【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

給与明細と源泉徴収票の関係

2018-12-08 15:30:00 | 源泉徴収と年末調整
社長が給与明細にメッセージを書き込んでいる会社がありました。感謝の気持ちを伝えるためです。

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給与明細とは、従業員に給料(毎月)や賞与(臨時)を手渡す際に一緒に渡す、給料や賞与の計算内容を示した明細書です。給与明細の様式(名称、サイズ、記載項目など)は会社によって異なります。

源泉徴収票とは、1年間(1月から12月まで)に支給した給料や賞与の合計に関する所得税の計算内容を示した書面です。この様式は法律で定められています。

給与明細と源泉徴収票は連動していますので、両者の内容に矛盾があってはいけません。1月から12月に支給された分の給与明細を全て足し算すれば源泉徴収票に一致します。しかし、その一致を確かめるには下記についての理解が必要になります。

●源泉徴収票では基本給や諸手当といった区分がない
源泉徴収票の「支払金額」では「給与所得になるもの(所得税が課税されるもの)」を一括して集計しますので、給与明細のように基本給や諸手当といった区分はされていません。当然、給料(毎月)と賞与(臨時のボーナス)という区分もありません。

●源泉徴収票には非課税の通勤手当は集計されていません
源泉徴収票では「課税の対象になるもの」のみを集計しますので、非課税となる通勤手当は集計されていません。なお、給与明細では「課税支給額」「課税対象額」などと表示されている場合もあります。

●給与所得控除や所得控除は源泉徴収票でしか表示されません
給与所得控除や所得控除は給与明細を足し算しても答えは出ません。給与所得控除や所得控除(配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除など)の額は年末調整が済まなければ確定しないからです。

●源泉徴収票では住民税は表れません
源泉徴収票の「源泉徴収税額」では国税である所得税のみを表示していますので、住民税(地方税)の計算プロセス(住民税の所得控除額)や計算結果は表れません。(住民税の計算は、源泉徴収票とほぼ同じ内容の給与支払報告書が勤務先から市町村に送付され、それを基に市町村が計算します。)

給与明細を集計した結果は源泉徴収票に一致しましたか?

一致しない場合は、どちらかが間違っているということです。あるいは、給与明細の枚数が足りないということです。ただし、「現物給与」「過年度の源泉徴収漏れ分を今年徴収」などの複雑なケースもあります。

★給与計算ソフトを使用している場合が両者は必ず一致する
給与計算ソフトを使用して日常の給与計算から年末調整までをしている場合には、給与明細と源泉徴収票は相互に矛盾することはありません。このように給与計算ソフトは便利ですがコストが高いです。給与関連法制(社会労働保険、源泉所得税の計算方法)は毎年改正され、それに応じて給与計算ソフトも毎年バージョンアップが必要となります。そのための年間保守料が数万円となりますが、わずか数名の給与計算のためでは採算が取れません。

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平成30年版 問答式 源泉所得税の実務
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清文社

源泉徴収票の種類(勤務状況で内容が異なってくる)

2018-12-04 17:00:00 | 源泉徴収と年末調整
「年末調整の事務費用を社員に負担させる会社」「還付するお金がもったいないので年末調整しない会社」がありました。「平成時代」のことです。

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源泉徴収票の「様式」は決まったものがあり、誰であっても所定の様式で作成しなければなりません。しかし、源泉徴収票の「内容」はその年の「勤務状況(就職、退職、勤務先数など)」によって異なってきます。源泉徴収票の内容によっては、自ら確定申告をしなければならない場合もありますので注意が必要です。

【1】1年を通して同じところに勤務していた場合
「支払金額」「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」の全てに数字が記載されます。年末調整が済んでいるということです。「所得控除の額の合計額」は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「給与所得者の保険料控除申告書」「給与所得者の配偶者控除等申告書」に基づいて計算されています。当然、「源泉徴収税額」は年末調整後の金額です。

【2】年初から年度途中まで失業しておりその後は就職し年度末に勤務していた場合
【1】と同じですが、「中途就・退職」の欄に就職した日付が記載されます。

【3】年初からの勤務先を年度途中に退職しその後就職した勤務先に年度末は勤務していた場合
【1】と同じですが、「支払金額」には前職分が含まれその旨が「摘要」の欄に記載されます。また、【2】同様、「中途就・退職」の欄に就職した日付が記載されます。

【4】年初からの勤務先を年度途中に退職しその後は就職していなかった場合(年度末には勤務していない)
「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」は記載されません。年末調整はされていないということです。摘要欄に「年末調整未済」と記載するのが一般的です。「中途就・退職」の欄は退職した日付が記載されます。

