を考慮した税務調査を行ってくると考えられます。そこで、経理業務も「これだけは守ってください」と税務調査で指摘されそうな部分を抽出するという重点指向で行えばよいと思います。

★支払先のインボイスの不備は厳しく指摘する(指摘もされる)!
一部の支払いについてインボイスを入手していなくても税務調査がなければ何の問題も起こりません。しかし、だからといって喜んでいるようではインボイス制度の有効な運営は実現しません。事業者は支払先が発行するインボイスの不備を厳しく指摘しなければなりません(反対の立場では指摘もされる)。そして、いずれは不備なインボイスが発行されないような社会にしなければなりません。インボイス制度は「民の志」にその運用が委ねられているのです。

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登録番号の記載がない請求書への対応

2023-10-28 13:00:00 | 消費税
インボイス制度がはじまった今、事業者を悩ませているのは消費税額が記載されているのに登録番号が記載されていない請求書や領収書の扱いです。

◆困りますよ!

請求書や領収書を受け取ったならば、直ちに指摘してください。遠慮する必要はありません。

ほとんどの事業者がここ1年ほどの間、インボイス制度に対する知識を吸収し、インボイス登録をして、請求書や領収書のフォームを改め、導入後の事務体制を整えてきました。そんな中、消費税は記載されているのに登録番号が記載されていない請求書や領収書を発行するなんて、「ふざけている」としかいいようがりません。また、知らなかったではすまされません。「無知にも程が」あります。

◆相手がインボイス登録をしている場合

登録番号を追加記入してもらうか、登録番号が記載された新たな請求書や領収書を発行してもらってください。

◆消費税相当額を支払うべきか(相手が登録していない場合)

これがインボイス制度の一番難しいところです。

インボイス制度が導入されてから初めて取引をする相手先あれば、「インボイスの登録をしていないのに消費税を請求(記載)されては困ります!」といえます。

問題は取引年数が長い相手先や経営上取引を継続するしかない相手先です。この場合はどれだけの消費税であれば負担していいか、つまり「仕入税額控除」ができなくてもかまわないかが判断の基準になります。

税務署に納付する消費税は、販売の際に受け取った消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額です。この支払った消費税を差し引くことを仕入税額控除といいます。インボイス登録をしていない相手先に「消費税相当額」を支払っても仕入税額控除はできませんのでその分の負担が増えるということです。

◆仕入税額控除に関する経過措置

インボイス登録をしていない相手先に支払った消費税相当額の仕入税額控除の扱いについては経過措置があって、制度導入後3年間は80%、次の3年間は50%の仕入税額控除ができます。相手先もこのことを知っているでしょうから、この経過措置に合わせて支払う消費税相当額を順次減らしていくというのも一法です。

◆簡易課税や2割特例で申告している場合

簡易課税や2割特例で消費税の申告をしている場合は仕入税額控除をするためにインボイスは不要です。なぜならば、仕入税額控除を計算するにあたって、支払いの際に入手したインボイスを基に計算するのではなく、販売の際に受け取った消費税に対する「みなし計算」をするからです。

しかし、この場合であってもインボイスは入手しておく必要があります。簡易課税や2割特例も、原則的な仕入税額控除の計算と比較して有利であれば選択するものですので、インボイスに基づく計原則的な計算もしておかなければ有利不利の判定はできません。

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★インボイス登録をしていない事業者は消費税を請求できない?
法律上はインボイス登録をしていない事業者が消費税を請求しても違反ではありません。しかし、インボイス制度開始から歳月が経てば「ビジネスのルール(慣習、マナー)」として認められなくなることは確実です。ですから、遠慮せずに指摘してください。「困るじゃないですか!」と。それがインボイス制度を有効に運用のためにも必要なのです。「正義!」なのです。

★令和5(2023)年10月分の請求書
11月になったら10月分の請求書を発行したり受け取ったりします。発行する請求書については「何を言われるかわからない」と覚悟しておかなければなりません。受け取る請求書には「想定外の」ものもあるでしょう。インボイス制度の大変さや恐ろしさが身に染みるのはこれからです。「次の選挙は!」、もう手遅れです。

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インボイス制度はじまる

2023-10-14 19:00:00 | 消費税
令和5(2023)年10月1日、ついにインボイス制度がはじまりました。コンビニのレシートには登録番号が記載され、コインパーキングには「インボイス対応」ののぼりが立てられて新しい時代の幕開けを予感させられました。

◆消費税が記載されているが登録番号が記載されていない

やっぱりね(笑)!

当分はこのような請求書や領収書が多発されるでしょう。

「インボイスの登録をしたけれども登録番号を記載することを知らない」
「登録をしていないけれども従来どおり消費税を請求する(強気で!インボイス制度反対!)」

いずれかでしょうが、請求書や領収書を受け取るとき、直ちに指摘するしかありません。

◆インボイスってなんですか?

