【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

銀行印?(ダイレクト納付の申込みに必要)

2024-10-25 17:31:00 | 会計、税金、経営、その他の話題
DXの進展につれて「印鑑」を使用する機会が激減しています。銀行取引も例外でなく、以前であれば印鑑がなければ多くの手続が一切進みませんでしたが、昨今では印鑑が不要な手続が大半となり、億単位の資金移動が「印鑑なし」で行われています。

「設立時に預金口座を開設したとき」
「クレジットカードを作ったとき」

「銀行印」を押印したのはこのときだけという会社が増えています。しかし、最近になって銀行印がなければできない重大な手続が現れました。それは「ダイレクト納付」です。

◆印鑑セット(実印のみ作る)

会社を設立する際、「実印」「銀行印」「角印」を作るのが一般的ですが、昨今では押印の機会が減少していることと経費削減から実印しか作らないケースが増えています。このようなケースでは実印と銀行印を兼用します。

◆ダイレクト納付とは

ダイレクト納付とは、納付書(紙)による金融機関や税務署などの窓口での納付に替えて、ネットで所定の操作をすれば納税者の預金口座から直接納付できるという方式です。電子申告と並ぶ税務行政DX化の目玉で、最近では官民挙げてその普及を促進しています。ダイレクト納付が普及すれば、税務当局も金融機関も事務作業が大幅に削減されるから官民の利害が一致します。また、納税者も金融機関や税務署などに納付のために赴く時間が不要になることから積極的にダイレクト納付に移行しています。まさに、ダイレクト納付は「三方よし」なのです。

◆ダイレクト納付の開始手続には銀行印が必要

DXの象徴ともいえるダイレクト納付ですが、最初だけは書面に銀行印を押印するという従来からの手続が必要です。

◆銀行印?

支払いはネットバンキングとクレジットカードが主流となっている昨今、銀行印は机の引き出しの奥に仕舞い込んでいるという状況の会社があります。

「やっと印鑑が見つかった」とか「印鑑の蓋がなかなか取れなかった」はいいとして、「銀行印が見つからない」と「どれが銀行印か分からない」は大変です。「実印を銀行印にしていたはず」が「実は代表者の個人の印鑑を銀行印としていた」といったようなケースもあります。

◆預金名義等

銀行印はあるにしても、代表者や所在地の変更を銀行側に届けていないのも問題です。ダイレクト納付の申込みを機にアップデートしておかなければなりません。

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★ダイレクト納付は便利です!

ダイレクト納付の手続をすると「税務署が一方的に預金から税金を引き落とす」と警戒する人がいますが、そんなことはありません。ダイレクト納付は、納税者が自主的にサイトで操作をしなければ一切の納付は行われません。

各金融機関は窓口での業務の縮小(合理化)を進めています。特に事業者向けサービスはビジネス街の店舗に集中させる傾向が強く、郊外の店舗の窓口では事業者関連の税金の納付が行えなくなっているケースが目立ちます。今後、現在納付で利用している金融機関で納付ができなくなることも十分あり得ますので、できるだけ早くダイレクト納付に移行することをお勧めします。

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税込経理のメリット

2024-10-25 17:30:00 | 消費税
消費税率は10%、インボイス制度により多くの事業者が消費税の課税事業者となった今、消費税の経理処理方式は税抜経理こそがスタンダードであるといえるでしょう。税抜経理においては取引に際して生じる消費税を区分して経理処理をし、消費税を損益(利益計算)に影響させません。このことは各取引段階において当然のようにその買い手が消費税を負担するという消費税のシステム(間接税という性質)に適うからです。

◆税込で意思決定しているケースは多い

昨今、価格表示においては消費税を明記する(消費税込であることを明記する)ことが当然のようになってきましたが、価格決定においては消費税を価格に含めて考えるケースは多いです。特に一般消費者はこの傾向にあることから、一般消費者を顧客としている飲食業や小売業などにおいては経営状況そのものも消費税込のほうが把握しやすいです。

税込で決定された価格(収益)から税込のコスト(費用)を差し引くという税込経理の利益計算が実情にマッチするという業種もあるということです。

◆消費税は「付加価値税」である(税務署に納める消費税はコスト)

税込経理においては税務署に納める消費税は費用(勘定科目は租税公課)として処理されます。この金額は主に収益に含まれる受け取った消費税、主に費用に含まれる支払った消費税の差額です。

消費税の価格転嫁がいまだ完全には行われていない実情からすれば、この経理処理のほうが理解しやすいといえます。販売時に消費税の価格転嫁を十分に行い、支払時の価格転嫁を抑える企業ほど税務署に納める消費税は多くなります。最近はあまりいわれなくなりましたが、消費税は「付加価値税」であるという考えです。企業は付加価値に応じて消費税というコスト(費用)を税務署に支払うのです。

◆簡易課税の場合

税抜経理の場合、受け取った消費税は仮受消費税、支払った消費税は仮払消費税に集計します。そして、決算時には仮受消費税と仮払消費税の差額を未払消費税とします。翌期、税務署に消費税を納めればこの未払消費税はゼロになります。