【5】年初からの勤務先を年度途中に退職しその後就職した勤務先を年度途中に退職した場合(年度末には勤務していない)
【4】と同じ源泉徴収票(年末調整されていない源泉徴収票)が「2枚」発行されます。

【6】1年を通して同じところに勤務するかたわら別でも勤務していた場合(掛持ち勤務)
【1】と同じ年末調整された源泉徴収票(本職分)、「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」の記載がなく「乙欄」に丸印が記載された年末調整されていない源泉徴収票(副業分)の「2枚」です。

★確定申告が必要な場合(給与収入しかないとして)
【4】【5】【6】です。【4】【5】は年末調整をしていないので税額が精算されていません。【6】は本職分の給与についてしか税額の精算ができていませんので、確定申告で精算しなければなりません。【5】【6】は全ての源泉徴収票を合計して確定申告をします。

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年末調整・法定調書の記載チェックポイント(平成30年分)
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中央経済社

年末調整に関する仕訳と勘定科目

2018-11-27 15:00:00 | 源泉徴収と年末調整
今年が「平成最後」の年末調整ですが、次の時代になっても年末調整はしなければなりません。年末調整の対象は1月から12月の給与合計ですので、来年の年末調整には「平成最後の給与」が含まれることになります。平成が完全に消えるには、今しばらくの歳月を要するのです。

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給与から徴収した源泉所得税は預り金勘定に計上し、納付した際に預り金勘定を減少させます。通常月は、「徴収(貸方)」と「納付(借方)」は同額で、結果として「残高ゼロ」という動きを繰り返しますが、年末調整を行う12月は特別な動きをします。

【ご注意】以下の説明は預り金勘定に補助科目を設け、源泉所得税だけの補助科目があることを前提としております。

◆還付金は預り金勘定の減少

還付金は毎月の給料から源泉徴収した所得税を返金するわけですから、源泉徴収したときに預り金勘定の貸方に計上した分を借方に計上して預り金勘定を減少させます。

≪借方≫給料+預り金(源泉所得税)
≪貸方≫預金または現金+預り金(源泉所得税)+預り金(住民税、社会労働保険料)

借方の預り金(源泉所得税)は各従業員への還付金の合計額です。貸方の預り金(源泉所得税)は12月も源泉徴収される従業員の源泉所得税の合計額です。

◆還付をすれば預り金勘定がマイナスになる場合もある

このようなこともあります。11月分までの源泉所得税は全額納付しているとして(11月までの預り金は全額消えているとして)次のようなケースで考えてみます。

○12月に源泉徴収した税額合計→100(預り金の貸方)
○12月に年末調整で還付した金額合計→150(預り金の借方)

預り金(源泉所得税)はマイナス50となります。

「(その月に)源泉徴収した以上に還付するなんておかしい!?」と思われるかもしれませんが、年末調整は「年間の税額の精算」ですのでこのようなこともありうるのです。

◆預り金勘定のマイナスは厳密には「未収入金」

上記のように預り金勘定がマイナスということは、源泉徴収し納付しなければならない金額以上を税務署に代わって従業員に還付をしているわけですので、税務署から返金してもらう必要があります。しかし、通常は税務署からの返金ではなく翌年1月以降に源泉徴収する分から差し引いて納付します。(返金を受けるためには要件があり、さらに手続も面倒だからです。)

預り金勘定のマイナスを解消したい場合には下記の仕訳をします。

≪借方≫未収入金50
≪貸方≫預り金(源泉所得税)50

そして、未収入金相当額を差引いて納付した際に次の仕訳をします。

≪借方≫預り金(源泉所得税)→翌年1月徴収分
≪貸方≫現金または預金+未収入金50

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平成30年版 はじめての人にもよくわかる 年末調整の仕方と1月の源泉徴収事務
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日本法令

預り金勘定(源泉所得税の帳簿での動き)がおかしい!?

2018-11-20 11:30:00 | 源泉徴収と年末調整
年末調整がよくわかるページ(国税庁サイト)

国税庁のサイトにこんな便利なページがあります。このページから解説書や税額表、さらには扶養控除等申告書なども入手できます。

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源泉所得税は、源泉徴収義務者(会社などの給料を支払う者)が給料を支払う際に一定額を徴収し(天引し)、後ほど税務署に納付します。このように、源泉所得税は源泉徴収義務者にとっては預かった税金ですので、預り金勘定を用いて処理をしていれば「徴収(貸方)」と「納付(借方)」は同額で、結果として「残高ゼロ」となります。

しかし、様々な理由からこれがそう簡単にはできないのです。

■仕訳に間違いがある→源泉徴収税額も納付税額も正しい

この場合は仕訳を「源泉徴収税額=納付額」に一致するよう修正しなければなりません。徴収および納付したときの仕訳に勘定科目の誤りはないか(別の勘定科目で処理していないか)、金額に誤りはないかを検討しなければなりません。