今後こういう人はビジネスの世界から排除されても仕方がありません。今でも「印紙」や「源泉徴収」を知らなければビジネスの世界では相手にされません。間もなく、これにインボイスが筆頭として加わります。

◆ふるさと納税が変わった?

インボイス制度導入を控えた9月下旬、にわかにふるさと納税に関する相談が増えました。10月からの「値上げ」を前に駆け込みで寄付をするので「限度額」を教えてほしいという相談です。

値上げは仕方がないとして、その時期はインボイス制度開始とはずらしてほしいと思いました。

◆電子帳簿とインボイス

電子帳簿とインボイスを混同している人がいて、インボイス制度開始と同時に電子帳簿も導入しないといけないと思っています。確かに、一部の業者が誤認するような広告をしていますが電子帳簿とインボイスはまったく別物です。

なお、「電子取引」に関する記録の保存は来年1月から「義務化」されます。これも大変です。インボイス以上に制度に対する正確な認識は進んでいません。どうなることやら・・・

◆年収の壁

もう勘弁してほしいです!

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★インボイスは漏れなく発行し偽インボイスは徹底して排除する(相互牽制による自浄作用に期待)

「インボイスの登録をした事業者は必ずインボイスを発行する」
「登録をしていない事業者は請求書や領収書に消費税を記載しない」

このことをビジネスの当事者は指摘し合わなければなりません。この「相互牽制」による「自浄作用」なくしてインボイス制度は定着しません。インボイスは漏れなく発行し、偽インボイスは徹底して排除しなければインボイス制度は機能しないのです。

お互いに厳しくいきましょう!

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10月1日からどうすればよいのか?(その2)

2023-09-22 17:15:00 | 消費税
「免税事業者なのでインボイスの登録もしなかった・・・」

当然、このような事業者は請求に際してインボイスを発行する必要もありませんし、仕入税額控除をするためにインボイスを入手する必要もありません。しかし、得意先との価格交渉において荒波を被るのはこのような事業者であるといわれています。

◆10月1日からは請求書に消費税を記載できない

インボイス登録をしていない事業者は、10月1日以降は請求書に消費税を記載することはできません。もし、消費税を記載しようものなら、相手先から「貴社(貴方)は登録をしていないので(登録番号がないので)請求書に消費税を記載しないでください」といって請求書の書き直しを求められます。

◆税込請求の場合も消費税相当額を減額される恐れが

インボイス制度導入前と同一商品あるいは同一サービスであれば、10月1日以降は消費税相当額を減額される恐れがあります。なぜならば、得意先はインボイス登録をしていない支払先に対する消費税相当額を税務署に納める消費税から差し引くことができないからです。

10月1日からの新商品、新サービスであれば税込で交渉をすればよいのですが、当然相手はインボイス登録をしている業者の類似商品やサービスの「本体価格」と比較してくるでしょうから、希望している価格よりも減額される恐れはあります。

◆得意先によっては価格を段階的に引き下げてくる場合も

「仕入税額控除」には経過処置があって、10月1日からいきなりインボイス登録をしていない支払先に対する消費税相当額の全額が控除できなくなるのではなく、3年間は80%、次の3年間は50%はという具合に段階的に引き下げられます。

「良心的な」得意先であればこの経過措置に対応させて、段階的に価格の引き下げ要求をしてくるケースもあります。

◆得意先によっては値下げを要求しない場合も

これは「個別的な関係」によるのですが、得意先によってはインボイス登録をしていなくても値下げを要求してこないことも考えなれます。「貴社(貴方)とは消費税の負担が増えても(仕入税額控除が減っても)関係を維持したい!」というケースです。

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★インボイス登録は消費税制度への「加入手続」

事業者は販売代金に上乗せして消費税を預かり、仕入代金や諸経費を支払った際に支払った(預けた)消費税を差し引いて税務署に納めます。わが国に消費税が導入されて30年以上が経過し、この消費税の仕組みはすっかり社会に定着しています。いまや消費税率は10%となり今後さらなる税率アップも考えられる現状において、消費税制度の重要性は高まる一方です。

インボイス登録をしている事業者(税務署に消費税を納めている事業者)はインボイス登録をしていない事業者に消費税を支払うわけにはいきません。インボイス登録をしていない事業者は税務署に消費税を納めていないからです。消費税制度という仕組みに「加入」していないからです。

インボイス登録をしていない事業者が販売代金に消費税を上乗せできないのは当然のことです。「やはり登録しておくべきだった・・・」と考えている事業者は今からでも遅くはありません。今なら、「すみません!登録の手続が遅れてしまって」で許されると思います。

「消費税制度への加入」、今後のビジネスにおいては必須です。

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