しかし、簡易課税を選択している場合は仮受消費税と仮払消費税はこのような動きにはなりません。簡易課税においては支払った消費税を「みなし計算」をしますので、実際に支払った消費税である仮払消費税と一致しないからです。

簡易課税におけるみなし計算による支払った消費税が仮払消費税より少ない場合、税務署に納める消費税は「仮受消費税-仮払消費税」よりも多くなります。仮払消費税よりも多い場合は少なくなります。前者の差額は費用、後者の差額は収益として処理します。せっかく集計した仮払消費税が、決算時に誤差として修正されるのはなんとも不合理なことです。

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税抜経理では無理矢理に取引価格を本体と消費税に区分しているともいえます。税込経理のほうが経営状況を把握しやすいと思える場合は今後も税込税理を続けてください。

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税抜経理(会計ソフトの設定)

2024-09-23 11:30:00 | 消費税
税抜経理と聞くと入出金に関するあらゆる記録(帳簿、請求書、領収書、契約書など)を税抜で、つまり本体価格と消費税に区分しなければならないと考える人がいます。しかし、税抜経理は会計処理、つまり「仕訳→総勘定元帳→試算表→決算書」という作業において本体価格と消費税に区分するという方式です。ですから、税抜経理を採用していても、消費税が区分表示されていない会計処理のための基資料(請求書、領収書、契約書など)が存在してもかまいません。

◆会計ソフトは税込で入力すればよい(会計ソフトが自動で税抜経理をしてくれる)

会計ソフトは税抜経理を簡単にしてくれます。取引を「税込で入力」すればその金額を自動で本体価格と消費税に区分してくれます。入出金(現金と預金の出入り)を税込で入力していけば仮受消費税(受け取った消費税)と仮払消費税(支払った消費税)が自動で集計されます。

ただし、各取引が消費税の対象(課税)であるか否(非課税)かの判断は自身でしなければなりません。また、ひとつの取引が消費税の対象(課税)と対象外(非課税)に分かれる場合にはそれぞれに区分して入力をしなければなりません。

◆会計ソフトの設定は事業年度開始時にしなければならない

税抜経理を採用するという選択は事業年度開始時にしなければなりませんので、会計ソフトの設定も事業年度開始時にしなければなりません。年度途中から税抜経理に変更した場合、すでに入力した取引を修正しなければなりません。その数が膨大な場合は大変な手数を要します。

◆税込の領収書やレシートが存在する

この問題はインボイス制度の導入によって解消されました。インボイス制度においては、インボイス登録をしている事業者は、請求書や領収書を本体価格と消費税に区分して記載しなければならないからです。しかし、インボイス制度も導入されて日が浅いことから、まだまだこのことが徹底されておらず、インボイス登録をしている事業者が税込の請求書や領収書を発行してくるケースも目立ちます。

◆インボイス登録をしていない事業者に対する支払い

これについても会計ソフトの入力画面で所定の選択をすれば済みます。当然、「仕入税額控除の経過措置」にも対応しています。ただし、特定の事業者がインボイス登録をしているかどうかは自身で調べなければなりません。

◆両方式で税務署に納める税額は異なるのか?

消費税の申告書の様式は税抜経理と税込経理で共通です。両方式いずれであっても税額の計算過程において記載しなければならない金額は同一ですので、当然算出される税額も同じです。

◆両方式で利益は異なるのか?

税抜経理と税込経理のいずれであっても消費税は「利益に影響しません」。

売上110(内消費税10)、仕入55(内消費税5)、諸経費33(内消費税3)とします(すべての取引が消費税の対象であるとします)。

税抜経理の利益は100-50-30=20です。

一方、税込経理の利益は「110-55-33」から税務署に納める消費税2(10-5-3)を差し引いた20と、税抜経理と同じです。

しかし、利益が異なるケースがあります。例えば、減価償却資産220(内消費税20)を取得したケースです(耐用年数10年、定額法で償却とします)。

税抜経理では減価償却費20です。一方、税込経理では減価償却費22です。さらに税込経理では減価償却資産の購入代金に対する消費税20を税務署に納める消費税から減額するため利益が増えます。

この違いを減価償却が終了する10年間で考えてみます。

税抜経理においては減価償却費20×10年=200の費用が計上されます。

税込経理においては初年度22の減価償却費と20の消費税(利益にプラス)、差引2の費用が計上され、2年度以降は22×9年=198の費用、10年間では200という費用が計上されます。結局は10年間で考えれば税抜経理と同じです。

在庫についても同じようなことが考えられます。

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★税込経理から税抜経理に変更した場合に戸惑う点

年度が変わって税込経理から税抜経理に変更をした場合、戸惑う点がいくつかあります。まずは、前期比較です。収益と費用で前期と同程度生じている勘定科目であっても、相当減ったように感じます。次に、税込(消費税額が見えない)を当然として取引してきた項目、例えば交通機関の運賃、飲食代なども税抜で表示されるので非常に戸惑います。

事業者が販売時に受け取る消費税は「預かった」と考えられます。事業者はこの預かった消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額を税務署に納めます。このような消費税の仕組みからすれば消費税が利益計算に表れない税抜経理は合理的です。税抜経理に変更した当初の戸惑いは仕方のないことです。

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税抜経理はインボイス時代のスタンダード?