■納付税額(納付書)に間違いがある→源泉徴収とその仕訳は正しい

「納付書」の税額を「書き間違った」という場合です。納付額に不足や過大があるのですから、不足の場合には追加納付しなければなりません。過大の場合には税務署に対して所定の用紙で還付の請求をしなければなりません。

■源泉徴収を間違った税額でしたが納付税額は正しい場合

源泉徴収の間違いに気がついて、納付は正しい税額でしている場合です。納付税額との差額は追加での源泉徴収、あるいは源泉徴収をした分の従業員への返金により、源泉徴収税額を納付額に一致させなければなりません。

■年末調整の還付

還付の際には還付額を預り金勘定の借方(減少)に記入し、納付書では「年末調整による超過税額」に記入します。

★預り金勘定の記帳が完璧にできれば経理はプロ級です!

源泉所得税についての経理処理の質問は、経理経験の浅い人、特に簿記の知識がないまま会計ソフトを使用している人から「非常!」に多いです。そして、その多くが「解決不能」の状態です。上記のとおり、預り金勘定には様々な要素が関連しており、そのすべてが「正しく」「相互に矛盾なく」行われなければ預り金勘定は正しい状態にはなりません。

預り金勘定の記帳が完璧にできれば経理はプロ級です。会社ならば経理の管理職(元帳や試算表の正確性を確認する人)、会計事務所の職員であればひとつの関与先を全面的に任される立場です。「給与台帳」「給与明細の控」「納付書」「通帳」「元帳」・・・、といった具合に個々の帳簿資料を検討し「どれが正しいか?」「どこが間違っているか?」を明確にし、間違いを正せる能力を会得しているということです。この能力はあらゆる経理処理で求められます。

≪ご注意≫上記の説明は預り金勘定に源泉所得税に関する「補助科目」を設定していることを前提としております。預り金勘定は住民税の特別徴収や社会保険料の従業員負担部分などについても用いますので、補助科目を設定したほうが処理と管理が行いやすくなります。

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わかりやすい年末調整の手引 (平成30年版)
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税務研究会出版局

確定申告するので年末調整(源泉徴収)は不要→「悪魔のささやき」

2018-11-13 12:30:00 | 源泉徴収と年末調整
今年からの配偶者特別控除、大変複雑です。しかし、「ABC」に「①②③④」で考えればわかりやすいです。詳しくは「配偶者控除等申告書」をご覧ください。

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「自分で確定申告をしますので年末調整は必要ありません。また、毎月の給料からの源泉徴収もしないでください。」

サラリーマン(含むパートとアルバイト)で確定申告をする人(医療費控除を受ける、副収入の申告をするなど)の中にこのようなことをいう人がいます。

★この考えは認められません!

源泉徴収制度というのは、国家が確定申告に先立って税収を得る(税収を平準化する)ための手段ですので、源泉徴収の対象となる所得について源泉徴収を怠れば国家に損害を与えてしまうことになります。

源泉徴収義務者や源泉徴収される人にとっては酷かもしれませんが、法律でこのように定められているのですから、税務署は「確定申告していようが源泉徴収漏れは許さない!」という姿勢を「絶対に!」崩しません。安易に「確定申告さえしていれば・・・」とは考えないでください。

ただし、以下のような方法で、税額計算の一部(場合によっては大部分)を確定申告で計算するという「選択肢」があります。

■勤務先に扶養控除等申告書を提出しない(ただし、源泉徴収の税率は高くなる)

勤務先に扶養控除等申告書を提出することが年末調整をするための要件です。「年末調整をしてほしくない場合」は扶養控除等申告書を勤務先に提出しなければいいです。しかし、こうすると毎月の給料からの源泉徴収が「乙欄」という大変高い税率になってしまいます(最終的には確定申告で修正されます)。

この「乙欄」での徴収についても税務署は厳格な姿勢を崩しません。

■特定の控除については自ら確定申告でする

医療費控除や住宅借入金等特別控除(初年度)などは自ら確定申告するしかありません。また、年末調整で忘れた所得控除(配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、地震保険料控除など)は自ら確定申告で税額計算に反映するしかありません。

★「悪魔のささやき」にご注意を!

「自分で確定申告をするので・・・」、事業をしていればこのような要望を受けることがあります。事業者にとって源泉徴収や年末調整は面倒かもしれませんが、これを怠った場合のペナルティは大変過酷なものです。「源泉徴収すべき支払い」については相手の意思とは関わりなく「源泉徴収する」ことを徹底してください。また、給与以外にも源泉徴収すべき支払いはありますのでご注意ください(例えばデザイナーやライターなどの報酬)。

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年末調整のしかた 平成30年版
クリエーター情報なし
大蔵財務協会