2024-09-16 15:00:00 | 消費税
昨年10月からインボイス制度が始まり、新たに消費税の課税事業者となったことで消費税の経理処理や申告に困惑する事業者は多いです。消費税の課税事業者が対処しなければならない課題のひとつが消費税の「経理方式」、税抜経理と税込経理のいずれを選択するかです。

◆税抜経理とは(仮受消費税、仮払消費税という勘定科目が生じる)

税抜経理とは、消費税が関連する取引に関する仕訳を本体価格と消費税に分けて行うという方式です。例えば、商品の販売を本体価格100、消費税10で行った場合、売上(収益)は100、消費税10は仮受消費税(負債)で処理します。商品の仕入れを本体価格70、消費税7で行った場合、仕入(費用)70、仮払消費税(資産)7で処理します。

税抜経理においては、消費税は負債(仮受消費税)あるいは資産(仮払消費税)で処理されるので損益(利益計算)には影響しません。

◆税込経理とは

税込経理とは、消費税が関連する取引であってもその仕訳に消費税は表さず、本体価格と消費税を合計して仕訳をするという方式です。例えば、商品の販売を本体価格100、消費税10で行った場合、売上(収益)110と処理をして消費税を表しません。商品の仕入れを本体価格70、消費税7で行った場合、仕入(費用)77です。

税込経理においては消費税が収益あるいは費用に含まれます。ただし、事業者が税務署に納める消費税、つまり収益に含めた消費税(100とします)マイナス費用に含めた消費税(80とします)を費用処理(100-80=20)することから最終的には利益に影響しません。収益100=費用80+費用20ということです。

◆税抜経理のメリット

税抜経理のメリットはいくつかありますが、そのひとつが「消費税が見える」ということです。事業年度開始から受け取った消費税の合計額は仮受消費税に集計されます。一方、支払った消費税は仮払消費税に集計されます。税務署に納める消費税は「仮受消費税-仮払消費税」です。仮受消費税も仮払消費税も税務署に消費税を納めるとゼロになります。

税込経理だと、この点がまったく見えません。

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★税抜経理はインボイス時代のスタンダード?

事業者が販売時に受け取る消費税は「預かった」と考えられます。事業者はこの預かった消費税から仕入や諸経費に関して支払った消費税を差し引いた額を税務署に納めます。このような消費税の仕組みからすれば消費税は利益計算に影響しません。受け取った消費税を収益(大部分が売上)に、支払った消費税を仕入や諸経費に含める税込経理は合理的でないということです。確かに、税務署は税込経理も認めてくれます。しかし、融資申込みや補助金申請など、税務署以外に経理数値を提示しなければならない局面では「税抜経理を前提」としている思われることが少なからずあります。

なお、消費税の免税事業者は税込経理しか認められません。そんなことから課税事業者になってからもそのまま税込経理を続けているケースも多いです。しかし、インボイス制度導入後はほとんどの事業者が開業時から課税事業者となり税抜経理を選択することが普通になるでしょう。そうなれば、「税込経理は時代遅れの方式」になることは必至です。

税抜経理、インボイス時代においてはスタンダード(常識?)といえるのではないでしょうか。

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株価が乱高下(こんなときこそNISA!)

2024-08-23 18:30:00 | 会計、税金、経営、その他の話題
このところ株価が乱高下しています。8月5日、日経平均株価は史上最大の下げ幅を記録しましたが、わずか数日でこれを取り戻したのには唖然としました。過去幾度とあった大暴落ではこんな短期間で株価は回復しませんでしたが、今回の値動きはなんと表現してよいのかわかりません。おそらく、人類史上最初で最後の出来事といっても過言ではないかもしれません。

このようなことが起きるのは、やはり「日本が弱い」からだと思います。日銀の意表を突く利上げは海外投資家の格好の標的となったのでしょう。「昨夜のNY株式市場が・・・」、我が国の株式市場はこの状態からいつまでたっても抜け出せません。GAFAM(いまではMagnificent7が正しい)と比肩する世界を牽引するような企業が存在しないからです。このような国が他国に配慮を欠いた突然の利上げという「生意気な行動」をすれば大国の餌食になるだけです。

今年から鳴り物入りで始まった新NISAで早くも「損切り」が出ている模様です。NISAの投資対象の大部分が通称「オルカン」と呼ばれる世界全体の株式(しかし大半が米国株式)を対象とした投資信託です。これは日本国民の多くが、それも若年層が我が国経済の先行きに期待していない表れです。

こんなことではどうにもなりません!

NISAは株式投資による国民の資産形成だけでなく、日本企業の成長と発展もその目的とすべきです。やはり、「投資対象は日本企業に限定」「日本企業投資枠を設ける」「暴落時には日本企業への投資枠を特別に設ける」など、日本企業への投資を促進することが絶対に必要です。

こんなことをしていると、もう一度、今後は立ち直れないほど落とされますよ!
そう思えば、1980年代のブラックマンデー、この間のリーマンショックは秋でした・・・

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